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答申第10号

[2010年3月4日]

ID:17125

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岡情審査第18号
平成11年9月20日

岡山市教育委員会
委員長 片岡 和男 様

岡山市情報公開及び個人情報保護審査会
会長 山口 和秀

岡山市情報公開及び個人情報保護に関する条例第25条の規定に基づく諮問について(答申)

平成11年1月5日付け岡市教委同第211号による下記の諮問について次のとおり答申いたします。


岡山市教育委員会が実施している同和地区児童・生徒の基礎調査に利用する調査用紙(平成10年度)の開示請求に対して,全部非開示とした決定に対する異議申立て(以下「本件異議申立て」という。)についての諮問

第1 審査会の結論
平成10年度同和地区児童・生徒の基礎調査用紙は,全て開示すべきである。
第2 異議申立ての趣旨
本件異議申立ての趣旨は,平成10年11月25日付けで行った岡山市情報公開及び個人情報保護に関する条例(昭和62年市条例第43号。以下「本件条例」という。)第6条に基づく本件公文書の開示請求に対し,岡山市教育委員会(以下「実施機関」という。)が,本件公文書記載の情報は,本件条例第7条第3号,第4号及び第5号に定める非開示情報に該当するとして,平成10年11月27日付けでなした全部非開示決定処分(以下「本件処分」という。)の取消しを求めるものである。
第3 争点並びに争点に対する実施機関及び異議申立人の主張
争点並びに各争点に対する実施機関及び異議申立人の主張は,概ね次のとおりである。
1 本件公文書の本件条例第7条第3号該当性について(争点1)
(1)実施機関の主張
本件公文書記載の情報は,次のとおり,本件条例策7条第3号に定める非開示情報としての意思形成過程情報に該当する。
ア 本件調査項目が限られたものであるため,本件公文書を開示すれば,調査用紙記載の調査項目のみによって,状況把握をしているとの誤解を招き,その結果,今後の調査も困難となり,当該調査をもとにした同和教育推進のための意思形成に支障を生ずる。
イ 本件調査の結果は,公にしないことを前提に,各小学校,中学校及び高等学校に対して調査報告を求めるものであるから,本件公文書を開示すると,各小学校,中学校及び高等学校からの協力が得られなくなる等して今後の同種の調査が困難となり,意思形成のみならず,事務事業(同和教育施策)の公正又は円滑な執行に支障を生ずるおそれがある。
(2)異議申立人の主張
本件公文書記載の情報は,次のとおり,本件条例第7条第3号に定める意思形成過程情報に該当しない。
ア 本件公文書記載の情報は,すでに決定された調査項目についての情報にすぎない。
イ したがって,本件公文書記載の調査項目は,意思形成過程の情報とはいえない。
2 本件公文書の本件条例第7条第4号該当性について(争点2)
(1)実施機関の主張
本件情報を開示すれば,本件調査が困難となり,その結果,調査結果に基づく同和教育施策等の事務事業の公正又は円滑な執行に支障を生ずるおそれがある。
(2)異議申立人の主張
本件情報は,それを開示したからといって,調査が困難になるわけではなく,したがって,事務事業の執行に支障が生ずるものではないから,本件条例第7条第4号に定める非開示情報としての事務事業執行情報には該当しない。
3 本件公文書の本件条例第7条第5号該当性について(争点3)
(1)実施機関の主張
本件公文書記載の情報は,次のとおり,本件条例第7条第5号に定める非開示情報としての国等協力関係情報に該当する。
ア 本件公文書は,岡山県教育委員会から開示しないようにとの明示の指示を受けている。
イ したがって,本件情報を開示すれば,岡山県教育委員会と実施機関との信頼関係を損なうことになる。
(2)異議申立人の主張
岡山県教育委員会から本件公文書を非開示すべきであるとの指示があったとしても,その指示そのものが不当であり,単に指示があったことのみをもって,本件条例第7条第5号に定める非開示事由に該当するとはいえない。
第4 審査会の認定した事実
当審査会において認定した事実は次のとおりである。
(1)実施機関は,本件公文書を取得し,及び管理していること。
