労働力・人口減少が続く日本で働く外国人数が、2017年10月末で128万人と過去最大になったと報道されています。しかし、その半数近くは留学生などのアルバイトや技能実習生で、安定した仕事に就けているとは言えません。
2030年までの目標として国連で採択された「持続可能な開発目標(SDGs)」の目標8は、「働きがいのある人間らしい仕事」を意味するディーセントワーク(Decent Work)です。
NPO法人メンターネットは2004年7月の設立以来、「多文化協働の仕事づくり・まちづくり」をコンセプトにして、外国人との「多文化共生」活動をしてきました。
SDGsロゴ
NPO法人メンターネットの第一の活動は、日本に在住する外国人(在住外国人)の個別支援です。毎年100件を超える相談を受け、ビザ取得を中心に、留学生の地元企業への就労、起業や国際結婚・離婚などの個別支援をしてきました。
在住外国人は地域の日本人とのつながりが薄く、問題を抱えても相談するところがない人が多いので、私たちの活動が一定の役割を果たしていると思っています。
9年前のリーマンショックの際は、総社市で失業した日系ブラジル人への日本語学習・職業訓練支援を行いました。
総社市で初めての多文化共生フォーラム
NPO法人メンターネットでは、孤立した在住外国人を支援する活動を「創縁社会づくりプロジェクト」と名付け、市民協働の観点から、地域の人的資源のつながり・ネットワークで解決するように努めています。
現在力を入れているのは、「(介護)外国人技能実習制度の適正化」に向けた活動です。この制度は、技能・技術習得の機会となる一方で、賃金・労働時間等の面で外国人技能実習生(以下、実習生)の権利が守られない事例もあることから、しばしば批判の対象にもなっています。
しかし、政府の職種拡大や大手企業も許可する施策により東南アジア諸国を中心に急増。加えて、2017年11月に施行された技能実習法に「介護」職種が追加されたことにより、さらに増加する見込みです。現状では、岡山県内の在住外国人のうち、4人に1人が実習生となっています。
技能実習制度については、実習生の借金・失踪、受入企業の労働関係法違反や悪質なブローカーの介在などの問題が顕在化しています。
しかし、グローバル化対応や人材不足の中小企業からすると、外国人労働者なくして地域経済の活性化は成り立たなくなっているというのも事実です。
実際に、NPO法人メンターネットで入国後講習を行ったベトナムの実習生が、東日本大震災で被災した水産加工業で寒さに耐えて働き、日本の地域経済に「国際協力」いただいています。
また、実習生を受入れることで初めて、「時間外・休日労働」に関する労使間協定である36協定を従業員と締結する事業所が増えるというメリットもあるようです。
制度の適正化に向けて、私たちは実習生の人権と労働条件を保護する法制度について学ぶ「法的保護情報講習」を実施するとともに、実習生への入国直後の日本語教育・生活ガイダンスも行っています。
そのために、多言語テキストや実習生向けの介護日本語テキストも作成してきました。
技能実習制度適正化懇談会
法的保護情報講習
在住外国人の安全・安心な仕事とくらしを実現し、ESD・SDGsの主旨を活かすには、外国人が定住できる環境をつくる施策が不可欠です。働きやすい・暮らしやすいまちづくりのため、今後も支援・提言を続けていきます。
生活協同組合の再建、中小企業の経営コンサルタント、中小企業家団体設立・運営を経験し、外国人の入国・在留申請を扱う申請取次行政書士を専門の仕事としてきました。岡山ユネスコ協会を再建する中で、在住外国人を支援する活動を通じて、NPO法人メンターネットの設立にいたりました。