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#107「生理革命委員会(生理革命委員会)」

[2024年1月5日]

ID:55816

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生理革命委員会って?

私たち生理革命委員会は、岡山市立岡山後楽館高等学校の3年生(2024年3月卒業予定)3人組です(山領珊南、山形萌花、澤田まりあ)。学校の授業「総合的な探究の時間」で、グループでSDGsに関するテーマをひとつ決めて探究活動をすることになっていたので、私たち3人でグループになり「生理の貧困」をテーマに設定しました。

校内で、生理に関するアンケート調査や生理用品を設置する実証実験を行いました。その結果を見て、岡山県内の他の高校にも同じように生理の貧困の状態があるのではないかと考え、県内の公立高校にトイレットペーパーと同じように生理用品を設置したいと思い、賛同を求めるオンライン署名活動とクラウドファンディングを実施しました。クラウドファンディングでは、県内公立高校に1年間生理用品を設置する際の費用の200万円を目標金額にして、たくさんの方の支えで達成することができました。これらの成果を踏まえて岡山県議会に陳情書を、岡山県教育委員会に提言書を提出しました。現在は県内公立高校の個室トイレへの生理用品の設置について、取組を進めているところです。

生理革命委員生(山領珊南、山形萌花、澤田まりあ)

生理の「貧困」 period poverty

生理の貧困は、日本ではコロナ禍で注目されるようになった問題のひとつです。たくさんの人が仕事を失い、経済的貧困に陥りました。そんな中、生理用品を購入することが困難になったり、交換頻度を減らしたりする女性がいることがニュースになり、問題として浮かび上がってきたのです。しかし、これはコロナ禍が生んだ問題ではありません。昔からずっと存在していたのに気づかれていなかった、もしくは気づかれても放っておかれていただけなのです。

この問題はperiod povertyと呼ばれ、いくつかの医療系の団体が定義を発表しました。代表的なものとして、アメリカ医学女性協会による定義を紹介します。

“Period poverty refers to the inadequate access to menstrual hygiene tools and educations, including but not limited to sanitary products, washing facilities, and waste management. Through education and advocacy we can greatly improve access to hygiene facilities and products, reduce stigma and shame, and encourage education about menstruation.”

訳:生理の貧困とは、生理用品・洗浄設備・廃棄方法などを含む、生理用品や生理に関する教育へのアクセスが不十分である状態のこと。教育や権利擁護によって、衛生設備や生理用品が行き届き、偏見や恥ずかしいと思う気持ちを軽減し、生理に関する教育を促進することができる。

Alexandra Alvarez

October 31, 2019

原文はこちら別ウィンドウで開く

日付を見ると、コロナウイルスが最初に中国で発見されるよりも2ヶ月ほど前で、コロナ禍以前からこの問題が存在していたことがわかります。この団体の定義では、povertyは、ただ単にお金がなくて生理用品が買えないことではなく、あらゆる理由による生理用品へのアクセスが困難な場合を含み、さらには教育が不十分である状態もperiod povertyであるとしています。

この他にも、内閣府の男女共同参画局が公表している文書で、「経済的な理由で生理用品を購入できない女性や女の子がいる状態」とされているなど、「生理の貧困」の定義はさまざまに存在しています。

その中で、私たちが活動の基本にしているのは、上記のアメリカ医学女性協会によるperiod poverty 「生理に関する衛生的な手段や教育が十分に行き届いていない状態」です。私たちがこの活動を通して目指している「誰もが自分らしくいられる社会」に向かっていくために、重要な視点を含んでいると思っています。

貧困について

生理革命委員会が目指すゴール

個室トイレへの生理用品の設置

私たちは、「経済的な貧困」に限らず、「生理に関する衛生的な手段や教育が十分に行き届いていない状態」の解決を目指して活動しています。私たち自身も、生理痛が重かったり、生理用品をトイレに持って行き忘れて絶望するなど大変な経験をした当事者です。個室トイレに生理用品を設置するのは、そうした切羽詰まった状況を緩和し、安心感を生む取組のひとつなのです。

こうした私たちの活動は、これまでに新聞やラジオ、テレビなどのメディアで報道されています。そのほとんどは、署名やクラウドファンディング、陳情の提出など、県内公立高校のトイレに生理用品を設置する取組を取り上げたものでした。高校生が自ら取り組んでいることが珍しかったのかもしれません。

