ページの先頭です

共通メニューなどをスキップして本文へ

第9回ESDカフェ(2017年度)

[2018年3月13日]

ID:38391

ソーシャルサイトへのリンクは別ウィンドウで開きます

  • テーマ:「違い」は「怖い」じゃない!~トルコの難民保護政策から考える「平等な社会の実現と持続」とは?~
  • 開催日時:2018年2月22日(木曜日)午後6時30分から午後8時
  • 開催場所:環境学習センター「アスエコ」(岡山市北区下石井2-2-10)
  • 講師:岡山大学法学部3年 岩本歩実さん

第9回ESDカフェ「『違い』は『怖い』じゃない!~トルコの難民保護政策から考える『平等な社会の実現と持続』とは?~」

2018年2月22日(木曜日)に、2017年度第9回ESDカフェを開催しました。今回は、「違い」は「怖い」じゃない!~トルコの難民保護政策から考える「平等な社会の実現と持続」とは?~というテーマで、岡山大学法学部3年の岩本歩実さんにお話しいただきました。

岩本さんは、2016年3月から1年間、トルコ共和国に留学しました。トルコを留学先として選んだのには2つの理由があります。1つ目の理由は、留学先で何を学ぶか自分で決めたかったからです。岩本さんの留学プログラムでは、留学先を複数の国から選ぶことが出来ましたが、トルコ以外の国では留学先での学習内容が決められていました。トルコだけは現地で何を学ぶか自分で考えることができたそうです。それまで自分で決めて行動することが苦手だった岩本さんは、あえて自らの主体性が必要とされるトルコを選ばれたそうです。もう1つの理由は、トルコの子どもの貧困率が高いことに関心を持ったからです。岩本さんは、大学1年の頃から遺児の進学支援のための募金活動に携わるなど、教育や貧困問題に興味を持っていました。OECD加盟国の中で、トルコの子どもの貧困率は特に高いのですが、それまで岩本さんはトルコに貧困のイメージを持っていなかったため驚き、現地の実情を見てみたいと思ったそうです。

ESDカフェの様子1

岩本さんが留学していたのは、トルコ最大の都市であるイスタンブールと首都アンカラの間に位置するコジャエリという県です。留学中はトルコ語の授業を取りましたが、クラスメイトは様々な国から来ていて、世界中に友達が出来たと岩本さんは話します。留学中、トルコ語の学習だけではなく、トルコ国内を旅行したり、貧困問題や教育事情の調査をしたりしました。また、トルコ語でスピーチをする機会もありました。

留学中に、岩本さんの人生を変える大きな出来事がありました。岩本さんが留学していた時には、すでにトルコ政府はシリア難民を受け入れていたため、街中にシリア難民が多かったそうです。そのため、多くのトルコ人はシリア難民を見つけても驚くこともなく、見て見ぬふりをして過ごしていました。岩本さんもそうでした。しかし、岩本さんは、ある寒い日に、靴すら履いていない裸足のシリア人の子どもを見つけました。いたたまれなくなった岩本さんは、その子にお金を渡し、靴を買うように伝えました。しかし、その後少し歩くと、また裸足の子どもがいました、更に歩くと、また裸足の子どもがいました。岩本さんは家に帰った後、「お金を全員にあげるべきだったのか。それとも、全員にあげない方がよかったのか。お金ではなくものをあげればよかったのか」と悩んだそうです。この出来事がきっかけで、岩本さんはシリア難民に関心を持つようになり、トルコのシリア難民に対する政策について調べました。

ESDカフェの様子2

国が行うシリア難民に対する政策

トルコ政府がシリア難民に対して行う政策に、難民一時保護制度があります。この制度に登録すると、医療や教育などのサービスを無料で受けることができます。また、トルコのエルドアン大統領は、シリア難民にトルコ国籍を付与すると発表しました。最大30万人の難民にトルコ国籍を付与する政策ですが、実際にこれまでにトルコ国籍を付与された人の数は1万人強程度にとどまっています。

国の支援だけでなく、自治体による支援もあります。岩本さんが住んでいたコジャエリ県でも、シリア難民のための病院の建設や、子供向けの防災教育の実施などが行われています。しかし、難民が多すぎて、全ての人に支援が行き届いていません。

トルコでは国レベルでも自治体レベルでも保護政策を進めていますが、トルコ人がトルコ語を話すのに対し、シリア人はアラビア語を話すこともあり、難民に情報が届いていなかったり、制度を利用するための登録方法が理解されていなかったりするそうです。トルコ人とシリア人は、言語面だけでなく、文化面でも違いがあります。シリア内戦の長期化により、支援を続けるトルコ国民の不満も高まっていますが、この問題の解決には相当な時間がかかります。岩本さんは、共生していく市民が現状を受け止め、違いを受け入れることで、トルコ人もシリア人も住みやすい社会になるのではないかと話します。

岩本さんのお話を聞いた後、カフェの参加者で、「どうしようもない不平等」にはどのようなものがあるかを考えました。「国籍」、「性別」、「貧富」、「教育の機会」、「人種」、「親」、「戦争」など様々な不平等が挙げられました。これらの不平等が存在する中で、平等な社会の実現のためにはどんな支援・政策が考えられるか話し合いました。「戦争」について考えたグループからは、「皆が友達になれば戦争はなくなるのではないか。」「すべての国のトップが女性であれば戦争はなくなるのではないか。」「お金を稼ぐことが戦争を起こす理由だと思う。世界からお金がなくなれば戦争はなくなるのではないか。」などの声が挙がりました。「貧困」について考えたグループからは、「ベーシックインカムを導入すれば、お金が理由でやりたいことが制限されることはなくなるのでは。」「貸与型でなく、給付型の奨学金をもっと増やすことが必要。」などの意見が出ました。

ESDカフェの様子3

不平等について考えるとともに、平等を実現するために私たち一人ひとりに何ができるかを考える良い機会になったのではないでしょうか。

お問い合わせ

岡山市ESD推進協議会(岡山市ESD推進課内)小西・宮崎
電話:086-803-1351
電子メールアドレス:esd@city.okayama.lg.jp