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答申第18号

[2010年3月4日]

ID:17133

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岡情審査第23号
平成14年11月29日

岡山市長 萩原 誠司 様

岡山市情報公開及び個人情報保護審査会
会長 山口 和秀

岡山市情報公開条例第16条の規定に基づく諮問について(答申)

平成14年3月6日付け岡市民第300号による下記の諮問について次のとおり答申します。

戸籍謄本・住民票の写し等の職務上請求書(以下「職務上請求書」という。)の開示請求に対して非開示とした決定に対する異議申立て(以下「本件異議申立て」という。)についての諮問
第1.審査会の結論
本件異議申立てに係る開示請求に対して、岡山市長(以下「実施機関」という。)が行った非開示決定は妥当であるから、本件異議申立ては棄却されるべきである。ただし、非開示理由は、岡山市情報公開条例(平成12年市条例第33号。以下「条例」という。)第8条に基づく、いわゆる存否応答拒否とすべきであるから、本件異議申立てを棄却する決定の理由中において、非開示理由を訂正すべきである。

第2.異議申立て及び諮問の経緯
1 本件異議申立人(以下「申立人」という。)は、平成14年1月21日、実施機関に対し、条例第3条第1項の規定に基づいて、「平成××年××月××日に司法書士○○○○氏が市内□□□□在住の△△△△氏の戸籍謄本を職務上請求した際に実施機関に提出した職務上請求書」(以下「本件開示請求文書」という。)と特定して公文書の開示請求を行った。
2 それに対して、実施機関は、平成14年1月29日付けで、戸籍謄抄本交付請求書(戸籍法(昭和22年法律第224号)第10条第1項に基づき戸籍謄抄本等の交付を請求する文書をいい、職務上請求書を含む。以下において同じ。)記載の情報は、一般に、条例第5条第1号に定める非開示情報である個人に関する情報(以下「個人情報」という。)及び条例第5条第5号に定める非開示情報である法令及び他の条例の定めるところにより開示することができないとされている情報(以下「法令秘情報」という。)に該当するものであることを理由に、本件開示請求文書について非開示とする決定を行った。
3 上記非開示決定を受けた申立人から、実施機関に対して、平成14年2月13日付けで、非開示決定の取消しを求めることを内容とする本件異議申立てが行われたため、実施機関は、同年3月6日、本件異議申立ての取扱いについて、条例第16条に基づき、当審査会に本件諮問を行った。

第3.実施機関及び申立人の主張要旨
1 実施機関側主張要旨
(1)戸籍謄抄本交付請求書の記載事項には、請求対象者の本籍地、筆頭者の氏名、抄本の場合はその抄本に記載が必要な者の氏名等が含まれており、これらはすべて個人を特定する個人識別情報であるから個人情報に該当する。
また、請求年月日、請求者、請求対象者を特定した戸籍謄抄本交付請求書の開示請求に応答することは、開示請求対象文書の存在を認め、請求対象者のプライバシーを侵害するおそれがある。
(2)戸籍事務は、国民の親族的身分関係事項の登録、公証を主たる目的として全国統一の処理基準の下でなされるべきものであるが、戸籍謄抄本交付請求書は、従来から戸籍法第48条第2項の戸籍関係文書(届書その他市町村長の受理した書類をいう。)には該当しないものと解され、かつ、戸籍法等にその公開に関する規定が存在しないのは、それが公開の対象となる書類ではなく、公開が予定されていないからであると考えられており、そのように運用されてきた。戸籍法等のこうした解釈・運用に照らせば、戸籍謄抄本交付請求書は法令秘情報に該当するものである。
(3)戸籍法第117条の6は、同法第48条第2項本文に規定する書類、すなわち、上述の戸籍関係文書につき行政機関の保有する情報の公開に関する法律(平成11年法律第42号。以下「情報公開法」という。)の適用除外としており、その反対解釈によれば、戸籍謄抄本交付請求書については、情報公開法の適用除外とはされておらず、したがって同法の適用対象となると考えられる。しかし、そのことから戸籍謄抄本交付請求書が直ちに開示されるべきものではなく、開示の是非は条例の関係諸条項に則り個別に判断されるべきものであって、本件開示請求文書は、前2号で既述したように、個人情報及び法令秘情報に該当し、非開示とすることが妥当である。
2 申立人側主張要旨
(1)戸籍法には、戸籍謄抄本交付請求書の開示を禁じている条文は見当たらず、逆に、同法第48条第2項本文に規定する書類については情報公開法を適用しないとする戸籍法第117条の6からすれば、戸籍謄抄本交付請求書には情報公開法が適用されると解される。したがって、本件開示請求文書は、法令秘情報には該当せず、開示されるべきである。
(2)本件開示請求文書における司法書士業務に関する情報は、個人情報ではなく、条例第5条第2号の「事業を営む個人の当該事業に関する情報」に該当し、かつ、同号ただし書の「人の生命、健康、生活又は財産を保護するため、開示することが必要であると認められる情報」に該当するものであるから、開示されるべきである。

