4月20日(木曜日)に2017年度第1回ESDカフェを開催しました。
ゲストに、江見優子さんと、スンダリ・ミカさんをお迎えし、2015年に起きたネパール地震後の復興支援の取組や「TERAKOYA縁筆プロジェクト」について話をお聴きしました。
ESDカフェの様子
まず、岡山市市民協働局国際課に所属して、友好交流サロンに勤務しており、ダフェプロジェクトのスタッフでもある江見さんにダフェプロジェクトについてご紹介いただきました。本プロジェクトは、ネパールと岡山の人々の民間交流、ネパールから岡山に来た方たちへの生活支援、ネパール音楽などを通じた文化交流などを目的に2014年に設立されました。2015年のネパール地震以降は、現地の復興支援も行っています。
詳しくはダフェプロジェクトのHP別ウィンドウで開くをご覧ください。
続いて、ネパール大衆歌謡歌手であり、現地NGO外国人ボランティアアドバイザーとして活躍しているミカさんに、ネパール地震とミカさんが関わっている復興支援についてお話を伺いました。
2015年4月25日11時56分(現地時間)。マグニチュード7を超える地震がネパールを襲いました。国土の30%、約800万人が被災。死者は8000人、負傷者は2万人を超えました。
この地震を現地で経験したミカさん。幸いミカさんの事務所は、ほとんど被害がなく、電力をソーラーパネルからまかなっていたためインターネットも使えたそうです。地震の2日後には、SNSを通じて、募金活動を開始。現地の情報をタイムリーに発信することで、世界中から支援を募ることができました。
募金で集まったお金をもとに、まず、緊急食糧支援として塩、米、豆、石鹸、油などを提供。次に、現地の大学生にも協力をあおぎ、仮設住宅の建設支援にも乗り出しました。そして、さらなるステップとしてスタートしたのが経済自立支援です。1)ヤギの無償支援、2)有機肥料の提供、3)バイオガス修繕支援、4)自立開業支援(肉屋、床屋など)、5)教育支援TERAKOYA学習塾の開催など内容は多岐に渡ります。また、大衆歌謡歌手であるミカさんはネパールの作詞家に、復興支援ソングの作成を呼びかけ、「心を一つに」が完成。プロモーションビデオには、ネパールのモデルや俳優とともにミカさんも出演し、様々な民族や職業の人たちも、手を取り合って力を合わせてネパールの復興に取り組んでいこうというメッセージを伝えています。
ミカさんが力を入れている「女性や子どもたちの支援」、「未来につながる自立に向けた支援」の一つが「縁筆プロジェクト」です。芯に、ネパール語の新聞を巻きつけて鉛筆を作り、販売することで女性たちの経済的自立を支援します。また、日本でも鉛筆づくりのワークショップを開催。ネパールのことを知ってもらうことで異文化理解や多文化共生を促進したり、新聞という資源をリサイクルする鉛筆を教材とすることで環境問題への啓発を行ったりしています。また、日本の学校の子どもたちが、自分自身が作った鉛筆を使って、ネパールの子どもたちに手紙を書くなどの交流も促進しています。プロジェクトから生まれる「縁筆」は、人々の「縁」を育む、復興と友情のアイテムとして活用されています。
復興と友情のアイテム「縁筆」
地震から3年目を迎えたネパール。ミカさんは、主に3つのプロジェクトに力を注ぎます。
「ぐるぐる山羊バンク」は、小規模融資をするマイクロクレジットの仕組みを活用しています。通常、山羊を買うために資金を借りると18%程度の利子がかりますが、「ぐるぐる山羊バンク」は山羊1匹の購入に必要な金額(時価)を貸し付け、1年後、貸付金額に一律100ルピーを足してマイクロバンク(小規模融資を行う銀行)に返金してもらう仕組みになっています。マイクロバンクは、会員用の福利厚生に使える年間予算を活用して、返金されたお金に50%をプラスしたうえで村に還元。村人たちは、その資金を村の社会福祉に活用するという仕組みになっています。
しかし、現実は、思い描いたとおりには動きません。村人たちは、山羊を育てて得た利益を、他の人が山羊を購入するために貸してしまい、銀行に返金しなかったり、社会福祉に使うということの意味も十分に理解していなかったりします。ミカさんは、根気よくこのプロジェクトの意義を説明し、理解をしてもらいながら、村の自立や幸せのためにお金がぐるぐる回る仕組みづくりに尽力しています。
次のビジネスのアイデアは「ぐるぐるウサギバンク」。繁殖力の強いウサギを育てることで経済的な自立を支援しようというアイデアです。
手織り生地と草木染のプロジェクトも現在進行中。開始当初は、ネパールで草木染のショールやスカーフなどの完成品を作っていましたが、日本ではなかなか気に入ってもらえなかったそうです。しかし、ある日、草木染の作家さんに出会い、染める前の生地を見てもらったところ、日本にはない素材なので是非染めてみたいという提案を受けました。そこから、ネパールの生地を日本で草木染にするというコラボが誕生したとのことです。
これまでの経験で分かったことは「小さな事業(Small Business)を成功させることが持続可能な支援の仕組みづくりにつながる」こと、とミカさん。そして、これからネパール支援に関わっていくうえで大切にしたいこととして4つのポイントを挙げました。
様々な課題にぶつかっても、自分の喜びに変えながら、行動し、粘り強く解決策を見出していく力。歌手として、人として、ネパールの魅力を伝え、人々のために尽力してきたミカさんは、パワーとバイタリティにあふれています。
「なぜ、ネパールを選んだのですか?」会場から質問がでました。
もともとは、ミカさんは、インドに行こうと思い、ガイドブックも買っていたそうです。しかし、当時、インドは政情不安で治安が悪く、ご家族が大反対されたとのこと。そこで、目的地を変更し、向かった先がネパールでした。偶然のようにも見えますが、それが必然だったのかもしれません。ネパールの音楽や文化は、ミカさんの肌に合ったようです。そして、日本では叶わなかった「歌手になる」という夢をネパールの地でかなえます。
最初は数年のつもりだったネパールの滞在は、今年18年目を迎えました。その大きなきっかけとなったのが、当時の王様から勲章をいただいたこと。その名誉と誇りは、ネパールの人々の自立や幸せのために活動するエネルギーにもなっています。
美しい歌声とともに、日本とネパールの架け橋として、人々との「縁」を紡ぎながら、ネパールの人々の自立や幸せを支える活動はこれからも続きます。
岡山市ESD推進協議会(岡山市ESD推進課内)小西・宮崎
電話:086-803-1351
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