5月18日(木曜日)に2017年度第2回ESDカフェを開催しました。
消費者月間である5月は、ゲストに就実短期大学 生活実践科学科の小田奈緒美さんをお迎えし、消費者市民社会や、社会を変える市民の面白い取組みの「お買いもの革命!」などについてお話をお聴きしました。
ESDカフェの様子
購買行動の中で、毎日の食品や日用品等の買い物は回数が多く、またその主体のうち約7割が女性で占められているという特徴があります。そこで、以前いた名古屋で日々買い物をしている主婦の方々に集まっていただき、講座を開催しました。内容は、自分の消費行動で社会が変わるかというものです。内閣府の調査では、約6割の方が変わると思うと回答があったそうです。また、GDP(国内総生産)の中で、約6割もが家計の支出で占められており、普段の買い物で社会が変わる可能性は高いと言えます。
具体的にどう変わるかというと、例えば食品偽装や食中毒など、企業の不祥事が起こった場合、消費者がその企業の商品を買わないという行動を起こし、その企業の売り上げが下がるという変化が起きます。消費者は、その企業ではなく、他の企業の商品を買うという選択を行ったということです。また、不祥事でなくても消費者が他よりも優良なサービスを提供してくれる企業の商品を購入しようとするときには、同様に意思決定を行っています。この時、消費者は自分の大事なお金を使い、良い商品、良い企業を選択しているのです。
つまり、買い物は、消費者によるお金の投票と捉えることができます。結果として、良い企業が利益を上げ成長していき、最終的には良い企業ばかりの社会になることが、持続可能な社会にもつながっていきます。
商品を選ぶときには、環境に優しいものかどうか、児童労働による不当な取引で成り立っている商品ではないかどうか、そこに思いをはせることが重要で、社会的な影響やその背景について考え、自分で学び調べて、最終的には行動につなげていくことが大切です。
1968年に消費者を保護する目的で、消費者保護基本法が制定されました。この法律は2004年に、消費者を保護する対象から自立する主体へと捉え直した消費者基本法に改正されました。その後、2009年には、消費者教育も含めて消費者に関する情報が一元化されることを目的に消費者庁ができました。そして、2012年に「消費者教育の推進に関する法律」が成立し、今後目指すべき社会が「消費者市民社会」と定められました。
この法律の中で「消費者市民社会」とは、「自らの消費生活に関する行動が、現在及び将来の世代にわたって内外の社会経済情勢及び地球環境に影響を及ぼし得るものであることを自覚し、公正かつ持続可能な社会を創るために、積極的に参画する社会」と定義されています。
消費者庁では、消費者教育推進のための研究会を開催し、消費者教育の体系イメージマップにおいて、消費者教育を進めるためにイメージマップを作成し、消費者市民社会の構築や商品の安全、生活の管理と契約、情報とメディアの4分野毎にライフスタイル別の到達目標を示しました。
消費者市民社会に向けた取り組みのひとつとして、名古屋で買い物をする主婦とスーパーマーケットを対象とした「リサーチャーズクラブ」を作りました。これは、消費者とスーパーや百貨店など売る側とのミスマッチを埋めるために、互いの情報交換の場を提供する社会実験を行ったものです。
このリサーチャーズクラブでは、3つのチームが作られました。そのうちの1つが容器包装チームで、買い物時の包装が過剰になってはいないかという疑問から作られました。売り場でのリサイクルに関するアンケートの実施やポスターの作成をしました。2つめの食品について調べる食チームは、エコクッキングを取り入れたレシピを考案し、POPを作成して売り場に掲示しました。
3つめがエコチームです。エコ商品やプライベート商品をチームで試し、製品の良さを消費者のコメントとして出しました。
2年目には、容器包装チームが食品トレイをリーフパック(紙シートにラップを使ったエコ包装)に変えていく取り組みを行いました。リーフパックにすると、CO2排出量の半減や、家庭でのゴミの減量、リーフパックがまな板代わりにも使えるなどの利点も多く、これらのPOPを掲示すると、その商品の売り上げが上がりました。