第4.審査会の判断
申立人と実施機関との間における本件の争点をめぐる諸問題に関し、当審査会は、以下のとおり判断する。
1 本件開示請求文書について
本件開示請求文書は、「平成××年××月××日に司法書士○○○○氏が市内□□□□在住の△△△△氏の戸籍謄本の職務上請求を行った際に実施機関に提出した」とされる職務上請求書である。職務上請求書とは、戸籍法第10条第2項及び戸籍法施行規則(昭和22年司法省令第94号)第11条第3号に基づき司法書士等の一定の職業の者について認められる、職務上の戸籍謄抄本等の交付請求を行う場合に提出する文書である。その記載事項について具体的に定めた法令はないが、通常は、次に掲げる事項について記載することとされている。
(1)請求年月日
(2)請求の種別(戸籍謄抄本、住民票の写し等の別)
(3)請求対象者の本籍・住所
(4)請求対象者の戸籍等の筆頭者・世帯主の氏名
(5)請求対象者の氏名
(6)使用目的・提出先
(7)請求者の事務所所在地・資格・氏名・電話番号等
2 職務上請求書の非開示情報該当性について
本件開示請求文書の非開示決定の妥当性について判断する前に、職務上請求書の記載事項について、それらが非開示情報に該当するか否かを検討する。
(1)個人情報該当性について
申立人は、司法書士の司法書士業務に関する情報は、条例第5条第2号の「事業を営む個人の当該事業に関する情報」であり、かつ、同号ただし書に該当するから開示されるべきであるとして、本件開示請求文書の個人情報該当性を否定する。確かに、職務上請求書は、司法書士等が職務上行う請求であるから個人情報というよりもむしろ、「事業を営む個人の当該事業に関する情報」としての性格を有するものである。しかし、職務上請求書の記載事項のうち、上記(3)請求対象者の本籍・住所、(4)請求対象者の戸籍等の筆頭者・世帯主の氏名、(5)請求対象者の氏名等については、請求対象者の「個人に関する情報」であり、かつ、「特定の個人を識別することができる」情報である。それらの情報は、司法書士等が職務上請求書に記載した情報に過ぎず、必ずしも戸籍記載の情報と一致しないことも考えられるが、実務ではそれが一致していない場合には、交付不能を理由に司法書士等に補正を依頼しているため、実施機関が保有している職務上請求書に記載されている情報は、現実には戸籍記載の情報と一致することとなる。したがって、本件開示請求文書に請求対象者を識別できる個人情報が含まれていることは否定できず、条例第5条第2号ただし書により開示されるべき情報に該当することのみを主張し、個人情報該当性を否定する申立人の主張は(同ただし書に該当するか否かの判断に踏み込むまでもなく)支持し得ないものである。
(2)法令秘情報該当性について
実施機関は、戸籍謄抄本交付請求書が法令秘情報に該当すると主張しているが、その根拠とするところは以下のとおりである。まず第1に、戸籍謄抄本交付請求書は、従来、戸籍法第48条第2項に規定する書類等には該当しないため、法令上これを公開する規定がなく、公開する必要もないものとして、統一的に解釈・運用されてきたということである(平成14年6月17日実施機関口頭意見陳述)。第2に、もし公開された場合、正当事由をもって他人の戸籍謄抄本を請求しようとする者が、請求対象者等にその事実を知られて不当な干渉や圧力を受け、あるいはその危険性から、結局、請求を断念し、知りたい情報を入手できず、社会及び経済生活を営むうえで不利益を蒙るなどのおそれがあるということである(平成14年6月21日付け実施機関補充意見書)。しかし、戸籍謄抄本交付請求書の取扱いにつき、戸籍法が過去においてそのように解釈・運用されてきたという事実は認められるとしても、そのことが、直ちに法令秘情報該当性の正当な根拠となりうるわけではない。情報公開法の制定とその施行に伴って改正された戸籍法第117条の6の規定によれば、「第48条第2項本文に規定する書類については、情報公開法の規定は適用しない」こととされ、申立人が主張し、実施機関も認めているとおり、戸籍謄抄本交付請求書は「情報公開法の適用除外とはならず、当然、情報公開法及び条例の適用の対象となるもの」(上記補充意見書)と解されるからである。
