ページの先頭です

共通メニューなどをスキップして本文へ

スマートフォン表示用の情報をスキップ

Language

答申第13号

[2010年3月4日]

ID:17128

ソーシャルサイトへのリンクは別ウィンドウで開きます

岡情審査第21号
平成13年2月22日

岡山市長 萩原 誠司 様

岡山市情報公開及び個人情報保護審査会
会長 山口 和秀

岡山市情報公開条例第16条の規定に基づく諮問について(答申)

平成12年7月11日付け岡福総第252号による下記の諮問について次のとおり答申します。


岡山市内の特別養護老人ホームに係る老人福祉施設指導台帳(平成10年4月1日現在)及び社会福祉施設指導監査資料(平成10年4月1日現在)のうち、〇〇〇、□□□に関する文書(以下「本件公文書」という。)の開示請求に対して、一部非開示とした決定に対する異議申立て(以下「本件異議申立て」という。)についての諮問

第1 審査会の結論
本件公文書について、非開示とされた項目のうち、次に掲げる部分については、開示すべきである。
1 老人福祉施設指導台帳について
(1)「施設長の勤務状況」のうち、「兼務状況」の「施設種類」
(2)「役員の構成」のうち、「職業」
(3)「法人の借入金の状況」の全ての部分
2 社会福祉施設指導監査資料について
(1)「職員の給与等の状況」の「人件費使途の状況」のうち、「非常勤寮母等賃金」「嘱託医等報酬」の「金額」を除く全ての部分
(2)「指導員・看護婦・寮母・調理員の勤務状況等」のうち、「勤務割表」の「勤務形態」(ただし、1名しかいない職種を除く。)
(3)「入所者の状況」のうち、「褥瘡予防対策及び褥瘡がある者についての状況」の「入所年月日」
(4)「医師及び医務室の状況」のうち、「兼任(嘱託)医師の勤務状況」の「医師名」「医療機関名」
(5)「入所者の医療管理等の状況」のうち、「協力医療機関の状況」の「医療機関」「施設からの距離」「法人・施設との関係」
(6)「入所者並びに職員の定期健康診断等の実施状況」の全ての部分
(7)「入所者預り金等の状況」のうち、「入所者預り金の状況」の「職名」、「本人との授受方法及び証憑書類の保管」の「職名」
(8)「遺留金品の処分状況」のうち、「死亡者名」、「死亡年月日」、「引き渡し状況」の「氏名」の3カ所を除く全ての部分
(9)「前回の指導監査の結果通知等による指示事項(口頭指導を含む)の改善状況」の全ての部分(ただし、個人名を除く。)
(10)「社会福祉施設運営上の要望事項等」の全ての部分
なお、1(2)「役員の構成」において、開示すべきとした「職業」以外の部分のうち、「親族関係等」については引き続き非開示が妥当であるが、記入がある部分だけを黒塗りする方法等によって親族関係の有無のみを明示するべきである。
第2 異議申立て及び諮問の経緯
1 本件異議申立人(以下「申立人」という。)は、平成12年5月24日付けで、岡山市長(以下「実施機関」という。)に対し、岡山市情報公開条例(平成12年市条例第33号。以下「条例」という。)第3条第1項の規定に基づいて本件公文書の開示請求を行ったが、実施機関は、同年6月7日付けで、次の(1)及び(2)に掲げる部分について、条例第5条第1号及び第2号該当を理由に非開示とする一部開示決定処分(以下「本件処分」という。)を行った。
(1)老人福祉施設指導台帳の非開示部分
ア「施設長の勤務状況」
「年齢」、「本俸月額」、「9年支給総額」、「兼務状況」の「施設種類等」「兼務先からの9年給与支給総額」
イ「役員の構成」「年齢」、「職業」、「親族関係等」
ウ「法人役員及び施設長と親族等特別な関係にある職員の状況」
「職種名」、「氏名」、「法人役員又は施設長との親族等の関係」、「9年給与・手当総支給額」、「寄付金額」
エ「入所者処遇」
「協力医療機関の委託金額」、「医師の勤務形態等」の「給与等の支給年額」
オ「法人の借入金の状況」
「借入先名」、「借入金額」、「担保の有無」、「償還財源の内訳」
カ「法人役員及び役員の親族等が経営する会社との取引状況」
