福田中学校区では、以前から、防災訓練を独自の計画で実施している町内会がありました。しかし、広範囲の地域住民が集う避難所運営については、課題意識があっても具体的な実施に向けての見通しが立っていませんでした。そのような中、公民館も避難所指定となり、避難所運営について共に考えていくことになりました。「いざ」という時に動けるマニュアルがあることで、役割が明確になり、「誰が何をどのようにすればよいのか」を自覚して、主体的に動ける自主防災組織への一歩一歩を重ねていくことができるようになりました。
地域の方々と共に防災への取組を進めるにあたって、福田公民館では以下のような2つの視点で考えることにしています。
〇避難所運営の初動体制の整備と訓練
〇防災についての啓発活動
・「じぶんごと」としての認識:知識と準備
・避難所運営の組織づくりと主体的な運営
公民館では毎年、福田学区の安全と安心を守る会防災部会と共催で、「防災」講座を開催してきました。昨年度より、「幅広い年齢層の利用拡大」「若者の参加促進」を視点に、保護者世代の参加を促すことを意識して「親子参加型」の取組に変更しました。
いざという時に、自ら考えて行動できるように、「自分で考える」「体験しながら学ぶ」ことを念頭に置き、今年度はゲーム感覚で楽しめる内容にしました。参加者を2つのグループに分けて、待ち時間ができないようにするなど、プログラムの工夫もしました。職員は各ブースの講師を担当しました。防災部会の方々には、体験での進行やアドバイスをしていただき活動への手厚いサポートができました。
「感染対策も視野に入れた防災グッズ」のコーナーでは、防災グッズや岡山市の防災メールや公式LINE、防災ポータルサイトなどの紹介をしました。天気予報や地域の危険箇所の把握など、日頃から災害に対するアンテナを高く立てることが大切であることなどをお話させていただきました。
「水害きせかえゲーム」では、子どもチームと大人チームに分かれて、避難時の服装や持ち物を選択肢から選んで、ボードに貼り付けながら考えました。「きけんはっけん!」の学習ボードでは、教室の様子を見ながら、地震がきたらどうすればいいかを考えました。子どもたちは手を挙げて、「棚が倒れるから離れないといけない!」「うずくまって泣いていたらだめ。机の下に入らないと!」など、積極的に意見を出してくれました。
「救出訓練」や「搬送訓練」では、ジャッキで重い資材を持ち上げてケロゾーくん(人に見立てた大きなカエルのぬいぐるみ)を救出したり、毛布で担架を作って、実際に人を運んだりすることにも挑戦しました。防災部会の皆さんは、事前練習の成果を発揮され、進行をうまくリードしてくださいました。保護者も子どもたちも、楽しみながら訓練ができました。
最後のまとめでは、防災食を試食したり、参加者で個々に準備した水出しカップ麺を試食したりする場面も設けました。参加者みんなで試食することも、模擬避難所的な雰囲気につながりました。感想には、「自分の子どもにこんなに防災の知識があるとは知らなかった。感心しました/保護者」「ケロゾーくんを助けるのが楽しかった/子ども」「水で作ったカップ麺、意外においしかったです/親子」などがあり、活動への充実感を感じました。
各組織が別々に活動していても、描いているビジョンに同じ方向性があることが大切です。地域と学校と公民館が、それぞれの特性を活かして活動しながらも、目標を共有し、向かう先をはっきりとさせていることで、より迅速により強く、子どもや保護者世代・地域の方々への防災意識や行動を促すことにつながると思っています。
今回は、コロナ対策もあり、防災講座への中学生の運営参加は断念しました。今後は、運営に幅広い世代を組み入れていくことも考え、地域防災への取り組みの流れを創造したいと思います。