2023年9月3日から7日まで、竹島さんは文部科学省「タイ派遣プログラム」日本団の団長としてタイ王国を訪問しました。今回はタイで「見えた」こと、帰国後に「やってみた」ことをお話しいただきました。
竹島さんは、2年前に公益財団法人ユネスコ・アジア文化センター(ACCU)の日タイ教育交流会に参加し、そのとき出会ったタイの先生と交流を続けてきました。勤務先の中学校や代表理事を務めるNPO法人でオンライン交流会を開催したり、生徒同士がLINEのメッセージカードを送り合ったりするなどタイとのつながりを深める中で、今回のタイ派遣プログラムを知り、タイの学校現場をもっと見てみたいと思い、参加を決めたそうです。
文部科学省「タイ国政府日本教職員招へいプログラム(タイ派遣プログラム)」は、日本の教職員をタイに派遣し、学校訪問、タイの教職員・児童・生徒との交流、文化施設の視察などを行うプログラムです。教育現場での国際交流をとおして日本とタイの相互理解と友好を促進し、プログラム参加者が日本の教育現場での国際理解・国際交流を推進することで、アジア太平洋地域の平和で持続可能な社会の実現に貢献することを目的としています。その運営・実施はユネスコ・アジア文化センター(ACCU)が行っています。
タイは人口の7割近くが3歳から18歳で、平均年齢が非常に若い国です。義務教育のうち中等教育は前期・後期あわせて6年間あり、国を支えていく若い人材の教育に力を入れています。
最初に訪問したタイ教育省(日本の文部科学省にあたる省)での意見交換会では、タイの教育に関する様々な話をし、日本との共通点や相違点が見えたそうです。
続く学校訪問では、いわゆる名門校や大学附属校、公立学校など、それぞれ違う特色のある4校を訪問。どの学校でもスクールプライドの醸成がしっかり行われていて、生徒たちが自分の学校に愛情と誇りを持っていることがよく分かったそうです。
今回のカフェには、竹島さんと一緒にタイ派遣プログラムに参加した先生方や、プログラムを運営するユネスコ・アジア文化センターの方がオンラインで参加してくださり、それぞれ印象に残ったことなどを紹介してくださいました。
○根岸さん(群馬県立大間々高等学校・英語)
タイでは、LGBTQの人々がマイノリティーとして扱われない。LGBTQを主人公にしたドラマがレストランなどでも流れていて、オープンで誰もが平等に暮らせる、生きやすい国だと感じた。
○浅見さん(大阪市立加美中学校・保健体育)
日本の保健体育の授業はレベルが高いと再認識した。タイでは体育の授業は週1回で、アクティビティの一環として行われている印象。生徒たちはスポーツを楽しんでいたが、週1回の授業では、集団行動を身につけたり運動能力を高めたりするのは難しいのではないかという気がした。
○後藤さん(北海道置戸高等学校・家庭科)
帰国後、家庭科の調理実習でタイ料理を作るなど、授業に取り入れている。タイのソンナン学校(中等教育学校)と操南中学校、置戸高校の3校でオンライン交流している。
○伊藤さん(ユネスコ・アジア文化センター)
2023年度のタイ派遣プログラムは、コロナ禍のオンライン交流を経て、4年ぶりの現地訪問だった。五感で現地を感じられる価値、普段と異なる環境に身を置くことの嬉しさを感じた。プログラムを通じて、日本とタイの国際交流に一緒に取り組んでほしい。
プログラム後半では、お互いの伝統文化を披露したり、学校生活やSDGsについて日本語で話し合ったりする交流授業を行いました。
竹島さんたちは日本の文化・価値観について体感してもらおうと、折り紙や書道、空手道や柔道などを紹介しました。武道体験では、実際に道着を着て、正座や礼の仕方、背負い投げなどを体験してもらいました。日本では当たり前に行われている体験型の授業がタイの生徒にとっては新鮮だったようで、楽しんでもらえたそうです。
交流事業をとおして、伝統文化の強み、日本に対する興味、礼儀や感謝の心の大切さなどを実感したとのこと。
帰国後、竹島さんは、英語の授業にタイの話題を取り入れています。タイの写真を見ながら会話の練習をする、新しい文法を習うときにタイに関する例文を出すなど、生徒たちにタイを身近に感じてもらえる工夫をしています。
また、タイ派遣プログラムの様子を校内に掲示し、興味のある生徒を募りました。そこから、タイのソンナン学校、北海道置戸高等学校、操南中学校のオンライン交流へとつながりました(2024年2月21日(水曜日)三校は教育交流トリプル協定にオンライン調印しました)。
参加者からは、タイの教育現場や文化について、学校で国際交流の取り組みを続けていくコツについてなど、たくさんの質問や感想が出ました。