3月17日に第12回ESDカフェ「育てよう『エコの種』〜環境学習を通じてエコ博士が伝えてきたこと〜」を開催しました。
参加者は20名。エコ博士として長年活動を続けられてきた環境学習センター「アスエコ」の中平さんに環境保全や持続可能な社会づくりに向けた取組や思いについてお話を伺いました。
第12回ESDカフェの様子
アスエコの母体である公益財団法人岡山県環境保全事業団に入社してから約40年。
環境分野で長年活動されてきた中平さんは、プライベートでも、「エコのめがね」を忘れません。
これまで訪問してきた約20カ国の国々でも、いつも環境の視点を持ちながら現地の様子を見てきたそうです。
中央アフリカ東部に位置するタンザニアには、国立公園が15か所あります。中平さんが訪れたセレンゲティ国立公園にも多くの動物が生息していますが、だいぶ観光地化している印象を受けたそうです。
タンザニアの首都ドドマを始め、都市部ではビルが立ち並んでいますが、村では、今でもわらや土で作った家に住み、薪で火をたいたり、石うすで粉をひいたりしながら簡素な生活をしているところも多くあります。家を持たない人々もいて、彼らは狩りをしながら生活をしています。中平さんが村を訪れた日には、鳥を2羽獲ってきて料理し、おもてなししてくれたとのことでした。驚いたのは、村の人もあたりまえのように携帯電話を持っていること。テクノロジーは世界の端々にまで広がっています。
村人は生活のために木を切って生活をしており、人口増加によって森林伐採が深刻化。雨が降ると、土が流れて湖に堆積します。セレンゲティ国立公園の南方に位置するエアシ湖は、以前は、琵琶湖の約1、4倍もあったそうですが、その一部は水がなくなり、土で覆われていて昔の面影はありません。村人の暮らしが、自然環境の悪化につながっている現状があります。
マサイ族は、長男は学校に行きますが、その他の子どもたちは学校に行かないのが当たり前。学びの機会がなければ、環境に何が良くて何が悪いのか。今の行動が、後にどのような影響をもたらすかを判断することできません。
中平さんがタンザニア訪問で学んだことは、
ということでした。
中平さんが40年に渡って勤務してきた岡山県環境保全事業団の使命は、地域の環境を守ること。しっかりとした財務体質を維持しながら、環境保全活動を通じて地域に貢献しています。
水島に工場等から出る廃棄物を埋め立てする「埋立処分場」、汚泥を廃プラスチックなどで消却処理する「水島クリーンセンター」、倉敷市内の家庭から出された瓶を選別作業する「倉敷資源化センター」を有しています。また、1999年には、処分場跡地に一般向けのゴルフ場をオープン。その他にも環境調査事業、環境保全活動等を実施。これらの事業から得られる収益を財源として、2007年に9月に環境学習センター「アスエコ」が開設されました。
「みんなで守ろう地球の未来!」を合い言葉に、自然環境の大切さを「知ること」、守るために「行動すること」、つながるために「仲間を増やすこと」を促進しています。
テーマは、地球温暖化、生き物や水質のこと、ゴミの問題やESDまで多岐にわたり、小学生から大人まで施設見学を受け入れたり、岡山県との協働により学校や地域の団体へ講師を派遣したりしています。また、企画展示やスペシャルイベントなども開催しています。
アスエコは、2002年に、岡山県地球温暖化防止活動センターに指定され、地球温暖化防止に関する啓発活動、活動支援、調査・研究活動や情報提供等をしています。2002年度から2008年度は、推進員研修に予算がつき、研修を実施していましたが、座学が中心で、参加者も固定化。そこで、研修を活かせる機会、推進員の活躍の場づくりに焦点が当てられるようになりました。
活動がうまく行かない理由として「ものがない」「お金がない」「人がいない」がよく挙げられたそうです。
そこで、アスエコは、物を購入し、貸し出す仕組みを作り、個人の活動には3万円、協議会の活動には10万円の上限で助成する支援制度を構築、人的支援を可能にするために地域協議会を設立し、推進員の活動をサポートしました。
その結果、活動は促進され、2009年度には7つの協議会が生まれました。開設当初はセンターが活動の中心的存在でしたが、現在では、推進員をサポートする存在、協働のパートナーになる方向にシフトしているそうです。
中平さんが信条にしているのは『鳴かぬなら鳴かせてみようホトトギス』。
「やってくれないからできない」ではなく、「何かできるはず。まずは行動してみよう!」と、「国が動かないなら、地方から動かそう!」という気持ちで活動してきたそうです。
環境活動は、「エコの種まき」。「実」を得たいのであれば「種」をまき、大きく育てる必要があります。時間がかかることだけれど、誰かがやらなければはじまりません。
また、中平さんは、吉田松陰の言葉を引用して、知り、行動することの大切さを伝えてくれました。
アスエコを環境保全・創造活動の拠点として、岡山県民200万人を環境保全活動に巻き込み動かしたい。また、環境団体、教育機関、行政、ボランティア、地球温暖化推進員、環境学習リーダーなどと連携しながら、活動を広げて行きたいとのことです。
人口増加、環境の悪化、貧富の拡大など、世界で様々な課題が表面化する中で、持続可能な未来の社会を創っていくためには、一人一人の行動が鍵になります。
一人の100歩より、100人の一歩。
私たち一人一人がまずは、岡山の地域、日本、世界の現状を知り、課題の解決に向けて行動していくことが大切なのではないでしょうか?
岡山市市民協働局ESD推進課 小西・流尾
電話:086-803-1351
電子メールアドレス:miki_konishi@city.okayama.lg.jp