若者グループの自発的な社会貢献活動への伴走やキャリアカウンセリングなど、大学生を中心に年間約100名の若者のキャリア観の成長を促し、キャリアコンサルタントの資格を活かしながら、元気な若者、元気で明るい未来の社会づくりにむけた活動を行っている井口さん。
大学卒業と同時に立ち上げたNPO法人若者応援コミュニティとりのすでの若者の社会参画推進、2022年に設立した株式会社Growvelyでの中小企業の新卒採用支援や教育支援など、企業と学生それぞれの未来を拓く活動を通して見えてきた、持続可能な社会づくりに必要な観点を話してくださいました。
一浪後、岡山の大学に入学した井口さん。楽しく充実した学生生活を送ろうと周りの友人たちを見ると、あきらめ顔で、将来への希望も乏しいような顔が多く、なんであきらめているの?なんでそんなに受け身なの?なんで自分から変えようとしないの?という疑問が湧いてきました。このままではまずいぞ。それは、ちょうど東日本大震災が起きた年でした。
何かしなければ!自分にもできることがあるだろうか?と、自らボランティアとして、被災地に出かけました。そこでは、生き生きと支援活動や支援の受け入れをしながらも夢をもつ若者やNPOとの出会いがありました。
岡山へ戻り、岡山県ボランティア・NPO活動支援センター「ゆうあいセンター」でアルバイトを始めたり、学生団体やNPOの活動に参加するなど、自身の行動を変えてみました。NPOの活動を頑張る多くの若者に出会いましたが、将来のキャリア形成に関してはほとんど考えていないことも感じられました。そうした学生がこのまま社会に出ていくのはまずい、若者が自分らしく輝き、力を発揮できるような支援が必要と考え、キャリアコンサルタントの道へと進みました。
1996年から2010年生まれの若者世代は「Z世代」と呼ばれ、人口比率は日本では13.6%、世界では32%を占めています。これまでの世代と比べ、その価値観は大きく異なり、以下のような特徴があるとされています。
「Z世代の若者を思う方向へ導けない」と感じる年上世代の方は多いのではないでしょうか。「若者=最も進化した人類」という視点を持ち、Z世代を自分と異なる若者とみなすのではなく、新しい時代の価値観とともに素直に生きる人たちと捉えることで接し方が見えてくる、これらの特徴を加味した情報発信が必要だと井口さんは説明を重ねました。
Z世代は、「環境や社会に配慮する」「他者を尊重する」「共感を重視する」など、社会や他者と良好な関係を築くことを意識する人も多いです。
そんなZ世代が働く環境で重視することは以下の4つです。
社会貢献に関心があるのは、彼らが育ってきた社会の背景も影響しているようです。「若者に好かれる企業≒価値観のアップデートができている企業」とも言えるかもしれません。
井口さんのお話を聞いて、参加者からは
「受け入れる側がZ世代を理解できていないことがわかった。力量を試されていると感じた。」
「Z世代のことを聞きたい、知りたいという気持ちはあるが、距離感がわからない。意識しすぎも良くないと感じる。」
などの感想がありました。
井口さんのお話を踏まえて、『今後、若者たちと持続可能な社会をつくるために自分がどうありたいかについて考えてみる』をテーマに、若者たちと持続可能な社会をつくっていくうえで課題と感じること、5年後どうなっていたいか、そのために今の自分に何ができるか、の3つについて、参加者各自で考える時間を取りました。考えた内容について、時間の都合で参加者全員の意見を聞くことはできませんでしたが、代表的な声を紹介します。
「議員をしているので、若い世代が困っていることや、行政の政策に対する意見も聞いて反映していきたい。5年後は多様性の本質にもっと近づいている社会でありたい。自分がキャッチしたり共感したりする若い世代の声を議会に届け続けていきたい。」
会場からは「Z世代が人間関係を大切にする、つながりたいという気持ちをもっている一方で、感覚が違うと逃げてしまうという現象があるのはなぜ?」という問いが上がりました。
井口さんからは、つながりを確かなものにするためには、「何のためにつながるのか?」がきちんと説明され納得していることや、その取組によって生まれる近未来像がイメージできることなどが重要であるとの答えがありました。
町内会などの地域の取組における若い世代との関わりに課題を感じてきた方からは、「若い人の『自分達の価値観は大人にわかるものか』『大人には興味がない』『自分たちの価値観で動きたい』といった思いは自分が若い時に抱いていた感覚と同じだと感じた。Z世代と異なるのは表現方法で、今はおとなしく特に反発をしないということではないか。つながりたいという共通ニーズは大人も若者もあると思う。共通することが何かを考えてみたい。」といった声も上がりました。
井口さんは、「人口減少が進む社会にあって、次世代を育てる心を持って、温かく接することが重要。彼らの目線や価値観に寄り添うことが大切なのではないでしょうか。そんな活動をやっていきましょう。」として、Z世代としっかりつながっていくためのさまざまなヒントが得られたカフェは締めくくられました。