平成28年10月20日(木曜日)、今年度第6回目のESDカフェを開催しました。
岡山芸術交流2016パブリックプログラム&ESDカフェ連携企画として、アユモドキからみた「開発」の問題について、哲学カフェスタイルで話し合いました。
今回はいつものアスエコではなく、奉還町のゲストハウスKAMPでの開催でした。
ゲストはアユモドキ里親会の森千恵さん。
森さんは2010年から岡山市教育委員会アユモドキ人工繁殖事業ボランティアスタッフとして保全活動に取り組まれています。
また、今回は哲学カフェスタイルということで、カフェフィロ副代表の松川絵里さんがファシリテーターを担当しました。
松川さんは2004年から哲学カフェや子どもの哲学等、各地で対話の進行やサポートを行っています。
今回のカフェは27名の方々にご参加いただきました。
アユモドキは、以前は珍しい魚ではありませんでしたが、生息地は今や旭川水系、吉井川水系.京都琵琶湖淀川水系の3カ所のみになってしまい、絶滅が危惧されています。
日本固有種であり、天然記念物にも指定されています。
今回は、森さんが関わっている高島地区のアユモドキについてお話しいただきました。
アユモドキは氾濫原または休耕田、小溝などの一時的水域(普段は水がない環境に一時的に生まれる浅い水たまり)を利用して産卵します。
高島地区のアユモドキの産卵地は、10月くらいから田植えがある6月くらいまでは乾いた原っぱのようなのですが、田植えの時期が来ると、人間が人為的に水を入れ、氾濫原のような場所ができるのです。
高島地区のアユモドキが住む自然は、人が水を調節しているという環境なのです。
人に依存して種を保存している状況ともいえます。逆に言えば、今のまま人が田植えを通じて水の調節を行い続ければ、これからもアユモドキが存続するかもしれません。
しかし、田植えはアユモドキを守るためにされているわけではありません。
もしも氾濫原的な場所を人間が作り出す需要がなくなった時にはどうなるでしょう。
せっかく産卵地に入ってきた魚が、人間が水を入れなくなったために干上がってしまう危険性もあるのです。
高島学区は農地の宅地化が進んでいる学区でもあり、氾濫原的な場所が減少しているという懸念もあります。
森さんにお話しいただいた後、何点か確認をしました。
アユモドキは、日本固有種で他の国には住んでいないため、日本で3か所ということは、世界で3か所しか産卵地がないそうです。
なぜ氾濫原的な場所にわざわざ産卵するのかというと、天敵が少なく、成長するために必要な栄養も多いからだそうです。
その後、ファシリテーターの松川さんの進行のもと、参加者みなさんで語り合いました。
アユモドキの話を初めて聞いて、「アユモドキってアユの仲間かと思ったら全然違った。」という方もいれば、ダルマガエルの保護活動をしている方からは、「ダルマガエルは田んぼでずっと生活をしていて、保護のために米を売って収益を上げている。しかし、アユモドキの産卵地は田植えの時期だけ出現する氾濫原である。氾濫原に田んぼのような収益を生み出す価値を見だすことは難しいようにも思うが何かアイデアがあるだろうか。」といった意見のほか、「農家の人たちとアユモドキを保護しようとする人たちの間に対立がないのか。」「アユモドキの保護ももちろん大切だが、道を広くするなど暮らしの利便性を高めることも大事だと思うがその点はどう考えるか。」など様々な意見や感想が出ました。
今回はアユモドキについて「開発」という視点で話し合いました。
人間の開発によって、動植物の数が減っている事例はたくさんあります。
それは、氾濫原の減少で産卵地が減っているアユモドキについてもあてはまる話です。
しかし、アユモドキを保全するためには、水田のように人間の手を加えること、言わば「開発」が必要となります。
環境問題について語るときは、開発=悪と考えてしまいがちですが、自然と人間の共生・共存のできる開発、すなわち「持続可能な開発」もあります。
今回のESDカフェは「開発」を切り口に物事を多面的に考えるよい機会になったのではないでしょうか。
岡山市ESD推進協議会(岡山市ESD推進課内)宮崎・小西
電話:086-803-1351
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