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<感想・エッセイ>「兄は樹上にあり」を読んで

[2021年11月2日]

ID:33233

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「兄は樹上にあり」を読んで

 ノートルダム清心女子大学 2 年 U.M

 今回坪田譲治の小説『兄は樹上にあり』を読み、この作品には坪田譲治の兄に対する感情が投影されているように感じた。この話の主人公「修介」は文学を志している。彼の兄は父が亡くなった後に家業を継いでいるが、その会社で出資者との争いが起こり、「修介」はその仕事を手伝うことになる。以上がこの話の大まかなあらすじであるが、これは坪田譲治の実体験であり、このことから彼が「修介」に自分を重ねていたことが窺える。またこの小説のタイトル『兄は樹上にあり』は、冒頭の「修介」の兄が彼を置いて樹上に登り、「修介」には見えない遠くを見つめているというシーンから取られており、兄は「修介」には目もくれない。よってこの小説は「兄に置いて行かれた弟の話」であると考えられる。そして物語終盤で「修介」は病床に伏しながらこの時のことを思い返しているが、その場面では彼の孤独が表現されており、かなり悲壮感が漂っている。坪田譲治は兄が自殺して家業を継いだ時が人生で最もつらかったのだと大学の講義にて学んだが、前述したように坪田譲治が「修介」という人物に自己投影していたのだとすれば、彼は自殺した兄に対して「置いて行かれた」という気持ちを抱いていたのではないかと想像することができる。坪田譲治が兄と同じ「樹上」の目線に立ちたかったのだと考えると何とも物悲しい作品であると思う。

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