(2)本件公文書は,平成10年度の同和地区児童・生徒の基礎調査の用紙及び高等学校等における同和地区生徒の基礎調査用紙であり,前者については,学年別児童生徒数,長欠児童・生徒数,平成9年度卒業者の進路状況等の調査項目が記載されており,後者については,学年別生徒数,平成9年度卒業者の進路状況,中途退学者の状況,長期欠席生徒の状況等の調査項目が記載されていること。
(3)異議申立人は,平成10年11月5日付け公文書開示請求書で,実施機関に対し,本件条例第6条に基づき,本件公文書の開示を請求したこと。
(4)実施機関は,前記開示請求に対し,本件公文書記載の情報が本件条例第7条第4号及び第5号に該当するとして,平成10年11月27日付けで本件処分を行ったこと。
(5)実施機関は.当該審査会に対し,平成11年3月8日付け弁明書において本件公文書の非開示事由として本件条例第7条第3号を追加的に主張したこと。
(6)実施機関が,岡山県教育委員会(以下「県教委」という。)に対し,本件以外の同和地区児童・生徒の基礎調査に係る公文書開示事件に関し,開示非開示の意向を照会したところ,県教委は,(1)本件調査を,今後の行政施策に反映させるために行っていること,(2)同和問題に対する調査は,重大な人権侵害を起こす危険があり,取扱いには,特に慎重な配慮が必要であること,(3)調査内容は,直接には個人情報とはならないが,活用方法によっては,個人の識別が可能となるおそれがあること,を理由として当該調査関係文書を「すべて非開示とすることが適当である」旨の回答を文書で行ったこと。
第5 審査会の判断
本件公文書記載の情報が,本件条例第7条第3号,第4号及び第5号に定める非開示情報に該当するかどうか次のとおり,審査し,及び判断する。
1 争点1について
(1)本件条例第7条第3号は開示しないことができる文書として「市の事務事業に関し,市内部又は国若しくは他の地方公共団体との間における審議,検討,調査研究等の意思形成過程において,実施機関が作成し,又は取得した情報であって,開示することにより.当該事務事業又は将来の同種の事務事業に係る公正かつ適切な意思形成に支障を生ずると認められるもの」(以下「意思形成過程情報」という。)に該当する情報が記載されている公文書を掲げている。
(2)意思形成過程情報であることを本件条例の非開示事由とした趣旨は,意思形成過程に関する情報の中には,当該情報が開示されることにより,(1)未成熟,不正確な情報であるため,市民に不正確な理解を与えたり,誤解による混乱を招く,(2)行政内部における自由な意見交換が阻害される,(3)一部の利用者に不当な利益又は不利益を与える,(4)外部からの信頼,協力関係等に基づく任意の資料提供等が得られなくなる等「当該事務事業又は将来の同種の事務事業に係る公正かつ適切な意思形成に支障を生ずる」情報が含まれる場合があり,そうした場合には,当該意思形成過程情報を開示する利益より,当該情報を非開示とすることで保護されるべき利益のほうが優先するとして,非開示事由としたものと解される。
(3)したがって,意思形成過程において作成取得した情報の全てが非開示となるものではなく,これらのうち非開示となるのは,「公正かつ適切な意思形成に支障を生ずる」情報に限定されるのであるから,いたずらに非開示の範囲を広げることがないように留意した運用が実施機関に望まれるものであり,「公正かつ適切な意思形成に支障を生ずる」事由の存在は,実施機関において個別具体的に主張立証すべきものである。
(4)以上の観点から本件公文書記載の情報が,本件条例第7条第3号にいう意思形成過程情報に該当するか否かを検討する。
ア 本件公文書を開示することが,市民に誤解を与え,調査が困難になるとの主張について
(ア)実施機関の主張は,本件公文書たる調査用紙を開示することによって,調査項目が明らかになると当該調査項目のみの情報に基づいて同和教育施策を行っているとの誤解や混乱を招きやすく,ひいては調査が困難になるということであるが,本件公文書たる調査用紙は,なんら調査結果たる数値が記載されてないものであり,これを開示しても,当該調査を実施する(又は実施した)という事実及び調査項目が明らかになるだけであって,それ以上に重要な何かが明らかになるわけではない。