「法人役員及び法人役員の親族等氏名」、「会社・商店名」、「法人役員との親族・特別関係の内容」
(2)社会福祉施設指導監査資料の非開示部分
ア「施設の概況」の「土地・建物設備の状況」
「借地所有者」、「借地料」
イ「職員の給与等の状況」の「職員の給与等」
「職種」、「専任・兼任の別」、「氏名」、「性別」、「年齢」、「資格の有無」、「資格の取得年月日」、「最終学歴卒業年月」、「経験年数」、「平成9年度給与の状況」、「平成10年4月分給与の状況」
ウ「職員の給与等の状況」の「人件費使途の状況」
「職員俸給」、「職員諸手当」、「賃金」、「法定福利費」
エ「指導員・看護婦・寮母・調理員の勤務状況等」の「4月勤務割」
「職員名」、「勤務形態」
オ「職員会議などの実施状況」
「参加職員」
カ「施設職員の研修状況」
「出席者氏名」
キ「入所者の状況」の「祷瘡予防対策及び祷瘡がある者についての状況」
「氏名」、「入所年月日」
ク「入所者の処遇状況」の「リハビリテーションの実施状況」
「策定者」、「担当職員名」
ケ「医師及び医務室の状況」の「兼任(嘱託)医師の勤務状況」
「医師名」、「医療機関名」、「手当」の「月額」「9年度支給総額」「うち措置費支出額」
コ「入所者の医療管理等の状況」の「協力医療機関の状況」
「医療機関」、「施設からの距離」、「委託金額」、「法人・施設との関係」
サ「入所者並びに職員の定期健康診断等の実施状況」
「入所者の定期健康診断」の「検査機関」、「職員の定期健康診断」の「検査機関」
シ「入所者預り金等の状況」
「入所者預り金の状況」の「職名」「氏名」、「入所者預り金の保管場所」、「本人との授受方法及び証憑書類の保管」の「職名」「保管場所」
ス「遺留金品の処分状況」
「死亡者名」、「実施機関名」、「死亡年月日」、「実施機関への被措置者状況変更届書提出年月日」、「葬祭の実施状況」、「処理の状況」の「葬祭費へ充当した額」「残額」、「実施機関からの引渡し指示書受理年月日」、「引き渡し状況」の「遺留金品を引き渡した月日」「氏名」
セ「災害事故防止対策」の「防災設備の保守点検の状況」
「実施者」
ソ「前回の指導監査の結果通知等による指示事項(口頭指導を含む)の改善状況」
「改善指示事項」、「改善措置状況」、「備考」
タ「社会福祉施設運営上の要望事項等」
「国に対する要望事項等」、「市に対する要望事項等」、「措置機関に対する要望事項等」
2 これに対し、申立人から同年7月3日、前記非開示部分の開示を求めて、本件異議申立てがあったので、実施機関は同年7月11日付けで、当審査会に対し、条例第16条に基づく諮問を行った。
なお、実施機関は、本件諮問後、社会福祉施設指導監査資料の非開示部分のうち、前記1(2)アについて、「借地所有者は、登記簿を閲覧すれば容易に明らかとなる事項であり、また、借地料についても、土地等法人の基本財産である場合は地上権、賃借権の登記が義務づけられており、登記簿で明らかにされている。したがって、開示しても法人及び借地所有者の権利を侵害するおそれがないので、改めて開示することとする。」としている(実施機関側意見書)。
第3 審査会の判断
異議申立人と実施機関との間における本件の争点をめぐる諸問題に関し、当審査会は以下のとおり判断する。
1 本件公文書について
本件公文書は、岡山市内に18ある特別養護老人ホームのうち、〇〇〇、□□□の2施設に係る平成10年4月1日現在における老人福祉施設指導台帳及び社会福祉施設指導監査資料である。
このうち老人福祉施設指導台帳は、老人福祉法(昭和38年法律第133号)第18条に基づいて厚生省が実施する、老人福祉施設に対する指導監査の事前資料として活用するとともに、各老人福祉施設の状況把握のため、毎年提出を求めているものである。具体的には、社会福祉法人が厚生省の示した「老人福祉施設指導台帳作成要領」に基づき施設ごとに作成し、原本1部と写し1部を厚生省が、写しの1部を施設が保管することとなっているものであるが、市としても、各施設の老人福祉施設指導台帳を取りまとめ、厚生省に送付しているところ、施設の状況把握のため、その写しを保管しているものである。記入されている項目は、前記「老人福祉施設指導台帳作成要領」において定められており、各老人福祉施設ごとの土地建物の状況、施設を運営する社会福祉法人等の役員の構成、施設長等の状況、入所者の現況、法人及び施設の決算状況その他当該施設に関する事項である。