また、他の店舗では、商品を安全に持って帰ってもらうために厳重に包装をしていましたが、包装不要の意思表示のディスプレイの設置により、紙袋不要と申し出る客が2倍に増えました。
家庭でできる省エネ行動でも、LEDの使用や自動車のふんわりアクセル等、日常から取り組んでいける行動はたくさんあります。
2つめの事例として、ドイツのミュンヘンでは、2年に1度、子どものまち「ミニ・ミュンヘン」が開かれています。期間は約3週間で、対象は7才から15才です。子どもたちは、まず市民登録を行って、他者とのコミュニケーションを学ぶオリエンテーションを受けます。そして、仕事や勉強をすれば給料がもらえる仕組みになっています。通貨はミミュという地域通貨で、お金を使うときに20%の税金を支払います。仕事や勉強を4時間行うと、上級市民権を得て、選挙に立候補できたり、タクシーの運転手免許がもらえます。
会場内には、デパートや銀行、美容院、職業安定所、大学など色々な施設があり、本物の警察官やコックさんもいて、調理などを実際に指導してくれたりします。清掃局の仕事も人気です。他にも、議事堂では市長選挙が行われ、候補者は公約を掲げます。このミニ・ミュンヘンには、1日に約2,000人の子どもたちが訪れます。
一方、日本でも日本型ミニ・ミュンヘンが開催されており、商店街で行う「ミニさくら」や、小学校の校庭での「むさしのミニタウン」等があります。名古屋の「だがねランド」は30日から1か月半の長期間開催しており、自分たちの町を学ぶ良い機会になっています。
参加する子どもたちにアンケートを行ったところ、消費者教育の体系イメージマップの10項目を多く達成しており、消費者市民力が高められたことがわかりました。
日本人は1年間に1人あたり約40枚のチョコレートを食べていますが、自国でカカオを生産できない日本は、主にガーナからの輸入に頼っています。そのガーナのあるアフリカでは、子どもの4人に1人が働かされています。カカオの生産は、労働力による業務の割合が大きく、市場価格も低くて安定しません。結果として、農場主は賃金の安い子どもを雇うため、児童労働の割合は減っていません。
そこで、フェアトレードの商品や寄付付き商品を購入をすることで、これらの問題解決に貢献することができます。寄付付き商品の例を挙げると、ボルビックの水や日清食品のチキンラーメン、イケアのおもちゃや絵本、森永製菓のチョコレートなど食品のほか、九州産業大学や西南学院大学では「社会を良くする文房具」として、ゼブラと共同開発したボールペンやシャーペンが販売されています。
また、環境に配慮された商品を選ぶことも大切です。例えば、地産地消の商品購入は、輸送によるCO2の削減につながり、レインフォレストアライアンス(熱帯雨林の保護と維持を目的として活動する国際的NGOの一つ)認証商品の購入は生物多様性の保護につながります。また、省エネマークのついた商品の購入は、環境負荷の少ない持続可能なライフスタイルの実現につながっていきます。
買い物でできるエコ行動もたくさんあるので、できることから取り組んでいきましょう。自立した消費者市民への3ステップとして、最も重要なことは行動することです。知識を得ることだけで満足せず、できることから行動に移し、更に良いと思えることを周囲に伝えることを心がけてほしいです。
我々の日常の「買い物」=「円投票」をとおして、より良い社会を作っていきましょう。
ミニ・ミュンヘンの日本版はどのように組み立てるのですか?
今年の12月3日に京山公民館で1日だけ開催します。できれば消費者教育の要素を取り入れた形で開催したいと考えています。市民性を高めるため、選挙も行いたいし、様々な企業と関わりながらフェアトレードの商品も販売したいです。規模は100人から200人程度になる予定です。将来的には岡山市の全公民館で開催できたらうれしいです。
ミニ・ミュンヘンは日本ではこどものまちとして、2002年に始まって以来年々増加し、今では約200か所で開催されています。地域や団体により募集方法や趣旨も様々で、岡山では岡山青年会議所が中心となって、キッズビジネスパークが子どもたちの職業体験の場として開催されています。
岡山市ESD推進協議会(岡山市ESD推進課内)小西・宮崎
電話:086-803-1351
電子メールアドレス:esd@city.okayama.lg.jp