岡西公民館がある石井中学校区は、岡山駅西口から笹ヶ瀬川東岸まで、市街地と自然の豊かさを感じられる変化に富んだ地域です。岡山市名誉市民で児童文学作家の坪田譲治はこの地で生まれ、生家跡の石碑や譲治作品に登場する少年「善太と三平」の像が岡山駅西口にあるなど、譲治のふるさとを実感することができます。
昨年の3月、坪田譲治の研究や顕彰活動を行っているノートルダム清心女子大学文学部山根知子教授から、「学生が行っている坪田譲治やその作品の魅力を伝える取組を地域の活動へ広げるきっかけが作れないか」と公民館に相談がありました。学生は、坪田譲治PRのためのカルタや体操を自ら作るなど、毎年テーマを決めて取り組んでいるとのことでした。
地元石井小学校区では、以前から坪田譲治の顕彰活動が行われており、公民館でも関連講座を始めています。これを機に、学生と地域の方のお互いの思いをつなげることができると考え、学生が主体となり坪田譲治の作品から私たちのふるさとについて考える講座の企画をすることにしました。
今回は山根教授から「文学とESDやSDGsとの関連付けができないか」と提案があり、作品にも多く出てくる「水辺のいきもの」をテーマとし、幅広い世代を参加対象とすることに決定しました。
学生たちは、作品に出てくる水辺、魚や蛙などを知るために、保全活動を行っている団体の方からの聞き取りや岡西公民館・京山公民館の環境講座への参加など研究を重ねて小冊子にまとめ、企画にあたりました。譲治の作品に登
場するふるさとの川つながりで京山公民館とも連携し、Zoomを使って今回の講座を共催しました。
11月21日の講座当日は、岡西公民館に地域の大人の方を中心に60名が、京山公民館には小学生中心に15名の参加がありました。
大学生は、作品に出てくる魚や蛙などの生きものと、それらに対する譲治の思い入れを紹介しました。また、参加した環境調査の報告、大学生が自ら考えたツボジョー体操や歌を紹介しました。その他にも、岡山大安寺中等教育学校メディア部の高校生による絶滅危惧種ダルマガエル保全活動の映像作品上映、京山地区住民からの環境保全活動の報告やクイズ大会などがあり、幅広い世代の人が楽しめる内容となりました。
大学生は「企画に苦労したが、充実感を得られた」と話し、高校生からは「地域の方に頑張りを認められてうれしかった」との声がありました。一方、参加者からは、大学生や高校生の頑張る姿やその成果に賞賛の声が寄せられたほか、次世代を担う若者たちが坪田譲治の顕彰を若者の視点で継承していることや、地域の水辺の保全に関心を持っていることへの期待の声がありました。
また、地元のことを学んで良いところを発見し、地域への愛着や理解を深めることにつながりました。
今回、大学生が主体的に公民館講座を企画することで、地域づくりや保全活動を行う団体や、大学、高校、隣接学区の住民とつながることができました。また、新たな発想の顕彰活動が地域に広がるきっかけになりました。
今後も、若者がアイデアを出して企画し、地域住民とつながっていけるような講座をつくっていきたいと考えています。