岡山ビューホテルは、1984年4月に岡山市北区に開業しました。97の客室はすべて入口で靴を脱いで過ごすスタイルで、床に座ってくつろげる「GORORIルーム」や、「集う」をコンセプトに最大4名まで泊まれる「MINNAルーム」があり、ビジネスマンや家族連れに人気です。
岡山ビューホテルでは、社会課題を解決するために様々なことに取り組んでいます。今回はそのうち主なものを紹介してくださいました。
フードロス削減のため、朝食はフルバイキング方式をやめて注文が入ってからメイン料理を作る、野菜・肉・魚の切れ端を余すことなく使って出汁を取る、などの工夫を凝らしています。これにより、食べ残し以外でのフードロスはほぼゼロとなっているそうです。
プラスチックごみ削減に向けては、歯ブラシ以外のアメニティは部屋に置かず、希望者に渡す方式にしています。歯ブラシも麦の殻を使ったバイオマス商品を導入し、さらに「マイ歯ブラシ運動」として、お客様に自分の歯ブラシを持ってきてもらうよう呼びかけています。
コロナ禍となった2020年3月から、館内のレストランでこども食堂を開いています。そのほか、親と離れて夜を過ごす子どもたちのために保育園にお菓子を差し入れたり、ひとり親家庭の親子を招いてワークショップや食事会を開催したりもしています。
こうした活動は、ホテルのシェフが作る料理を食べる機会の少ない子どもたちにとって楽しい思い出になると同時に、ジビエを活用した鹿肉カレーなどを提供することで、命の大切さを伝える食育へもつなげています。
地域の生産者・企業と協働でレストランのメニューを開発したり、スパイスやコーヒーなどのオリジナル商品を販売したりしています。また、商品のパッケージデザインを障がいをもつデザイナーに依頼し、自立支援へつなげています。上野さんは、オリジナル商品の売り上げの一部を子ども食堂の資金とし、持続可能なビジネスモデルにしていこうと考えているそうです。
これらの活動が評価され、岡山ビューホテルは「おかやまSDGsアワード2021」優良な取組、「第25回人に優しい地域の宿づくり賞」優秀賞などを受賞しています。
岡山ビューホテルでは、地球・社会・人に対する「思いやり」をもっとも大切な価値観としているそうです。また上野さんは、多くの社会課題に複合的に取り組むことで、岡山のまちの魅力が向上し、SDGsの目標11「住み続けられるまちづくりを」を達成できると考えています。
さらに、未来(目標)を描き、そこから逆算して今できることを考え実践する「バックキャスト思考」や、課題を自分事化すること、ボランティアでなく社会によいことをして利益をあげるビジネスモデルなど、SDGsに取り組む際に大切な考え方についても話が広がりました。
最後に、上野さんが現在の取組を始めたきっかけ、取組に対する想いを話してくださいました。
上野さんは幼い頃、両親が共働きで寂しい思いをしていたそうです。一人でごはんを食べる子どもの寂しさと、子どもを家に残して働く親の後ろめたさの両方が分かるからこそ、そのような思いをする子ども・親を減らしたいと思っているとのこと。また、祖父母がかけてくれた「優しい子だね。その優しさは一生の宝だよ」という言葉から、やさしさ・思いやりを大切にしているそうです。
「お客様へのおもてなしとSDGsの取組を両立していることに感心した」「自分もバックキャスト思考で行動したい」などの感想が聞かれました。また、ホテル単独ではなく地域と連携して取り組んでいる点、取組が互いにつながっている点も、参加者の印象に残ったようです。