
2025年度第4回ESDカフェ「岡山地域で育んだESDの20年」~過去から現在、そして未来へつなぐ~
- テーマ:「岡山地域で育んだESDの20年」~過去から現在、そして未来へつなぐ~
- 開催日時:2026年3月17日(火曜日)18時30分から20時
- 開催場所:杜の街ピクニックテラス(岡山市北区下石井二丁目10-25)およびオンライン(Zoom)
- プログラム:
- 基調講演「岡山地域のESDの歩み、そして未来へ」(登壇者)岡山ESD推進協議会 池田満之運営委員長
- 調査報告「ESDの効果測定調査研究からみえたもの」(登壇者)岡山大学 ESD協働推進センター 柴川弘子助教
- パネルディスカッション/グループワーク
(パネリスト)
金子 晴信さん 社会教育士/チーム灘OB
柴川 弘子さん 岡山大学ESD協働推進センター 助教
利根 弥生さん NPO法人タブララサ
花房 聡子さん 岡山市立富山公民館 主任
国連がESDの取組みを開始した2005年に設立され、ESDの歴史とともに歩みを進めてきた「岡山ESD推進協議会」が20年の節目を迎えるにあたり、岡山地域でのこれまでの活動・成果を共有しつつ、今後の課題やその解決のために何をするかについて話し合いました。当日は会場36名、オンライン12名の計48名の方が参加されました。

基調講演
岡山ESD推進協議会の設立時からESDに関わる池田満之運営委員長が「岡山地域のESDの歩み、そして未来へ」と題して、ESDの歴史や岡山地域の歩みや特徴をお話しされました。

ESDの歴史的経緯と日本の役割そしてSDGsについて
- 1987年に国連で「持続可能な開発」が定義され、1992年のリオ・地球サミットで、行動計画として「アジェンダ21」が策定されました。
- 2001年にSDGsの前身となる「ミレニアム開発目標(MDGs)」が策定されましたが、開発途上国を中心とした内容でした。
- 2002年、「アジェンダ21」の10年後の成果を振り返るために「ヨハネスブルグ・サミット」が開催されました。このサミットで日本政府とNGOが共同で「ESD(持続可能な開発のための教育)の推進」を提唱し、2005年から「国連ESDの10年」が実施されました。「岡山ESD推進協議会」は2005年に活動を開始しました。
- 2014年には「国連ESDの10年」のまとめとして、岡山市と名古屋市でESDの国際会議が開催されました。
- 2015年から2019年にかけて、後継プログラムとなる「グローバル・アクション・プログラム(GAP)」が始動し、同時に2030年までの目標となる「SDGs」が策定されました。
- 現在は、グローバル・アクション・プログラムの後継として「ESD for 2030」がスタートしていて、国内でも、「SDGs達成のためのESD」という目標設定で活動が進行しています。そして、2030年にSDGsの目標達成期限が近づく中、その先を見据えた「Beyond SDGs」の動きが始まっています。

「岡山ESD推進協議会」の活動、ユネスコとのつながりについて
- 岡山市で1994年から10年間「国際貢献NGOサミット」が開催され、世界中から関係者を招待しました。1997年のサミットでは「環境」がテーマとなり、以降、ユネスコ本部の職員が毎年参加しました。
- 1999年には岡山市で「第55回日本ユネスコ運動全国大会」が開催され、ユネスコ本部も参加しました。こういった経緯から岡山市とユネスコ本部との関係が生まれ、2001年には日本のユネスコ加盟50周年記念事業が東京都と岡山市で開催されました。
- 2002年ヨハネスブルグ・サミットに岡山市が招待され、取組紹介にとどまらず世界に向けて社会変革のために主体的に取り組む人を増やすため「Save the Earth Citizens’ Registration Rally」という提案をしました。この提案で持続可能な社会実現のための3つのキーワードが掲げられました。
- Action(行動): 計画を作るだけでなく、行動して初めて社会が変わるため、行動が最優先されるべき。
- Commitment(コミットメント): 社会的責任を伴わない「コントリビューション(貢献・努力目標)」では社会は変わらないため、責任ある約束が求められる。
- Partnership(パートナーシップ): 個別に活動するのではなく、連携して取り組むことが不可欠

岡山のESDの取組みについて
- 2003年から岡山市京山地区でESD活動のリーディングプロジェクトが始まり、それが世界的なモデルケースとして評価されました。さらに岡山市が国連大学の要請を受けて、2005年に岡山ESD推進協議会を立ち上げてESDを推進したことが、RCE(ESD推進の地域拠点)の世界で最初の7地域に選ばれることに繋がりました。
- 岡山のESD推進の成功要因である「ホールシティ・アプローチ」は、地域内の多様な機関が個別にではなく、地域全体で繋がり、一体となってESDに取り組むアプローチです。2005年には9団体だった岡山ESD推進協議会の登録団体が現在では409団体に拡大し、学校・公民館を拠点としたESD活動や情報発信、人材育成、学び合いの場の提供、国際的な顕彰制度などを継続して行っています。
- 2025年10月には世界のRCE関係者が集まる世界会議「第14回グローバルRCE会議」を岡山市で開催し、岡山のESDを世界に発信しました。この会議の成果として「岡山宣言2025」が採択され、今後の方向性などが示されました。
*第14回グローバルRCE会議の様子(動画):https://www.youtube.com/watch?v=99iNIKmBAoM別ウィンドウで開く
*第14回グローバルRCE会議の様子(取材記事):https://www.city.okayama.jp/sdgs-esd/category/17-7-1-0-0-0-0-0-0-0.html
*岡山宣言2025(日本語翻訳版):https://i.unu.edu/media/ias.unu.edu-jp/news/33135/2025-Okayama-Declaration_Japanese.pdf別ウィンドウで開く