(イ)そして,本件調査実施の事実については,すでに,岡山市議会における質問等で公になっており,秘匿すべき事実とは考えられない。次に調査項目については,それが明らかになれば,当該調査項目の妥当性,適切性等についての疑問や批判が出される可能性は否定しがたいとしても,懸念される誤解や混乱は,非開示とすることによってよりも,むしろ開示した上で,市民の疑問や批判に対する実施機関の側からのより詳細な補足説明により回避すべきものであり,かつ,回避できるものである。したがって,本件公文書の開示により,調査が困難になるとの主張も,上記誤解や混乱の不可避性を前提としたものであって,前提そのものに問題がある主張と言わなければならない。
イ 本件公文書を開示すると各学校の協力が得られなくなるとする主張について
(ア)実施機関は,本件調査が一切の公文書を非開示とすること(部外秘)を前提に実施機関の所轄下にある各小学校,中学校及び高等学校に対して調査依頼しているのであるから,本件公文書を開示すれば,各学校の協力が得られなくなり,今後同種の調査を行う上で,支障が生ずる旨主張する。
(イ)確かに,本件調査と同種の調査につき,実施機関が部外秘を前提にして各学校に調査依頼をしてきたことは,本件以外の同和地区児童・生徒の基礎調査に係る公文書の一つ(実施機関から各学校長宛の依頼文書)により確認することができる。しかし,それは,あくまで,「差別につながることがないように」配慮したためであって,非開示とすることが,各学校の調査依頼への協力如何と直接的に関連するものではない。
(ウ)すなわち,実施機関は,必要な場合には,その所轄下にある各学校に対して,内部的指揮権の行使により調査報告を求め得る権限を有するのであり,各学校の協力如何が,本件公文書の開示・非開示によって左右されるべき性格のものではない。
(エ)本件公文書は,先にも見たように,調査結果の数値が一切記載されていない調査用紙でしかなく,それを開示したからといって,「差別につながる」とは考えられず,また,その開示を理由にして,協力しなくなり,その結果,今後の調査に支障が生ずるとも容易には推断しがたいものである。
ウ まとめ
以上のとおりであるから,本件公文書記載の情報が,本件条例第7条第3号の非開示情報に該当するとの実施機関の主張については,いずれもこれを認めることはできないものである。
2 争点2について
(1)本件条例第7条第4号は,開示しないことができる文書として「市又は国等が行う行政上の取締まり,犯罪の予防及び捜査,検査等の計画及び実施要領,争訟及び交渉の方針,契約の予定価格,用地買収計画その他の事務事業に関する情報であって,開示することにより,当該事務事業の目的を損なわせるおそれのあるもの,当該事務事業又は将来の同種の事務事業の公正又は円滑な執行に支障を生ずるおそれのあるもの,人の生命,身体又は財産の保護等市民生活の安全及び秩序維持に支障を及ぼすおそれのあるもの」に該当する情報(以下「事務事業執行情報」という。)が記載されている公文書を掲げている。
(2)事務事業執行情報を本件条例の非開示事由にした趣旨は,市,国等の行う事務事業に関する情報であっても,情報を開示すると事務事業を実施しても予想どおりの成果が得られなくなり,実施目的を失う場合や,不公平が生じることにより関係者の理解が得にくくなったりする等行政の円滑な執行を妨げるおそれがある場合や,開示することで身体や財産等の保護に支障をきたす場合があり,そのような場合には,当該情報を開示する利益より当該情報を非開示とすることで守る利益のほうが優先するとして,非開示事由とされたものである。そして本件条例第7条第4号にいう「おそれ」の解釈については,公文書の公開によって市民の市政への参加を推進し,開かれた市政の実現に寄与するという条例の趣旨が没却されることのないように単なる抽象的,観念的な可能性では足らず,事務事業の公正又は円滑な執行に支障を生ずる具体的かつ客観的な蓋然性が要求されると解され,そうした非開示事由(「おそれ」)の存在は,実施機関において個別具体的に主張立証しなければならない。
(3)以上の観点から本件公文書記載の情報が本件条例第7条第4号にいう事務事業執行情報に該当するか否かを検討する。
ア 実施機関は,本件公文書記載の情報を開示すれば,本件調査が困難となり,その結果,調査結果に基づく同和教育施策等の事務事業の公正又は円滑な執行に支障を生ずる旨主張する。
イ しかし,ここでも実施機関の主張は,極めて一般的かつ抽象的な主張に止り,どのように当該事務事業に支障が生ずるのかについての具体的主張立証に欠けるものである。すなわち,調査結果が記載されていない本件公文書(調査用紙)の開示がなぜ,同和教育施策等の事務事業の公正又は円滑な執行に支障をきたすのか,また,いかなる支障をきたすのかについて,具体的かつ説得性のある説明はなされていないのである。
