ノートルダム清心女子大学 2年 寺尾穂乃果
私にとって、この物語はおじいさんと子供たちとのひと時の旅であった。この物語を読んで、私も祖父母や母、自分が幼かった頃の話を聞くことが大好きだったことを思い出した。最も印象に残ったのは、おじいさんが過ごした草が生い茂り自然にあふれた村そのものであった。草や川についての細かな描写が一瞬で私をその村へ連れて行ってくれたように思う。
物語の中の河童はおじいさんにとっての汽車と同じようであった。直接接触することはなく、恐ろしいものでありながらも、日常の一場面である釣り場にて出会う存在。河童がおじいさんにとって恐ろしいものであった汽車の通り道の鉄道を通ってやってきたことには何か意味があるように感じられた。
おじいさんと河童との出会いは、はざまに生まれたひとときのゆらぎであったように思う。自然が失われつつある中で姿を変えていっている妖怪は、こうして語り継がれることによって心の中に存在し続け、いつの日か目の前に姿を現わしてくれるのではないかと思わせてくれる物語だった。
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