こんにちは。岡山市長の大森です。
去る3月26日、東京で「第29回坪田譲治文学賞」の受賞祝賀会が開催され、私も主催者として出席しました。
坪田譲治氏(岡山市生まれ 1890-1982)は、日本を代表する児童文学作家で、「お化けの世界」「風の中の子供」「子供の四季」など、子どもの伸びやかな世界と、大人の不安や俗的なものが混在した独特の世界観が印象的な作品を数多く残しておられます。
「坪田譲治文学賞」は、こうした坪田譲治氏の偉大な業績を称えるとともに、岡山市の文化の向上を図るために創設したもので、毎年、大人も子どもも共有できる世界を描いた優れた文学作品に贈呈しており、今回は、直木賞作家の朝井リョウさん(24歳)の「世界地図の下書き」が受賞作に決まりました。
この作品は、児童養護施設で暮らす小学生の太輔らが、孤独や痛みを抱えながらも、高校を卒業して施設を離れる佐緒里のために、ある「作戦」を計画するというストーリーで、私も拝読しましたが、昨年末に訪問した岡山市の児童養護施設で出会った子どもたちの姿と重なり合い、思わず涙しそうになりました。
祝賀会では、朝井リョウさんとも話す機会を得ましたが、意外にも彼は、この作品を書くに当たって児童養護施設に取材に行った際、子どもたちとは触れ合わなかったそうです。
理由を尋ねると、できるだけ客観視して書きたかったことに加え、子どもたちに迷惑をかけないように配慮したとのこと。24歳という若さで、本当にしっかりした方だという印象を受けました。
また、彼は、この作品で「いじめなど辛いことがあった時、常に戦わなくてもいいんだ。逃げてもいいんだよ。」ということを子どもたちに訴えたかったとも話してくれました。
私も、子どもたちがこの作品を読んで、それぞれが抱える辛さや苦しさといったものが少しでも和らげばと思った次第です。
なお、この作品は、子どもたちだけでなく、大人が読んでも面白いこと請け合いです。この機会にぜひご一読ください。
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