取材の様子

「貧困」というと、日本では「経済的な貧困」を連想することがほとんどだと思います。ネットニュースに取り上げられた時には、「スマホ代は払うけどナプキンは買わない。」など、経済的な貧困に結び付けた批判的なコメントが書き込まれました。1000件にものぼるコメントの8割は否定的なものでした。また、「普段から生理用品を持っていると特に困ることはない。それを『たしなみ』という。トイレに常備されていて当たり前と思ったとしたらそれは厚かましいと思う。」「生理用品を個室トイレに置いていると大量に持って帰ってしまう人がいるのではないか」などの意見もしばしば耳にします。

繰り返しになりますが、私たちの目指すゴールは、ただただ高校のトイレに生理用品を設置することではありません。生理に関する衛生的な手段や教育が十分に行き届いていない状態を解消し、生理は恥ずかしいもの・隠すものという意識を改善し、生理についてオープンに話せる社会にしていくことです。

本当に実現したいこと

生理のある人は、生理前にはイライラする、生理中にはお腹や腰が痛くて気分が落ち込むなど、つらい思いもしています。大事な人がつらい思いをしていたら、風邪をひいたりケガをしている人を助けるのと同じように、生理のある人もない人も、当たり前に優しく声をかけ助け合える社会を実現したいです。

しかし現実は、学校では生理について深く教わることはなく、生理用品を購入すると中が見えない袋に入れられるなど、「生理は隠すもの」といった生理をタブー視する雰囲気がはびこっています。そうして、生理は恥ずかしいもの、人に言えないものという認識が再生産され続けています。

私たちは、「トイレットペーパーと同じように生理用品を。」というスローガンを掲げて活動してきました。つまり、生理用品が無料でどこのトイレにも大体はある状況をつくるということです。でもそれだけではありません。トイレットペーパーを扱うとき、恥ずかしい思いをする人はいません。トイレットペーパーを買っても中が見えない袋に入れられることがないのと同じように生理用品を捉えることができたなら、生理用品へのアクセス、生理へのタブー視の両方が改善されるのです。それは、恥ずかしいもの、人に言えないものという認識を変革していくことにもつながります。生理についてオープンに話せるようになることで、最終的には生理のある人の体の健康が守られることにつながると思います。

話し合いの様子

すべての人が自分らしくいられる社会に

ここまで読んでいて、「生理がある人」「生理がない人」という表現が使われていることに気がつきましたか?これは、私たちが生理は女性だけのものではないと知ってから使うようになった表現です。心の性と身体の性が一致せずに生理のことで辛い思いをしている人たちがいると知り、少しでもその人たちに寄り添いたいと思ったのがきっかけです。

しかしよく考えてみると、女性全員に生理があるわけではありません。初めて生理が来る年齢には個人差がありますし、生理はいつか終わるものです。もちろん社会的には、今まで生理は女性のものとして考えられてきました。これからもそれが変わることはないかもしれません。それでも、私たちの想いを表現する方法として、生理がある人・ない人という言い方をしています。

生理がある人もない人も、生理のことを正しく理解し、お互いに尊重できる社会を目指すと決めてから、私たちのポスターやインスタグラムには、常にオレンジ色を使うことに決めました。誰もがアクセスしやすく、明るい色だからです。

SNSでの活動

私たちは、この活動を通じてさまざまなことを学びました。残念ながら良いことばかりではありません。メディアの伝え方ひとつで、私たちが生理用品を設置することだけを目的に楽しそうに活動している高校生3人組に見えたこともあったと思います。当たり前ですが、いつも楽しそうに笑顔で活動できているわけではありません。日本語の「貧困」という言葉ひとつで、多くの誤解を招くことも知りました。正しい翻訳が必要だと感じています。

「トイレに生理用品を置くのは不衛生だ」「大量に持って帰ってしまう人がいるのではないか」「そんなことで人に頼るな」さまざまな意見が飛び交っています。個包装された生理用ナプキンはむき出しのトイレットペーパーより清潔だと思いますし、持って帰らなければいけないほど困っているのであれば、まさにそこにニーズがあるということです。なぜ困っている時に人に頼ってはいけないのでしょうか?この活動自体、たくさんの大人に支えられながら行っているものです。

良い評価も批判も受け入れながら、私たちはこれからも顔を出して、名前を出して、自分たちの問題を自分たちで解決していきます。

次の執筆者さんからのメッセージ!

岡山芸術創造劇場 ハレノワ 事業グループ  江原久美子さん

「誰もが自分らしくいられる社会」を目指す、という言葉に共感しました。

身体や経済的な状況の違いによって分断されるのではなく、みんながともに生きていけるようにしようという皆さんの取り組み、すばらしいと思います。