遠足のかえりでした。かばんの中に、パンが一つのこっていました。
「このパン、どうしよう。」
三ぺいと、みよ子がそうだんしました。
「にわとりにやりましょうよ。」
みよ子がいいました。
そこで、そばにあったとりごやの中をのそいて、三ぺいがいいました。
「こらっ、にわとり。」
とりはびっくりして、
「こけっこ、こけっこ。」
となきました。
「パンをやるのに、なぜさわぐ。」
と、三ぺいはいいましたが、とりはやめません。三ぺいは腹を立てて、
「犬にやろう。」
といい出しました。
かけて来た一ぴきの犬に、
「こらっ、犬。パンをやろうか。」
パンをつき出して、三ぺいが呼びとめました。
けれども犬は、
「ううううう。」
とうなって、大へんおこっているようです。
「これは大へん。」
と、二人は、どんどんにげ出しました。三ぺいはふしぎでなりません。
「とりも犬も、パンなんかきらいなのだろうかねえ。」
みよ子はいいました。
「いいえ。にいちゃんのやり方がわるいのですよ。」
それで今度は、みよ子が、へいの方にいるねこにパンをつき出して、したを、
「ちっち。」
とならしました。
「みけ。みけ。これアンパンよ。アンパン上げますよ。」
それを見ると、ねこは、
「にゃあお。」
とないてへいの上からおりて来ました。
「ね、にいちゃん。」
ねこのあたまをなでながら、みよ子は、三ぺいに見せました。
と、その時、さっきの犬が向こうからかけて来ました。みよ子は、すぐ、口ぶえをならしました。そして呼びました。
「こうい、こうい。パンをやるから、こうい、こうい。」
犬は、しっぽをふりふり、かけよって来ました。そして、みよ子の手から、うれしそうにパンをたべました。