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牛の友だち

[2021年5月7日]

ID:22588

牛の友だち

 春の朝です。一ぴきの牛が、まきばの草の中で、あたまを高く上げて、
「もう。」
 とないていました。すると、一羽のにわとりがやって来ました。
「牛さん、私と友だちになりましょう。」
 にわとりがいいました。
「友だちなら、おたがいに助けあわなければならないよ。」
「そうです。助けあいましょう。」
 にわとりは、いったのです。けれども、牛は、つののあるあたまをかたむけてかんがえました。そして、
「助けあうって、君から助けられることが、何かあるかね。」
 そんなことをいいました。
「ありますとも。」
 にわとりがいいました。それで、二人は友だちになりました。
 すると、少しして、向こうの草の中から、にわとりが大声で呼びました。
「牛さん、牛さん。早く来て下さい。」
「よし、来たっ。」
 牛がかけつけました。
「ねこがいるのです。私を取ってたべようとするのです。」
 これを聞くと、牛は四つの足をふんばりました。つののあたまを下げました。つのでつくよういをしたのです。それから、大きな声でなきました。
「もう、もう。」
 ねこはびっくりして、にげて行きました。
「どんなもんだい。」
 牛がいいました。にわとりは大へん喜んで、おれいを何べんもいいました。けれども、少しすると、またにわとりが呼びました。
「牛さん、牛さん、早く早くおねがいです。」
 牛がとんで行くと、今度は犬がおりました。牛は、また、つのを下げました。
「もう、もう。」
 となきました。
 犬は、すぐにげて行きました。
「どんなもんだい。」
 牛はいいました。けれども、牛はかんがえました。
「友だちというものは、つらいものだ。ほねが折れる。」
 と、その時でした。牛のつののねもとの所を、ちくりとさしたものがありました。
「痛いよっ。」
 牛はおこって、つのをふり立て、あばれまわりました。
すると、にわとりがやって来ました。
「牛さん、牛さん。お待ちなさい。」
 そして、牛のあたまを下げさせて、止っているあぶを、口ばしでひょいと取ってしまいました。
 それで、牛がいいました。
「ありがとう。やっぱり友だちはいいものだ。」

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