第11回ESDカフェの様子
2016年2月18日(木曜日)に第11回ESDカフェが開催され19名が参加しました。テーマは、「お隣さんや自然を近くに感じる暮らし~持続可能なコミュニティづくりに向けた『平田107』の挑戦~」。ミナモト建築工房くらしのたね別ウィンドウで開く世話人の青江整一さんをゲストにお迎えし、住宅や暮らしという切り口から持続可能なコミュニティづくりについて話し合いました。
岡山出身で今も岡山を拠点に活動する青江さんですが、28歳から30歳にかけて、かねてからの夢だった世界旅行をしたそうです。その時に気づいたのは、地球上には、都市のように人口が密集しているところだけではなく、人が住んでいない自然豊かなところもまだまだたくさんあるということ。地球の美しさを実感したそうです。
現在、青江さんが世話人をされている「くらしのたね」は、約30名のメンバーがコアとなり、ミナモト建築工房の1階スペースを活用して、ヨガ教室や空手教室等の他、地域課題を考える座談会や、菜園づくりなど様々な取り組みを行っています。2013年より岡山ESDプロジェクト参加団体にも登録されています。くらしのたねが大切にしているのは「地球上に人間として暮らしている感覚」。人と人、人と自然のつながりを感じられる、丁寧なライフスタイルを地域の人と一緒に、考え、実践しながら育んでいます。
青江さんは、くらしのたねの理念になっている「ハチドリのひとしずく」という南米のお話をご紹介くださいました。森が火事になり、動物たちが逃げている中で、一羽のハチドリだけが水のしずくを一滴ずつ運んできては、火の上に落としていたそうです。「そんなことをして何になるんだ」と笑う動物たちに、ハチドリは「今、自分にできることをしているだけだよ」と答えました。地球上には様々な課題があるけれど、くらしのたねは、微力でもその解決のためにできることを一つひとつやっていきたい、そんな思いが込められています。
「平田107プロジェクト別ウィンドウで開く」とは、その名の通り「岡山市北区平田107」で進められている集合住宅の開発プロジェクトのことで、その一帯は、昔、吉備の穴海と呼ばれる海でしたが、干拓が進み、数十年前まではいぐさの生産が盛んだったそうです。その頃、平田107の敷地には、いぐさ業を営んでいた方のお屋敷があったそうですが、老朽化が進んだため、ご親族から建物と敷地をミナモト建築工房が譲り受けることとなり、プロジェクトがスタートしました。
通常の宅地開発であれば、より多くの人に住んでもらうために効率よく分譲することが優先されます。しかし、本プロジェクトの全体調整を担当するくらしのたねは、「持続可能な」宅地開発を目指して、工務店だけではなく、建築家やNPOなどの力を借り、専門家だけではなく市民の目線・意見も大切にしながらプロジェクトを進めています。
例えば、毎週日曜日に誰でも参加できる座談会を3か月間継続的に開催し、様々な意見を出し合いました。様々な議論を経て、大切にしたい共通のキーワードとして次の3つが洗い出されました。「お隣コミュニティ」、「岡山の豊かな自然」、「家族のくらし」。これらのキーワードを大切にしながらマスタープランを作成。その後、そこに住みたい人を中心にして発足した「平田107の会」の意見を取り入れながら、マスタープランを更新しており、それぞれの区画も十分に確保し、家族の暮らしを楽しみながら、自然や緑を取り入れた中庭を共有できるつくりになっています。
「平田107」のマスタープラン
住宅団地の建設はこれからですが、「平田107の会」では、そこに住む予定の人が一緒にバーベキューや持ち寄りご飯のパーティー、井戸端会議などをしながらお互いに親睦を深めており、実際に住む前から「お隣コミュニティ」が育まれているのが特徴的です。
平田107の住宅団地づくりにあたっては、軒や屋根の角度を合わせて統一感を出すなど建築上一定の規則を設けていますが、極力、平田107の会の意見が尊重するように配慮されています。一部デザインを変えたいなどの意見やアイデアが出た時には、「デザイン協議会」で協議されることになっていて、変更にあたっては平田107の会の全員の賛同が必要になります。
現在10区画中、既に6区画に住む人が決まっているのですが、今後新たに加わる4区画に住む人意見をどのように反映するのか、全区画の住民がそろっていない現段階でどこまで決めていいのかという点は課題だそうです。
グループに分かれて意見を出し合う参加者たち
青江さんのお話に続いて、「どんな住宅団地にしたいですか?」という問いについて、ESDカフェの参加者が平田107の会の会員だったと仮定してグループで話し合いました。まず、各々に、大切にしたいこと、譲れないことなどを挙げてもらった後、合意形成を図りながら、グループとして最も大切にしたいポイントを一つ選んでもらいました。
あるグループは、これからつくる住宅団地が「既存の町内や地域にどう溶け込んでいくのか?」という点を大切にしたいということから、「敷地内に近隣の町内の人も自由に使える空間をつくりたい」という意見でした。その他にも、「集合住宅の人がゆるやかにつながることができる」ように、「『みんなの木』として住民が一緒にゆずの木を植えて、育て、収穫してはどうか」などの意見がでました。
「平田107プロジェクト」では、都心に住む現代的なライフスタイルの中に、人や自然とのつながりを融合させていく試みが行われています。未来のお隣さんと話し合いながら自分たちの住居や暮らしを描いていくプロセスは、お互いのつながりや信頼関係を育み、助け合いながら安心して暮らせるコミュニティづくりにつながります。こうした取り組みを通じて人や自然のつながりを大切にする価値観や行動が、次世代の子どもたちにも育まれ、受け継がれていくのではないでしょうか。
ESDリレーコラムでは、青江さんが世話人を務めるミナモト建築工房くらしのたねの活動内容や活動に込めた思いについて紹介しています!ぜひご覧ください!
岡山市市民協働局ESD推進課 小西・流尾
電話:086-803-1351
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