坪田譲治は、明治23年3月3日 岡山県御野郡石井村島田(今の岡山市北区島田本町)で生まれ、田園が広がり豊かな自然に囲まれて、少年時代を過ごしました。
後に、日本における児童文学の第一人者として活躍し、岡山市の名誉市民にもなりました。坪田譲治の作品の特徴は、子供の世界と大人の世界を見事に交流させ、新しい独自の世界を創造していることです。童話じみているけれど、やはり大人の小説であり、大人の小説かと思うと、子供が読んでもおもしろい物語になっているのです。
そして、なによりも素晴らしいのは、通俗的な情緒趣味に流れるのでなく、坪田譲治特有の純粋な思いが一貫して流れているところです。読み終わった後、読者の心を高揚させる芸術性がみなぎっているといわれています。
(岡山市教育委員会発行 集団読書資料「坪田譲治」より)。
坪田譲治とその作品をもっと知っていただくために。
昭和10年3月、山本有三の紹介で、『改造』3月号に発表。予想外の好評で迎えられ、 苦節40年にして、やっと花開いた出世作です。
ふとした父親の手落ちで莫大な借金を抱え、差押をうけることになった家庭。不安におびえる子供、やりきれない気持ちで死ぬ ことを考えている父親の気持ちを描き出した小説です。
かわいい我が子と遊んでいる内に死ぬことができたらと、考える父親。冬の日、教室の外はどこまでも真っ白。目を教室に転じると先生も友達も真っ黒な獣のように見えだし、思わず「獣の学校だ」と、異様におびえる三平の姿が、読者に強烈な印象を与えます。
肉親と肉親との間に起こった大人の争いのなかで、善太、三平がどのように生きていったかを浮き彫りにしたのがこの作品です。
善太、三平は、暗く厳しい現実の中にあっても、その現実に打ち負かされず、大人をかえって勇気づけています。無垢で天真爛漫な子供のありのままの生き方が、大人の厳しい世界を跳ね返しています。
坪田文学の最高傑作と高く評価されている作品です。
書き出しでは「春」の野原で遊ぶ子供をとりあげながら甚七老人を登場させる。初めて見る馬上の老人が、実は三平の祖父であった。そして、「夏」。父の死によって一家の支えとなった善太の苦しみを水中の世界に託して、その思いを描く。やがて「秋」となり、 母と善太・三平兄弟は牧場を舞台にして生活に立ち向かう。その困った様子にじっとして いられなくなる祖母の姿も加えて、苦しい中にも一家が一致協力して乗り越えていく。
どんな難問にぶつかっても恐れを知らない子供の明るさと行動が、大人の世界を逆に勇気づけている心温まる物語です。
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