それに対して、社会福祉施設指導監査資料は、市が社会福祉法(昭和26年法律第45号)第56条第1項及び第70条並びに老人福祉法第18条の規定に基づき行う、社会福祉法人及び老人福祉施設に対する指導監査の事前資料として毎年提出を求めているものであり、厚生省から示された作成要領等は存在しない。そのため具体的な記入項目は市が独自に定めており、老人福祉施設指導台帳と重複する部分もあるが、施設の概況、職員の採用・退職・給与・勤務状況等、入所者の状況、医療管理等の状況、決算状況その他施設の現況に関する項目に加え、前回の指導監査の際に指摘された改善指示事項及びその改善措置状況についても記入されている。
2 本件公文書における非開示の条例上の根拠について
条例第5条は、実施機関に対して、開示請求があったときは、同条第1号から第5号までに規定する非開示情報のいずれかに該当する場合を除いて開示を義務づけている。そこで、本件処分について判断するためには、本件公文書において非開示とされた情報が条例中の非開示情報に該当するか否かの検討が必要となる。実施機関は、当初、本件処分における非開示理由を条例第5条第1号及び第2号該当としていたが、その後の意見書及び口頭意見陳述の中で、条例第5条第3号及び第4号アを追加している。そこで、本件公文書において非開示とされた情報が条例中の非開示情報に該当するか否かの具体的検討に入る前に、まず、本件処分において非開示理由とされた、条例第5条第1号、第2号、第3号及び第4号アの内容について検討する。
(1)条例第5条第1号について条例第5条第1号本文は、「個人に関する情報(事業を営む個人の当該事業に関する情報を除く。)で特定の個人を識別することができるもの(一般人が通常入手し得る関連情報と照合することにより、特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)」(以下「個人情報」という。)を非開示情報としている。これは、非開示とされるべき個人情報に該当するか否かのメルクマールとして、プライバシー性ではなく、「個人を識別することができる」かどうかという個人識別性を採ったことを示している。これは、プライバシーが個人情報の中核部分をなすものではあるが、その概念が必ずしも明確でなく、個人によってその範囲が異なり、判断が難しいことを考慮したものである。「個人を識別することができる」情報としては、氏名等のように当該情報のみで個人が識別される情報だけでなく、「関連情報と照合することにより」個人が識別されるものも含まれるが、本条例は、その範囲を不当に拡大することのないよう、照合対象となる関連情報について、「一般人が通常入手し得る関連情報」に限っている。また、一方で、本条例は、そのただし書において、「ア 法令若しくは他の条例の規定により又は慣行として公にされ、又は公にすることが予定されている情報」、「イ 人の生命、健康、生活又は財産を保護するため、公にすることが必要であると認められる情報」、「ウ 当該個人が公務員(国家公務員法(昭和22年法律第120号)第2条第1項に規定する国家公務員及び地方公務員法(昭和25年法律第261号)第2条に規定する地方公務員をいう。)である場合において、当該情報がその職務の遂行に係る情報であるときは、当該情報のうち、当該公務員の職及び氏名並びに当該職務遂行の内容に係る部分」については、個人情報に該当するものであっても、開示すべき旨を規定している。本件公文書が老人福祉施設及び社会福祉施設の運営状況に関する文書であることから、特にただし書イによる開示可能性が問題になると思われるが、具体的には非開示により保護される利益と開示により保護される利益の比較衡量の結果、判断することとなる。
