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いしとカエル

[2020年6月18日]

ID:22605

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いしとカエル

 みちのまんなかにひとつの石が、あたまをちょっとのぞけてうまっていました。はるのことです。あるひそのそばで、二ねんせいのぜんたがともだちにいっていました。
 「 ぼく、この石につまずいて、もう三どころんだ。」
 するとともだちもいいました。
 「 ぼくは二どだ。だけど一どなんか、ふくをどろだらけにして、とてもくやしかったよ。」
 それでふたりはそうだんして、その石をほってとりのけることにしました。ふたりはおおいそぎでいえにかえって、くわをかついでやってきました。
 「 よいしょ、どっこい。」
 「 それほれ、やれほれ。」
 かわるがわる、つちをほりました。
 石のあたまは小さいこぶしくらいでも、つちのなかにはその三ばいからうまっていました。
 「 大きな石だなあ。」
 ぜんたはかんしんしながら、それをかかえて、そばのやぶの中に、
 「 こんちきしょう。」となげこみました。
 するとどうでしょう。そのときやぶのくさのなかで、きゅっというようなこえがしました。
 「 あれ、いまきゅうっていったぞ。」
 ともだちがいいました。
 「 ヘビでも、石につぶされたのではないだろうか。」
 ぜんたがいいました。ふたりはやぶにはいって、くさをわけてのぞいてみました。かわいそうにそこには、一ぴきのカエルが、石の下でしんでいました。
 「 どうしよう。もういきかえらないだろうか。」
 ぜんたがいいました。
 「 なにだいじょうぶだ。」
 ともだちはそういって、ゆびさきでカエルのあしをつまみあげて、そばの水のなかになげこみました。
 「 水をのむとカエルはいきかえるんだよ。」
 ともだちはいいました。
 ところで、そのとしのあきのおわりでありました。ぜんたはフナをつるえさにしようと、ミミズをさがしにそのやぶの中にはいっていきました。くさをわけると、おちばにうもれて、ひとつの石がありました。その石をおこすと、おやおやそこにカエルが一ぴき、さむそうにすくみこんでおりました。
 「 あ、あのカエルだ。」
 ぜんたははるのことをおもいだし、石をそっとその上にのせかけてやりました。
 さむくないように、おちばもあつめてもりあげてやりました。
 そのつぎにまたはるがきて、いろいろのはなのさくころ、ぜんたが、そのやぶのそばをとおると、ころころとカエルのなきごえがきこえました。
 はいっていってみますと、おやおやカエルはその石をおいえにして、うれしそうに目を、ぱちくりぱちくりやっていました。

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