ウ したがって,本件公文書記載の情報が本件条例第7条第4号の非開示情報に該当するとの実施機関の主張も,これを認めることはできない。
3 争点3について
(1)本件条例第7条第5号は,開示しないことができる文書として「市と国等との間における協義,協力,依頼等に基づいて作成し,又は取得した情報であって,開示することにより,国等との協力関係又は信頼関係が損なわれると認められるもの」に該当する情報(以下「国等協力関係情報」という。)が記載されている公文書を掲げている。
(2)この規定は,市の行政が,国,県,他の自治体との密接な関係の下に執行されていることから,市と国等との間における現在又は将来にわたる継続的で包括的な協力関係又は信頼関係を維持することによって,行政の適切かつ円滑な執行を図るという公益上の要請に基づき,開示されると市と国等の間の前記のような協力関係又は信頼関係を損なうと認められる情報が記載されている公文書は非開示とすることができる旨定めたものである。
(3)そして,本件条例第7条第5号にいう「国等の協力関係又は信頼関係が損なわれる」との要件該当性については,情報公開の原則をうたった本件条例の目的が没却されることのないように,まず,国等により非開示の意思ないし指示が明確に表示されているか否かの検討が必要であり,さらに,当該文書の開示により,「協力関係又は信頼関係が損なわれる」と認められるか否かについても,具体的事情を勘案して実質的検討を要すべきものであると解される。
(4)以上の観点から,本件公文書記載の情報が,本件条例第7条第5号の国等協力関係情報に該当するか否か検討する。
ア いわゆる同和地区児童・生徒の基礎調査は,県教委が,全県を通じた同和教育推進施策を遂行するための数値的統計資料を作成するため,実施機関に対してその調査を依頼したものであるということができる。また,この調査結果は,調査依頼もとである県教委に対し報告すると同時に,実施機関も,自らが行う同和教育推進施策を遂行するための数値的統計資料とするものである。
イ したがって,本件公文書の収受の背景となった県教委と実施機関との関係は,依頼協力関係という側面を有するものであり,本件公文書は市と国等との間における「協議,協力,依頼等に基づいて」実施機関が取得した情報が記録されているものであるということができる。
ウ 県教委は,実施機関の同種の公文書開示請求事件に係る開示非開示の文書照会に対し,(1)本件調査は,今後の行政施策に反映させるために行われていること,(2)同和問題に関する調査は,重大な人権侵害を起こす危険があり,取扱いには特に慎重な配慮が必要であること,(3)調査内容は,直接には個人情報ではないものの活用方法によっては,個人の識別が可能となるおそれがあること,を理由として当該同種の公文書を「すべて非開示とすることが適当である」旨の意思表示(回答)を文書で行った。
県教委が,指摘する(1),(2)及び(3)については,それぞれ妥当かつ正当な指摘であり,その限りで異論の余地のないものと判断されるが,なにゆえに前記(1),(2)及び(3)が本件公文書(調査用紙)と調査関連公文書の全てを非開示とする理由となるかについては,個別具体的な説明はなされておらず,不明である。しかし,本件公文書と同種のすべての公文書の取扱につき非開示とすべき県教委の意思は明確に表示されている。
エ そこで,次に本件公文書の開示により,実施機関と県教委との「協力関係又は信頼関係が損なわれる」と認められるか否かについて検討する。
周知のように,教育における国等との協力については,最近の地方分権推進の観点からのみならず,現行教育法制における重要な基本原理の一つである地方自治の原則からも,自主的な協力であるべきことが強く要請されているところである。本件条例が規定する「国等との協力関係又は信頼関係」についても,それが教育に関わる場合には,特に,現行の教育法制が要請する自主的な「協力関係又は信頼関係」が想定されているものと解される。
