よっちゃんはちいさなりんごの木をもらいました。うれしくてたまりません。
それで、その木のそばの、ものほしぐいにつかまってくるくるまわりをいたしました。くるっとまわっては、ばぁー。くるっとまわっては、ばぁー。りんごの木におじぎをしました。すると、どうでしょう。ふしぎなことに、そのたび、そのたび、りんごの木がすっすっとおおきくなっていきました。三十センチもなかったものが、五十センチにも、一メートルにもなっていきました。
「ああ、うれしい。ああ、おもしろい。」
よっちゃんは、なんども、なんども、くるっとまわって、ばぁ、くるっとまわって、ばぁを、くりかえしました。おしまいには、くるくるくるくる、なん十ぺんもまわって、ばぁああとやりました。すこしずつやっていたのでは、おもしろくありません。だってはやく、大きな大きな、りんごの木になって、たくさん、たくさん、あかいみがなってくれないとこまりますもの。でなければ、りんごがたべられないではありませんか。そうです。ほんとにそうですね。で、どうだったでしょう。なん十ぺんもまわってみたら――。
りんごの木は三メートルもたかくのびて、上にしろい花がさきました。もう一いきです。くる、くる、くる、くる、くる、でも、よっちゃんはもう目がまわってきました。あたまがいたくなってきました。どうにも、しんぼうできません。とうとう、ものほしのくいのしたにしりもちをつき、くいにつかまって、うつむいてしまいました。
だけども、そのとき、まわりのつちの上をあかいりんごがなん十、なんびゃく、ころころころころ、ころがってるようにおもえました。それでしばらく目をつぶってめまいがすむのをまちました。
めまいがすんだら、あかい、りんごをたべましょう。そうおもってまちました。
しかし、りんごはほんとにそこにあったでしょうか。それとも、ただ、そうおもえたばかりでしょうか。おもえたばかりだったら、つまりません。
どうかほんとにありますように、よっちゃんはいっしょうけんめい、そうおもいました。
ほんとにあってくれればいいですね。どうかあってくれますように――。
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