また一方で、実施機関は、このような戸籍法第117条の6の反対解釈を前提にして戸籍謄抄本交付請求書が条例の適用対象であることを肯定しながらも、先に挙げた二つの根拠に加えて、「戸籍謄抄本交付請求書が戸籍法第48条第2項に規定する書類には該当せず、利害関係人からの請求であっても閲覧に応じるべきではない。」(昭和63年10月3日付け法務省民二第5341号通達)の存在を挙げることによって、「明文の規定はないものの」、「戸籍法の趣旨及びその目的」から、戸籍謄抄本交付請求書が法令秘情報に該当するとの結論を引き出している(上記補充意見書)。
しかし、条例第5条第5号にいう「法令」が「法律及び政令、省令など国の機関が定めた命令」を意味し、「国からの通知、通達、訓令等は法令の範囲には含まれない」(岡山市情報公開及び個人情報保護制度運用の手引き〔平成13年3月改訂〕(以下「手引き」という。)から引用)ことをも前提にして検討すれば、実施機関の主張は支持しがたいものである。なぜならば、戸籍謄抄本交付請求書が、戸籍法の「明文の規定を持って閲覧等が禁止されているもの」でないことはいうまでもなく、また、情報公開法制定以前の過去の戸籍法の解釈・運用実態と通達の存在のみで、「法令(戸籍法)の趣旨及び目的に照らし開示することができないとされているもの」に該当すると断定することも困難であることから、手引きにおいて法令秘情報として例示しているいずれかの場合に該当するとは考えられないからである。
さらに、上記の第2の根拠中で述べられた「おそれ」なるものについても、仮にそのような「おそれ」が想定されるとしても、それは戸籍謄抄本交付請求書における個人情報や法人情報該当部分のみを非開示とする「一部開示」(条例第6条)等によって十分に対処し得るものであり、実施機関の危惧する事態を回避することは可能と考えられる。
したがって、戸籍謄抄本交付請求書が法令秘情報に該当するとの実施機関の主張も支持し得ないものであり、すなわち戸籍謄抄本交付請求書に含まれる職務上請求書についてもまた同様である。
3 本件開示請求文書に係る非開示決定の妥当性について
前項において検討した結果、一般論としては、職務上請求書の記載事項のうち、個人情報に該当する部分(例えば、上記(3)請求対象者の本籍・住所、(4)請求対象者の戸籍等の筆頭者・世帯主の氏名、(5)請求対象者の氏名)などを非開示とする一部開示が妥当と考えられる。しかし、本件開示請求文書は、「平成××年××月××日に司法書士○○○○氏が市内□□□□在住の△△△△氏の戸籍謄本の職務上請求を行った際に実施機関に提出した職務上請求書」と特定して開示請求されたものであるから、仮に請求対象者に係る個人情報該当部分を非開示として回答したとしても、その部分が請求対象者の氏名である△△△△、住所である□□□□であることは明白であり、請求対象者の個人情報が明らかとなる。
しかも、本件開示請求文書は、請求対象者の住所・氏名等が特定されているため、全部非開示か一部開示かを問わず、それが存在することを認めるだけで請求対象者の住所・氏名はもとより、請求対象者の戸籍謄抄本が何者か(本件の場合は司法書士)によって交付請求がなされているという事実を含む個人情報が開示される結果になる。
こうした事態を避けるために、条例第8条は「開示請求に対し、当該開示請求に係る公文書が存在しているか否かを答えるだけで、非開示情報を開示することとなるときは、実施機関は、当該公文書の存否を明らかにしないで、当該開示請求を拒否することができる。」と規定している。したがって、実施機関は、本件開示請求に対し、条例第8条に基づき、開示請求文書の存否自体を明らかにすることなく、非開示決定を行うことが妥当と考えられる。
4 結論
以上の理由により、当審査会は、「第1.審査会の結論」のとおり判断するものである。
第5.審査会の処理経過
当審査会における処理経過は、次のとおりである。

審査会の処理経過
年月日 処理内容
平成14年3月6日 諮問書の収受
平成14年3月20日 実施機関意見書の収受
平成14年4月8日 申立人意見書の収受
平成14年4月30日 審議
平成14年5月13日 審議
平成14年6月17日 実施機関側口頭意見陳述及び審議
平成14年6月21日 実施機関補充意見書の収受
平成14年7月8日 審議
平成14年9月5日 審議
平成14年10月22日 審議
平成14年11月29日 答申

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