(2)条例第5条第2号について
条例第5条第2号本文は、「法人その他の団体に関する情報であって開示することにより、当該法人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるもの」(以下「法人情報」という。)を非開示情報としている。ここにいう法人は特段限定されていないため、本件処分における社会福祉法人もこれに含まれる。また、法人情報においても、前記個人情報の場合と同様、ただし書において、「人の生命、健康、生活又は財産を保護するため、公にすることが必要であると認められる情報」は、開示を義務づけられている。この場合においても、(1)において述べた条例第5条第1号ただし書イの場合と同様、非開示により保護される利益と開示により保護される利益の比較衡量の結果、判断することとなる。
(3)条例第5条第3号について
条例第5条第3号は、「本市の機関並びに国及び他の地方公共団体の内部又は相互間における審議、検討又は協議に関する情報であって、開示することにより、率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれ、不当に市民の間に混乱を生じさせるおそれ又は特定の者に不当に利益を与え若しくは不利益を及ぼすおそれがあるもの」(以下「審議、検討又は協議に関する情報」という。)を非開示情報としている。実施機関は、意見書の中で、「市と法人の信頼関係に基づく率直な意見の交換を阻害」するとして、審議、検討又は協議に関する情報該当を非開示理由の一つとしているが、条例は「本市の機関並びに国及び他の地方公共団体の内部又は相互間」に限っているので、本件処分は審議、検討又は協議に関する情報には該当しない。
(4)条例第5条第4号アについて
条例第5条第4号は、「本市の機関が行う事務又は事業に関する情報であって、開示することにより、当該事務又は事業の性質上、当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるもの」(以下「事務事業情報」という。)を非開示情報とし、その典型例をアからカに例示的に列挙している。そのうち、実施機関は本件処分をアに該当するとしている。事務事業情報該当性を検討するに当たっては、本市の機関による恣意的な判断によって、非開示部分が不当に拡大することのないよう、以下の点に留意することが必要である。「適正」という要件を判断するに際しては、非開示により保護される利益と開示により保護される利益を比較衡量の結果、判断することとなる。また、事務事業の執行に支障を及ぼす「おそれ」も単なる抽象的・観念的な可能性では足りず、具体的かつ客観的な蓋然性が要求されると解され、そうした「おそれ」の存在は実施機関において個別具体的に主張立証しなければならないものである。
(5)本件公文書の審査に際しての基本的視点
(1)及び(2)において述べたように、条例第5条第1号ただし書イ及び第2号ただし書による開示を判断するに当たっては、非開示により保護される利益と開示により保護される利益の比較衡量をすることとなるが、その際、老人福祉施設及び社会福祉法人を取り巻く今日の社会的状況を考慮する必要がある。平成12年6月の社会福祉事業法(改正後名称は社会福祉法)の改正で、事業運営の透明性の確保及び利用者への選択肢の提供という観点から、事業者によるサービス内容に関する情報提供、社会福祉法人に対する財務諸表及び事業報告書の開示の義務付け、国や地方公共団体による情報提供体制の整備を求めるとされている。そうした状況に鑑みると、老人福祉施設や社会福祉法人に関しては、事業者が利用者のために一層の情報提供・情報開示を進めるべきことが、また、実施機関に対しても、条例第5条第1号ただし書イ及び第2号ただし書による開示の要請を重視して条例を運用すべきことが、法によって要請されていると考えられるのであり、当審査会もそうした法の要請を基本的な視点として、本件公文書の審査に臨むべきものと考える。
