春の朝です。一ぴきの牛が、まきばの草の中で、あたまを高く上げて、
「もう。」
とないていました。すると、一羽のにわとりがやって来ました。
「牛さん、私と友だちになりましょう。」
にわとりがいいました。
「友だちなら、おたがいに助けあわなければならないよ。」
「そうです。助けあいましょう。」
にわとりは、いったのです。けれども、牛は、つののあるあたまをかたむけてかんがえました。そして、
「助けあうって、君から助けられることが、何かあるかね。」
そんなことをいいました。
「ありますとも。」
にわとりがいいました。それで、二人は友だちになりました。
すると、少しして、向こうの草の中から、にわとりが大声で呼びました。
「牛さん、牛さん。早く来て下さい。」
「よし、来たっ。」
牛がかけつけました。
「ねこがいるのです。私を取ってたべようとするのです。」
これを聞くと、牛は四つの足をふんばりました。つののあたまを下げました。つのでつくよういをしたのです。それから、大きな声でなきました。
「もう、もう。」
ねこはびっくりして、にげて行きました。
「どんなもんだい。」
牛がいいました。にわとりは大へん喜んで、おれいを何べんもいいました。けれども、少しすると、またにわとりが呼びました。
「牛さん、牛さん、早く早くおねがいです。」
牛がとんで行くと、今度は犬がおりました。牛は、また、つのを下げました。
「もう、もう。」
となきました。
犬は、すぐにげて行きました。
「どんなもんだい。」
牛はいいました。けれども、牛はかんがえました。
「友だちというものは、つらいものだ。ほねが折れる。」
と、その時でした。牛のつののねもとの所を、ちくりとさしたものがありました。
「痛いよっ。」
牛はおこって、つのをふり立て、あばれまわりました。
すると、にわとりがやって来ました。
「牛さん、牛さん。お待ちなさい。」
そして、牛のあたまを下げさせて、止っているあぶを、口ばしでひょいと取ってしまいました。
それで、牛がいいました。
「ありがとう。やっぱり友だちはいいものだ。」
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