開催日時:2023年5月18日(木曜日)18時30分から20時
株式会社ありがとうファームは、「生き生きと堂々と、人生を生きる」を企業理念とし、岡山市北区の表町商店街を拠点に活動する多機能型事業所です。就労継続支援A型事業所・B型事業所、自立訓練(リワーク)、グループホームなどの福祉サービスを提供。アートギャラリーやアトリエ、飲食店、雑貨店を運営し、商店街の活性化にも貢献しています。
富岡さんは、「就労継続支援A型事業所ありがとうファーム」で7年間働いています。この事業所は、障がいや難病のある方が、雇用契約を結んだ上で一定の支援がある職場で働くことができる福祉サービスです。
富岡さんは、10年ほど前に、後縦靭帯骨化症という指定難病と診断されました。後縦靭帯骨化症とは、椎骨の後縁を上下に連結し、背骨の中を縦に走る後縦靭帯が骨化した結果、脊髄の入っている脊柱管が狭くなり、脊髄や脊髄から分枝する神経根が押されて、感覚障害や運動障害等の神経症状を引き起こす病気です。
特に症状がひどかった腰椎部分の圧迫をとる手術を受け、自宅療養をしていましたが、「日中一人でいる孤独に耐えられない」「自分の治療費は自分で稼ぎたい」「社会とつながっていたい」という想いから、ありがとうファームで働くようになりました。
富岡さんが所属する編み物チームでは、のぼり旗を制作する企業と連携し、のぼり旗の端切れを使ったカラフルなバッグや傘の持ち手カバーなどを作っています。端切れは何色が届くか分からず、色によって長さもまちまち。色の組み合わせを考えながら編んでいきます。また、毛糸と違って伸びないので、編むのが大変だとのこと。
捨てられるはずの廃材を活用して雑貨に生まれ変わらせた商品は、SDGs達成につながる取組としても注目を集め、ノベルティグッズとしての注文も多いそうです。現在は、全国5ヶ所のパートナー事業所と仕事を分け合っています。今後はブランド化し、さらなる収入の向上を目指します。
自分たちが主体となって商品を考えること、チームで売り上げ目標を追いかけること、お客様から「ありがとう」と言われること、自分の力で収入を得られることに大きなやりがい、生きがいを感じているそうです。
富岡さんは以前、リュックを背負って杖をつき、バスで通勤していました。しかし週5日のバス通勤、特にバス乗降時の腰の激痛は耐え難く、通勤だけで疲労困憊。退職を考えて会社に相談したところ、在宅勤務ができるようになりました。2015年から在宅勤務を始め、現在は週1日出勤し、あとの4日は在宅勤務をしています。
富岡さんは、通勤の負担が減ったことで仕事を続けられていると話します。在宅勤務の他、時差出勤や短時間勤務などの配慮があれば働ける人もたくさんいるので、柔軟な働き方が広がってほしいとのことでした。
こうした取組は、厚生労働省の働き方改革特集でも先進事例として紹介されています。
富岡さんは、徐々に病気が進行し、以前のように編み物をすることが難しくなってきたそうです。今後は、自分の経験を話すことで、障がいや難病があっても「やりがいを持って働きたい」「会社の仲間として貢献したい」と思っていることを一人でも多くの人に知ってもらい、ありがとうファームの合言葉「知ることは障がいを無くす」を社会へ広げていきたいと考えています。
参加者は、病気で苦しい経験を乗り越えてきたであろう富岡さんの「病気のおかげでよい花が咲いた」という言葉や、チームの中心となっている様子が強く印象に残ったようです。
また、障がいの有無に関わらず誰にとっても働きやすい環境を整え、持続可能な事業を進める、ありがとうファームのような事業所が増えてほしいとの感想が聞かれました。