3 非開示情報該当性の具体的検討
以上の点を踏まえ、本件公文書における非開示部分が条例中の非開示情報に該当するか否かを具体的に検討する。
(1)老人福祉施設指導台帳について
ア「施設長の勤務状況」
本項の各非開示部分は、既に氏名の公表されている施設長の個人的な情報であり、特定の個人を識別できることとなるため、個人情報に該当する。申立人は、「施設長は公人であるから個人情報ではない」(異議申立書)と主張するが、施設長は公務員ではなく、条例第5条第1号ただし書ウに該当しないため、やはり個人情報である。また、ただし書アにも該当しないので、ただし書イによる開示が問題となるが、「本俸月額」、「9年支給総額」及び「兼務状況」の「兼務先からの9年給与支給総額」については、「人の生命、健康、生活又は財産を保護するため」という目的との関係が希薄であり、施設長個人の所得に関する情報が明らかになるという不利益との比較衡量の結果、非開示が妥当である。「年齢」について、申立人は「年齢が若いほうが、施設運営の意欲、活力等の経営能力の点で期待できる」(口頭意見陳述)とするが、年齢による経営能力の評価は根拠に乏しいといわざるを得ず、それを開示することにより得られる利益は疑問であるから非開示が妥当である。「兼務状況」の「施設種類等」については、施設長が多くの職を兼務している場合等、その兼務状況によっては、適正な施設業務の運営を阻害する可能性があるので、入所者の生命、健康等の保護のために開示する必要性があると認められるので、条例第5条第1号ただし書イによって開示されるべきである。
イ「役員の構成」
本項の各非開示部分は、既に氏名の公表されている役員の個人的な情報であり、特定の個人を識別できるため、個人情報に該当する。「年齢」については、アにおいて述べたと同様の理由により、非開示とすべきである。「職業」については、厚生省課長通知において、その適格者として、知識経験を有する者や地域関係者である、弁護士、医師、社会福祉団体代表者等の職業が例示されているように、法人役員の適格性等を判断するための重要な基準になるものであるから、施設の適正な運営確保が、入所者の生命、健康等の保護のために必要であるという理由から、条例第5条第1号ただし書イにより開示されるべきである。「親族関係等」について、申立人は「給与報酬の高い役員の大部分を親族で占めていないかどうかを調査する」(口頭意見陳述)ため、開示を要求するとしている。しかし、親族関係の有無が直接に役員としての適性、能力等に関係するとはいえず、入所者の生命、健康等の保護のためという必要性に乏しいことから、申立人主張の目的のために、具体的な親族関係の内容まで開示することが妥当であるとまではいえない。しかし、役員が施設の運営に直接関わる最高の意思決定機関であること、また、役員中の親族の割合については社会福祉法による制限があること等に鑑み、何らかの方法で親族関係の有無のみは示すべきである。
ウ「法人役員及び施設長と親族等特別な関係にある職員の状況」
本項の各非開示部分のうち、「氏名」、「法人役員又は施設長との親族等の関係」、「9年給与・手当総支給額」、「寄付金額」については、それを開示することにより、個人が特定され、その親族関係、財産状況等の個人的な情報が明らかになるおそれがあるため、個人情報に該当する。「職種名」のみの開示によっても、その職種によっては当該施設で一人あるいは2、3人しかいない場合があるので、個人が特定されるおそれがある。「職種名」自体は個人情報ではないように思えるが、本項部分に関していえば、特定の職員が記載されているか否か自体が明らかになることによって、非開示にしようとする情報、すなわち、職員の親族関係というプライバシーが侵害されることとなるので、やはり個人情報に該当する。そのうえで、条例第5条第1号ただし書イによる開示可能性の有無の問題になるが、職員については、イにおいて述べた役員のように、施設運営に直接関わる立場にはなく、法律による制限もないことから、開示の要請が強いとはいえない。したがって、非開示が妥当である。