具体的に本件での同和教育基礎調査に関する「協力関係」について言えば,現行の教育法制のもとで,実施機関は,県教委の協力要請(調査依頼)に応ずるかどうか独自の立場で判断し,決定する自由を有するのであり,本件同和教育基礎調査についても,そうした自由に基づいて,自らの責任で協力要請に応じたものである。そうであるとすれば,当該調査に関する本件公文書の開示・非開示についても,県教委の意思に,全面的に拘束されるものではないことは言うまでもなく,実施機関独自の立場で判断し,決定する自由を有するはずである。すなわち,実施機関は,本件公文書を非開示とすべき合理的根拠又は理由を実施機関独自の立場から,本件条例の規定に則して,個別具体的に主張立証すべきものである。そうした主張立証をなし得ずして,もっぱら県教委の意思,しかも,上述したように「すべて非開示」の結論のみが明確で個別具体的な説明を欠いた県教委の回答を根拠に,県教委との「協力関係又は信頼関係が損なわれる」との理由で,本件公文書を全て非開示とすることは,現行の教育法制及び本件条例が想定する,教育における自主的な「協力関係又は信頼関係」を前提としない,誤った「協力関係又は信頼関係」の理解に基づくものであり,当審査会として是認しうるところではない。
オ 以上の理由により,本件公文書記載の情報に本件条例第7条第5号該当性を認めることはできない。
第5 結論
以上により,「第1 審査会の結論」のとおり判断する。
第6 総括
(1)本件での実施機関の主張は,開示請求対象の公文書の非開示該当性について個別具体的な主張立証というよりも,もっぱら同和問題に関する調査は,それが差別につながることのないよう慎重な取扱いが要請されるのであり,したがって,一切の文書を部外秘(非開示)とすべきであるという一般的かつ断定的な主張に終始している。確かに,実施機関が主張するように,同和問題に関する調査や情報については.人権尊重の観点から,それが差別につながらないよう慎重な取扱いが要請されるのであり,実施機関が,極めて慎重な配慮のもとで,本件同和地区児童・生徒の基礎調査に対処しようと尽力していることについては,「個人情報をみだりに公にすることのないよう最大限の配慮をしなければならない」ことを実施機関の責務として規定した本件条例第3条に照らして,当審査会も十分理解できるものである。
(2)しかし,そうした慎重な取扱いが必要であるという一事をもって本件調査に関わる一切の公文書を非開示とする結論を導き出すとすれば,それは,「市民の公文書の公開を求める権利を保障し,…市民の市政への参加を推進し,市政に対する市民の理解と信頼の増進を図り,もってより開かれた市政の実現に寄与する」(本件条例第1条)という本件条例のもう一つの重要な目的を没却し,また,「公文書の開示を求める権利が保障されるよう努める」(本件条例第3条)べき実施機関の責務を軽視するものであるといわなければならない。
(3)すなわち,実施機関は,一方でプライバシー等個人の人格的利益を守るための「最大限の配慮」が求められるが,他方で,市民の公文書の開示を請求する権利を軽視することは許されず,開示請求対象とされた公文書を非開示とするためには,実施機関が本件条例における非開示事由該当性について個別具体的に主張立証しなければならないものである。このことは,開示請求対象となった公文書が同和教育行政における分野のものであっても変わりないものである。
(4)従来同和教育行政における透明性が決して高くなかったこと,そして,そのことが同和教育行政に対する市民の理解を妨げる一因となっていたことをも考えれば,こうした分野の情報も,「個人情報」の保護に配慮しながら,むしろ本件条例の目的に基づき,積極的に開示する努力を行い,市民の理解と信頼に支えられた同和教育行政を推進していくことが,今日的課題として要請されているのである。こうした要請に応えることは,決して容易なことではないが,この点での実施機関の情報公開に向けての一層の努力と英断を期待するものである。

審査会の処理経過
年月日 処理内容
平成11年1月5日 諮問書の収受
平成11年3月8日 弁明書の収受
平成11年3月19日 第1回審査会(審議)
平成11年4月5日 反論書の収受
平成11年4月9日 第2回審査会(実施機関の口頭意見陳述及び審議)
平成11年5月14日 第3回審査会(異議申立人の口頭意見陳述及び審議)
平成11年6月14日 第4回審査会(審議)
平成11年7月12日 第5回審査会(審議)
平成11年8月9日 第6回審査会(審議)
平成11年9月10日 第7回審査会(審議)
平成11年9月20日 答申

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