20年ほど前に創立した「朗読塾」は、文字通り朗読を主な活動内容としたグループです。現在は十数人のメンバーで構成され、年に一度の定期公演に向けての練習を行っています。
演技の要素を取り入れているものの演劇ではなく、文章にメロディを付けて歌うパートがあるけれど合唱でもない、あくまで朗読というジャンル。朗読の形態として知られているのは、一人で一作品を読んで聞かせるのですが、ここでは、登場人物に合わせて、多くの人が登場して、歌や音楽などを駆使して、表現手法を探求し朗読の奥深さを追求しています。
「朗読塾」では、月の第一と第三日曜日の2度、朗読練習を行っています。1回の稽古時間は休憩を挟みながら3時間程度。
普段は他の朗読グループに所属するメンバーも多いので、技術面でのスキルアップは個々で行い、練習の日は、定期公演の発表を想定した練習がが中心となります。もちろん、これは発表する作品が決まってからのこと。2か月程度は、次の公演で発表する作品を絞り込むためのブレインストーミングやアイデア検討、台本作りなどに充てており、朗読する作品が決まってから実際の稽古に取り組んでいきます。
朗読といっても書店で売られている文学作品を音読するだけでなく、歌やちょっとした演技も交えながらのオリジナルな構成を検討し、台本つくりにかかります。
もともと演劇仲間だったという曽和さんと沖田さんが演出を担い、作品ごとに担当を振り分けて、それぞれどのような色付けをしていくかをディレクション。メンバーの誰がどの登場人物を担当するかというキャスティングから、朗読の際の声色や強弱のつけどころなどの表現手法、音楽の挿入に際してのタイミング合わせまで、まさに一つの作品を全員で作り上げていく創作の現場は白熱した雰囲気です。
どこか一つでも合わない箇所があったり、違和感を感じさせるような表現があれば、細かく修正していきます。地道な作業を繰り返して、作品が少しずつ磨きあげられていくのです。
「きれいに読めることは大前提ですが、それだけでは十分な表現ができるとは言えません」と沖田さん。立ち稽古の状況になると、自分の立ち位置、照明との関係など、本番さながらの稽古を重ね、理想とする作品の姿に近付けていくのです。
ナレーション部分と台詞部分をそれぞれ異なる読み手が担当する「立体朗読」というスタイルを確立し、朗読の新境地を開いた「朗読塾」。
在籍数年以上の現メンバーは、安定した技術力にプラスしてさらなる表現力を追い求める充実期を迎えています。朗読歴の長いメンバーや、アナウンサーとしての活動歴を持つメンバーなど、一人ひとりのレベルはかなり高く、回を重ねるごとにますます広がっている表現の可能性。評判はクチコミで広がり、年に一度の定期公演には多くのファンが詰めかけています。その魅力にとりつかれて、毎年訪れるリピーターも多いのだとか。
20回の節目を迎える今秋の公演では、太宰治と芥川龍之介の作品を取り上げる予定です。誰もが知る文豪たちの独特の世界観に「朗読塾」らしいエッセンスを散りばめた渾身の作品に、大きな期待が寄せられています。