エ「入所者処遇」
本項の非開示部分である「協力医療機関の委託金額」、「医師の勤務形態等」の「給与等の支給年額」については、後で検討する社会福祉施設指導監査資料の非開示部分のうちの「医師及び医務室の状況」、「入所者の医療管理等の状況」の項目中に含まれているので、そこで検討することとする。
オ「法人の借入金の状況」
本項の非開示部分は、資金調達、負債の返済等、経営上の内部的な情報であり、特に「借入先名」、「借入金額」、「担保の有無」については、それらを開示することによって、借入先金融機関との契約内容が明らかにされ、信頼関係が損なわれる可能性はある。しかし、実際には、ほとんどの場合、金融機関は不動産担保を徴しており、これらの事項は登記簿に記載されているため、開示しても実質的に法人の利益に及ぼす害は小さいと思われる。また、これらの事項は、改正後の社会福祉法第44条により社会福祉法人に対して公開が義務づけられた財務書類の作成に関して厚生省が新たに示した「社会福祉法人会計基準」において明示すべきとされていることからも、経営の透明性確保という観点から特に開示の要請が強い部分であるといえる。以上のことから、本項非開示部分は法人情報に該当するかもしれないが、開示により損なわれる法人の利益が小さいこと、また、経営の健全性等が端的にわかる部分であり、開示の要請が強い部分であることから、条例第5条第2号ただし書により開示するのが妥当である。
カ「法人役員及び役員の親族等が経営する会社との取引状況」
本項の非開示部分は、法人の取引状況に関する情報であり、一般的には、これらを公開することにより、当該取引業者に競合他社との関係において取引条件面で不利益を被らせることになり、当該取引業者と社会福祉法人との信頼関係が損なわれる可能性があるので、法人情報に該当する。そのうち、「法人役員及び法人役員の親族等氏名」、「法人役員との親族・特別関係の内容」は、個人情報にも該当する。また、取引業者に法人役員の親族が関係しているという事実は、入所者の生命、健康等の保護と直接関係なく、開示による利益が大きいとはいえないので、条例第5条第2号ただし書による開示の必要性も認められない。
(2)社会福祉施設指導監査資料について
ア「施設の概況」の「土地・建物設備の状況」
本項の非開示部分については、既に述べたとおり、実施機関において改めて開示することとされた。
イ「職員の給与等の状況」の「職員の給与等」
本項の非開示部分は、職員の氏名、年齢、学歴、給与という職員個人に関する情報の中でも、特にプライバシー性の強い情報である。申立人は、「氏名など個人が特定できるものを除外してでも開示すべき」(補充意見書)と主張する。しかし、それ以外の情報のみの開示によっても、学歴や給与額の多寡、特定の人のみが対象となる手当(管理職手当、特殊業務手当等)の有無によって特定される場合等が考えられるため、やはり個人情報に該当する。また、申立人は、「職員への処遇、措置費の執行状況の実体を把握し改善を求める」(補充意見書)ため開示を求めるとしている。この点、職員の処遇の善し悪しは、サービスの質に直接影響を与える可能性が強いため、入所者の生命、健康等の保護の観点から、条例第5条第1号ただし書イによる開示が問題となるが、本項の非開示部分は個人情報の中でも、プライバシーの中核をなすものであり、特に保護の要請が強い情報であるため、やはり非開示とするのが妥当である。しかし、保護の要請が強いと同時に開示の要請も強い部分であるので、本件公文書の開示という方法によるのではなく、個人が特定されないようなかたち、例えば、職員の平均給与額や年齢構成等の統計的な数値を別途情報提供する等、なんらかの措置を講ずるべきである。
ウ「職員の給与等の状況」の「人件費使途の状況」
