「コマ」を読んで
ノートルダム清心女子大学 3年 T.C.
作中、正太の心が大変子供らしいことが強調されている箇所がいくつか見られる。両親に愛され、たくさん遊んで育まれた幼い心である。明日が来ることを疑いもしない、未来への希望にあふれていた小さな生命を、丁寧に麻緒が巻かれたコマから両親は感じ取っただろう。大きな苦悩もなく、純粋無垢でいられた幼い時期は、私たちにとっても人生でもっとも幸福な時間であったのではないだろうか。そしてそのような美しい心を持ったまま、正太は死によって時を止めた。そんな正太の心の象徴とも言えるコマは、彼の弟に受け継がれていく。