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八郞とこい

[2024年4月22日]

ID:59732

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八郎とこい

 みずうみの岸に、ふじの花が咲きました。三郎くんは、毎日たくさんのふなや、はやを釣ってきました。八郎くんも釣りに行きましたが、一ぴきも釣れません。それで三郎くんに聞きました。

「どうしてそんなに釣れるの。」

 三郎くんがいいました。

「ぼく釣る時、いつでも思うんだよ。ここにはいるぞ。ふなやはやがうんどうかいで、それはたくさん集ってる。そらきた。もうきた。そう思うとすぐうきが沈んでいく。」

 そこで八郎くんは、釣竿をもって出かけました。しかもお父さんのこいを釣る竿です。

「おかあさん、ぼくこいを釣ってきます。」

 そういって行きました。

 岸にやなぎがしげっていました。その上でかっこうがないていました。八郎くんが思いました。

「あの木の下にはこいのおうちがある。こいの子が三びきかっこうのこえをきいている。おかあさんがおいしいものを、取りに出かけてるのだ。そうだ、そこへぼくがえさをおろしてやる。そらおいしいものだと、こいの子たちが集ってくる。うまいぞ。うまいぞ。」

 八郎くんはにこにこして糸をたれました。と、もううきが沈みました。あれ、糸をひっぱります。竿がぐんぐんしなりました。あげてみたら十二センチもあるようなこいの子が、ぴんぴんはねておりました。

「ああうれしい。」

 八郎くんはまた糸をなげ入れました。またうきが沈みました。また糸をひきました。またぴんぴんはねるこいの子が釣れました。

「ああうれしい。」

 と、その時です。ばしゃっと音がしました。水をはねて大きなこいがとびあがったのです。そうです。こいのおかあさんが、かえって来たのです。子どもがいないとうろたえて、今きちがいのようにさがしているのです。

 どうしましょう。

 八郎くんはこいの子たちが、かわいそうになりました。こいのおかあさんにもすまなくなりました。だってこいのおやは、またばしゃんとはねとんだのです。八郎くんは、

「ではおかえり。おかあさんがさがしているよ。」

 そういって、こいの子を水の中へはなしてやりました。

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