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一つのパン

[2025年4月30日]

ID:71847

一つのパン

 遠足のかえりでした。かばんの中に、パンが一つのこっていました。

「このパン、どうしよう。」

 三ぺいと、みよ子がそうだんしました。

「にわとりにやりましょうよ。」

 みよ子がいいました。

 そこで、そばにあったとりごやの中をのそいて、三ぺいがいいました。

「こらっ、にわとり。」

 とりはびっくりして、

「こけっこ、こけっこ。」

 となきました。

「パンをやるのに、なぜさわぐ。」

 と、三ぺいはいいましたが、とりはやめません。三ぺいは腹を立てて、

「犬にやろう。」

といい出しました。

 かけて来た一ぴきの犬に、

「こらっ、犬。パンをやろうか。」

 パンをつき出して、三ぺいが呼びとめました。

 けれども犬は、

「ううううう。」

 とうなって、大へんおこっているようです。

「これは大へん。」

 と、二人は、どんどんにげ出しました。三ぺいはふしぎでなりません。

「とりも犬も、パンなんかきらいなのだろうかねえ。」

みよ子はいいました。

「いいえ。にいちゃんのやり方がわるいのですよ。」

 それで今度は、みよ子が、へいの方にいるねこにパンをつき出して、したを、

「ちっち。」

 とならしました。

「みけ。みけ。これアンパンよ。アンパン上げますよ。」

 それを見ると、ねこは、

「にゃあお。」

 とないてへいの上からおりて来ました。

「ね、にいちゃん。」

 ねこのあたまをなでながら、みよ子は、三ぺいに見せました。

 と、その時、さっきの犬が向こうからかけて来ました。みよ子は、すぐ、口ぶえをならしました。そして呼びました。

「こうい、こうい。パンをやるから、こうい、こうい。」

 犬は、しっぽをふりふり、かけよって来ました。そして、みよ子の手から、うれしそうにパンをたべました。