ページの先頭です

共通メニューなどをスキップして本文へ

#104「誰もが人生を全うできる社会へ(株式会社ココピア)」

[2023年9月7日]

ID:52758

ソーシャルサイトへのリンクは別ウィンドウで開きます

孤独死の現場からSDGsの取り組みを

 岡山市に本社をかまえる「ココピア」は、2012年に創業した遺品整理・生前整理・特殊清掃を行う会社です。夫と会社を経営する中で多くの孤独死(自殺者、殺人含む)のお部屋の片付け・清掃を経験してきました。

 私は、夫の会社に携わるようになって5年ほどですが、岡山県内で300件以上の孤独死の片付けの現場を見てきました。孤独死の現場から学んだのは、どんな人でも「本当は孤立したくない、もっと生きたかった」と願っていたのではないかということです。現場から出てくる手紙や、お部屋の様子から現場スタッフはそのように感じることが多いです。その経験から「誰もが人生を全うできる社会」にしたいと願うようになりました。人はいつか死にます。ですが「死」という現実についてなかなかリアルに考えることのない日本で、どんなことを伝えていけば、「今を生きる」ことに繋がるのか?、後悔のない人生を送るには?ということを考えるようになりました。

遺品整理の様子画像

遺品整理の様子

 岡山県内でも孤独死は増加傾向にあり、その年代も様々です。高齢者の孤独死も多いのですが、弊社で関わる孤独死の半数は40代から60代です。ゴミ屋敷、ひきこもり、生活困窮、心の障がいなど様々な要因が孤独死に繋がっています。そして、子ども時代の複雑な家庭環境なども関連していることが多いようです。
 だからこそ、こうした課題を解決していくには、様々なジャンルの方にアプローチが必要だと感じ、セミナー活動を2020年頃より積極的に開始しました。私たちが現場で経験した「孤独死」の事例を通して、「生きること」について考えるきっかけをつくる研修やワークショップを、公民館や企業、終活や相続関連のセミナー、自主開催など様々な形式で、子どもから高齢者まで各世代に合わせた内容で行っています。
 こうした活動に先立って、2019年には自らの学びを深めるためにSDGsビジネスマスターの資格を取得し、自社での取り組みに役立てるために研修等のできる講師として学びを深めました。現在は、社外での需要も増え、他業種への企業研修や、学校や施設での授業などのほか、ラジオパーソナリティとしてメディアでの啓蒙活動も行っています。

セミナーの様子画像

セミナーの様子

ラジオパーソナリティとしても活動中の画像

ラジオパーソナリティとしても活動中

就労継続支援事業所との連携

 自殺者や孤独死の遺品整理の現場に立つと、「なぜそこに至ってしまったのか」を考えてしまいます。そして、「一人でも働きがいや生きがいを感じ、働いて頑張ろうと思えるようになれば、この状況は変わるかもしれない」と。そこで、就労継続支援事業所との連携をスタートしました。そこには、身体的な障がいをもっている方はもちろんですが、心の障がいを抱えている人も多くいらっしゃいます。
 お仕事を通して「イキガイ」を見つけてもらおうという想いで、就労継続支援A、B型事業所の利用者に遺品整理の研修を半年間行いました。研修では、技術だけでなく、仕事への情熱や「想いを寄せる」ということを伝えています。研修後も彼らに新たな仕事の機会を提供し、生きがいを見つける手助けをしています。こうした取り組みの結果、現場に入る際に自然と一緒に手を合わせ「合掌」をするようになったり、彼らがイキイキ働いている姿をみて感動をいただくこともあります。現場で指導しながら一緒に働いている弊社のスタッフもモチベーションがあがり、元気になるという感想も寄せられています。

現場の様子画像

現場の様子

モノを活かして必要とする人へ届ける活動

 買取やリユースを強化した新しい事業を展開しています。遺品整理から出た物品の多くはまだ使用可能ですが、ブランド品でないために廃棄されてしまうことがあります。その問題に取り組むため、就労支援事業所の方々と協力してリユースシステムを構築しています。買取・リユースを強化することで、お客様が遺品整理ではなく生前整理(元気なうちに片付ける)を選択することにつなげ、残された家族、未来の自分、未来の地球のために、負荷のない循環をつくるサービスを目指しています。
 遺品整理の代わりに生前整理を選ぶ人々を増やすことで、持続可能な社会づくりに貢献していきたいと考えています。
 また、洋服のアップサイクルを目的とした、地元デザイナーさんや学生さんとのコラボによるファッションショーも予定しています。さらに、ひきこもりや障がいのある方などのコミュニティづくりも目標に掲げています。自社だけでなく、地域の自治体や企業もみんなで協力できる環境づくりにも取り組んでいきたいです。


株式会社ココピア

 2012年に遺品整理専門会社として夫が創業しました。当初、高齢者の単身世帯増加や孤独死の問題が浮き彫りになり、遺品整理・生前整理の需要が増えていた時期でした。社会貢献の意識は創業当時からありましたが、真の情熱が芽生えたのは、ある若者の遺品整理の依頼でした。その若者は自宅の部屋で自ら命を絶ちました。遺品には彼の思いや葛藤が散りばめられていました。しかし、彼には身内もおらず、関心を寄せる人もおらず、私たちが最後に彼と対話する気持ちで片付けをしていきました。夫は片付け終わったからっぽの部屋から、「ありがとう」と天国からの声が聞こえたように感じたそうです。
 この経験がきっかけとなり、自殺者や孤独死の問題に遺品整理の立場から取り組むことを決意しました。そして今日までそういったご依頼を断ることなく続けてきたおかげで、同じ思いや使命感を共有するスタッフが集まり、今では社員一丸となって多くのご依頼を日々解決できるようになってきました。

株式会社ココピア 藤原真由美さん

 遺品整理の会社を夫と経営。 2020年「新婚さんいらっしゃい」に出演し、岡山県代表の異色のカップルとして注目を浴びた。 現場で目の当たりにする孤立死やゴミ屋敷などの社会問題について一人でも多くの人に知っていただくために「よりよく生きるには」をテーマに「誰もが人生を全うできる社会」を目標に活動中。SDGsファシリテーターとして社内導入と同時に企業講演、終活セミナー、SDGsセミナーなど積極的に行っている。FM福山でSDGs番組「ひも解くトーク」ラジオパーソナリティとしても活躍中。

藤原真由美さん画像

関連リンク

次の執筆者さんからのメッセージ!

岡山大学法学部3回生 澁谷香澄さん

人とのつながりを制限されたコロナ禍を経て、「孤独感」は誰にでもいつでも襲ってくるものであると私自身痛感させられました。遺品から読み取れる思いに目を向けて、様々なアプローチから「誰もが人生を全うできる社会」の実現に精力的に活動しておられる姿に勇気づけられました。