本項の非開示部分について、実施機関は、「職員の年齢構成、経験年数、勤務形態等によって、人件費の使途の状況、金額、職員一人あたりの支給金額は大きく異なってくる。したがって、職員の俸給、手当等ごとに人数と金額を開示すると、その事項のみによって当該施設が評価され、法人の社会的評価等の不利益を生じるおそれがある。」(実施機関意見書)とする。しかし、職員の人数については、既に開示済みの部分で明らかにされており、人件費の金額についても、決算資料中で、俸給、手当等ごとの年間の総額が明らかになっていることから、それと各月ごとの金額を区別する実益はないと思われる。以上のことから、本項の非開示部分は、開示しても法人の利益を害するとは考えられないので、法人情報には該当しない。ただ、本項の非開示部分を全て開示した場合、ほとんどの施設において嘱託医は1人体制であるため、嘱託医の報酬額という個人情報が明らかになる。したがって、「非常勤寮母等賃金」「嘱託医等報酬」の「金額」部分については、非開示とするのが妥当である。
なお、「非常勤寮母等賃金」の「金額」まで、非開示にしているのは、「嘱託医等報酬」の「金額」のみを消しても、他の開示部分から金額がわかってしまうこと、また、施設によっては、非常勤寮母及び嘱託医ともに1人体制のところがあるためである。
エ「指導員・看護婦・寮母・調理員の勤務状況等」の「4月勤務割」
本項の非開示部分のうち、「職員名」は明らかに個人情報であり、非開示が妥当である。「勤務形態」については、職員の勤務日、勤務時間等、逆にいえば、休日等が明らかになるので個人的な情報であるといえる。しかし、本件公文書においても、実施機関が「寮母については、人数が多いため特定が困難である」(口頭意見陳述)との理由で既に開示しているように、「職員名」を非開示とすれば、複数人いる職種については個人が特定されなくなるので、開示が妥当である。
オ「職員会議などの実施状況」
本項の非開示部分は、「参加職員」の個人名であり、明らかに個人情報に該当するため、非開示が妥当である。
カ「施設職員の研修状況」
本項の非開示部分である「出席者氏名」は、明らかに個人情報である。申立人は、「業務として出席したのであれば、個人のプライバシーには当たらず、公務員に準じて氏名を開示されて当然」(補充意見書)としているが、施設職員は条例第5条第1号ただし書ウに規定する公務員ではないため、やはり非開示が妥当である。
キ「入所者の状況」の「褥瘡予防対策及び褥瘡がある者についての状況」
本項の非開示部分のうち、「氏名」は明らかに個人情報であり、非開示が妥当であるが、「入所年月日」については個人情報に該当するかどうか検討が必要である。「入所年月日」を開示したとしても、それのみでは個人を特定できる情報ではないが、実施機関は「入所年月日を開示することにより、入所者等関係者をはじめ多くの者が特定の個人を識別することができる」(意見書)とし、条例第5条第1号本文中の「一般人が通常入手し得る関連情報と照合することにより、特定の個人を識別することができる」情報に該当するとしている。確かに、入所者等関係者であれば、誰がいつ入所したかを知り得るであろうから、「入所年月日」によって個人を特定することができるかもしれないが、一般人は通常それらの情報を入手することはできないから、「入所年月日」は個人情報には該当しない。したがって、開示が妥当である。
ク「入所者の処遇状況」の「リハビリテーションの実施状況」
本項の非開示部分は、「策定者」、「担当職員名」という個人の氏名であり、明らかに個人情報に該当するため、非開示が妥当である。
ケ「医師及び医務室の状況」の「兼任(嘱託)医師の勤務状況」