2030年以降の目標(ビヨンドSDGs)に向けた国内外の動向について
2027年9月から国連で2030年以降の枠組みが議論されます。日本の考え方を示すため、2025年に「ビヨンドSDGs官民会議」が設立され、国内で議論が始まりました。岡山市では、岡山大学の那須学長を座長として、産官学民が連携した「岡山版ビヨンドSDGs」の目標を策定する取組が進行中で、「SWGs(Shared Well-being Goals)」という概念を発信していくことが提案されています。
*岡山版ビヨンドSDGs詳細:https://www.kc-d.net/OBS/OKAYAMA_Beyond_SDGs_JPN.pdf別ウィンドウで開く
池田さんがお話しされた岡山ESD推進協議会の歩み等は以下のウェブサイトからもご参照いただけます。
「岡山ESD推進協議会20周年記念誌」https://www.city.okayama.jp/sdgs-esd/0000076261.html
2025年10月に岡山市で開催された第14回グローバルRCE会議のレポートhttps://www.city.okayama.jp/kurashi/0000078476.html

調査報告

岡山ESDモデルの成功と課題について
このプログラムでは、これまで岡山で取り組んだESDがどのような変化をもたらしたのかを岡山ESD推進協議会が調査した結果について、調査を担当した岡山大学の柴川助教から報告しました。
調査はまず、「岡山ESDプロジェクト」に10年以上、継続的に関わってきた14名にアンケートとインタビューを実施して、ESDとの出会いや、視点・行動の変化に対する自己認識を回答してもらいました。その回答をもとにM-GTA(修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチ)という分析手法を用いて、質的な分析を行いました。
分析の結果、「社会課題を自分ごととして捉えるようになった」「異なる立場の人と協働や自発的に地域課題へ参加するようになった」「現在の活動や仕事の支えになっている」など、ESDの活動に参加し続けた人たちに前向きな変容が生まれていたことが明らかになりました。しかし、変容のきっかけとしては教育者や行政が想定していた部分とは異なる部分で偶発的に起きていたこともわかりました。
また、ESDを通して社会問題を考える力の深化が見られた一方、ESDそのものの在り方を問う力を育てたのだろうかという疑問も見つかりました。最後に今後は、ESDを問い直す声が生まれるにはどのような条件が必要かを考えていくことで、ESDの活動が更に良いものになるのではないかという提案がされました。
柴川さんの研究内容は、岡山ESD推進協議会20周年記念誌のP43~P55に掲載されています。https://www.city.okayama.jp/sdgs-esd/0000076261.html

パネルディスカッション・グループワーク・情報共有
柴川さんの他に3名のパネリストが加わり、池田さんの進行のもと、パネルディスカッションと参加者同士の意見交換を行いました。パネルディスカッションでは、最初にパネリストが自己紹介を行いました。
利根さん:先輩から「キャンドルをリサイクルしている活動がある」と聞き参加しました。「楽しそう」から始まりましたが、活動を通じてリサイクルがあらゆる環境への配慮に広がり、地域にまでつながっていることを知り、そこからたくさんの気づきを得ました。
花房さん:大学時代に社会教育に出会い、とあるキャンプに参加しました。そこで「社会教育は幅広く奥が深い」と感じ、より多くの人と出会い、学びを深められる公民館の職を選びました。
金子さん:岡山市南区にある灘崎公民館を拠点とする「チーム灘」で約10年間地域活動に携わってきました。社会教育士の資格も取得し、今後も大学院で研究を続ける予定です。学生時代に大人から「やりたいことをやっていい」と「裁量を与えられた」ことが変化のきっかけでした。
4名のパネリストを含めて参加者が10グループに分かれ、以下の2つのテーマについて約10分間話し合いました。
- 解決したい社会課題:自分ごととして捉え、何を解決すべきと考えているか。
- 具体的な行動:その課題解決のために、何をしたいか、何をすればよいと考えているか。
その後、すべてのグループから発表がありました。
- 人口流出の背景にあるジェンダー問題やエネルギー問題に対して、「人に優しくあること」や「若者の社会参画」が重要だと思う。少子高齢化に対し、問題を「自分ごと」と捉える「仕掛け」作りが必要ではないか。
- 地域消滅への危機感や多文化共生が課題として挙がり、理念よりまず「活動」から始めることという意見が出ました。その他、人権尊重、人と人とのつながり、高齢者の尊厳、学校と地域の連携、「自分ごと」として話せる共同体の再構築などの意見が出されました。
各グループからの発表を受けて、パネリストからコメントが述べられました。
- 生涯にわたる学びの重要性と、楽しさややりがいを強調した地域参加を促すとおもしろくなると感じた。
- 公民館が多様な人々との出会いや学びの場としての機能と職員の役割の重要性を感じた。この短時間で様々な意見が出てくるのは岡山の素晴らしいところ。
- 活動の輪を広げる余地と、まだ関与していない人々や次の世代への働きかけが必要になる。
- 異分野の人々と出会う場の必要性と関心のある人だけでなく、関心のない人でも参加しやすい空間設計が重要になる。
最後に、岡山ESD推進協議会の阿部会長より、「岡山市は新しい総合計画にもESDを大きく取り入れている。人々のコミュニケーションとコミュニティを大切にする意識が、課題解決の鍵と考える。住民一人ひとりが意識を持って議論する場を作ることが重要で、公民館は非常に大切な役割を担っている」と岡山市のESD・SDGs推進における課題と展望が述べられました。その後、岡山ESD推進協議会20周年を記念し、長年、会長を務められた阿部さんへ感謝の言葉と花束が贈呈され、ESDカフェを終了しました。