ページの先頭です

共通メニューなどをスキップして本文へ

岡山市文学賞坪田譲治文学賞・市民の童話賞ホーム

スマートフォン表示用の情報をスキップ

子ねこのかくれんぼ

[2020年6月18日]

ID:22613

ソーシャルサイトへのリンクは別ウィンドウで開きます

子ねこのかくれんぼ

 「もういいかい。」
 「まあだだよ。」
 ねこのおかあさんは、こたつの上にねていて、そんな声を聞きました。
 どこでしょう。
 たれでしょう。
 となりのおうちで、子ねこがあそんでいるのでしょうか。それにしては、何だか近いような気がしました。
 家の中のように思われました。
 いいえ、二三日前からいなくなった子ねこのような気がしたのです。
 でも、その子ねこのみけは、あんまりふざけていて、みぞへ落ちて死にました。そして、お庭の八つ手の木の下にうめられました。
 だからそんなはずはありません。それはまったく気のせいです。もう、そんなことを気にしないで、もっといねむりいたしましょう。
 でも、あれ。
 「もういいかい。」
 「まあだだよ。」
 はっきり聞えて来ました。
 「だあれ。」
 親ねこは、あたまを上げ、耳を立て、声のする方へ向いて、そういうようになきました。たれのへんじもありません。やっぱりやっぱり気のせいでした。
 みけがどこかであそんでいるように思われたり、みんなおなじ気のせいでした。でも、親ねこは、ついいって見たくなりました。
 「みけや、おかあさんをからかってはいけないよ。おかあさんはほんとうにしますからね。」
 声は、それきりやみました。親ねこは、こたつの上で目をつぶりました。
 何十分たったでしょうか。それとも、何時間たったでしょうか。親ねこは、やはり子ねこの声を待っていました。
 でも、もう、声がしなくなったのですもの。どうすることも出来ません。やっぱり声のしないのもさびしいものです。それで、親ねこは小さい声で、いってみました。
 「みけさん、どうしたの。かくれんぼはやめたのですか。」
 といってみました。
 「かわいそうなことをしました。せっかく家のどこかに来て、一人であそんでいたものを。ついしかったばかりにみけはどこかへ行ってしまった。」
 親ねこは、そんなことを思いました。それで、また、小さい声でないてみました。
 「もういいかい。」
 と、すぐにみけねこの子ねこらしい、かわいい声が聞えて来ました。
 「まあだだよ。」
 それで、親ねこは、聞いてみました。
 「みけちゃん、まだいるの。」
 けれども、これにはへんじがありません。それでまた、
 「もういいかい。」
 とないてみますと、
 「まあだだよ。」
 遠くで小さいへんじです。
 親ねこは立ちあがりました。どこにいるのでしょう。
 となりのおへやでしょうか。
 茶の間のおしいれでしょうか。
 おざしきのつくえの下でしょうか。
 「もういいかい。」
 そうないては、耳をすましました。その度に、声が聞えました。
 「まあだだよ。」
 「まあだだよ。」
 どことも、けんとうがつきません。おしいれの中のようでもあるし、ふろばの方のようでもあるし。
 ねこのおかあさんは、おしいれの前でも呼びました。
 ふろばの戸口でもなきました。
 おざしきのまん中でも呼びました。
 家の外に出て、まわりを一まわりしながらもなきました。
 「もういいかい。」
 「もういいかい。」

お問い合わせ

市民生活局スポーツ文化部文化振興課

所在地: 〒700-8544 岡山市北区大供一丁目1番1号 [所在地の地図]

電話: 086-803-1054 ファクス: 086-803-1763

お問い合わせフォーム