本項の非開示部分は、施設と医療機関及び医師との間の契約内容に関する内部的な情報であり、これらが開示されることにより、医療機関及び医師との信頼関係が損なわれるおそれがあると認められるため、法人情報に該当する。そのうち、「医師名」、「手当」の「月額」「9年度支給総額」「うち措置費支出額」については、医師個人の所得に関する情報であり、個人情報にも該当する。しかし、申立人の「提携している医療機関は入所者が施設を選択するための重要な基準である」との主張のとおり、老人福祉施設における医療の重要性に鑑み、入所者の生命、健康等の保護のため、条例第5条第1号ただし書イ及び第2号ただし書により開示する必要性は高いと思われる。しかし、開示による利益と不利益を比較衡量した場合、「医療機関名」はともかく、「医師名」と「手当」の「月額」「9年度支給総額」「うち措置費支出額」の全てを開示した場合に医師個人の所得が明らかになってしまい、開示による不利益が大きくなりすぎてしまうこと、また、報酬額の多寡が診療レベルに直接影響するとは一概に言い切れないことから、「手当」の「月額」「9年度支給総額」「うち措置費支出額」を除いた、「医師名」と「医療機関名」のみ、開示することが妥当である。
コ「入所者の医療管理等の状況」の「協力医療機関の状況」
本項の非開示部分については、前記ケに述べたと同様の理由により、「委託金額」を除いた、「医療機関」、「施設からの距離」、「法人・施設との関係」のみの開示が妥当である。
サ「入所者並びに職員の定期健康診断等の実施状況」
本項の非開示部分については、前記ケ及びコと同様の理由により、全て開示するのが妥当である。
シ「入所者預り金等の状況」
本項の非開示部分のうち、「入所者預り金の保管場所」、「本人との授受方法及び証憑書類の保管」の「保管場所」については、開示することにより、施設が管理する金品等財産の安全を損なう可能性があり、法人の利益を害するおそれがあるので法人情報に該当し、ただし書による開示の必要性も認められないため、非開示が妥当である。また、「入所者預り金の状況」の「氏名」については、明らかに個人情報であり、非開示が妥当である。これら以外の情報、すなわち「入所者預り金の状況」の「職名」、「本人との授受方法及び証憑書類の保管」の「職名」は、どの職種の職員が保管の責任者であるかということであって、個人に関する情報ではないので、個人情報には該当せず、また、開示しても法人の利益を害する情報でもないので、法人情報にも該当しないため開示が妥当である。
ス「遺留金品の処分状況」
本項の非開示部分のうち、「死亡者名」、「引き渡し状況」の「氏名」は明らかな個人情報であり、非開示が妥当である。実施機関は、それ以外の項目についても、「公開することにより、施設によっては死亡した個人が特定される」として、個人情報に該当するとしている。確かに、「死亡年月日」については、新聞の訃報欄等で一般の人でも知ることができるため、それを開示することにより、「一般人が通常入手し得る関連情報と照合することにより、特定の個人を識別することができる」ので、個人情報に該当すると思われる。しかし、それ以外の「実施機関名」、「実施機関への被措置者状況変更届書提出年月日」、「葬祭の実施状況」、「処理の状況」の「葬祭費へ充当した額」「残額」、「実施機関からの引渡し指示書受理年月日」、「引き渡し状況」の「遺留金品を引き渡した月日」については、遺族関係者等はともかく、一般の人が通常入手できる情報ではないため、開示したとしても個人を識別することができる情報とはいえないので、個人情報には該当しない。したがって、開示が妥当である。
セ「災害事故防止対策」の「防災設備の保守点検の状況」
本項の非開示部分は、「実施者」の個人氏名であり、明らかに個人情報に該当するため、非開示が妥当である。なお、念のため説明しておくと、本項の「消防計画及び防火管理者の届出状況」の「防火管理者氏名」が、個人氏名でありながら開示されているのは、「防火管理者は、消防法第8条により、消防署等への氏名の届出が義務づけられていることから開示した」(実施機関口頭意見陳述)ためである。
ソ「前回の指導監査の結果通知等による指示事項(口頭指導を含む)の改善状況」
本項非開示部分について、実施機関は、「指導監査における指摘事項には、法令に合致しているかどうかという検査的側面からのものと、指導的側面からのものがあり、前者はともかく、後者の立場からの指摘は施設のレベルに応じて行っているので、必ずしも不適正な運営とはいえない施設に対してもより一層の適正化を図るための指摘をすることがある。したがって、開示した場合、それによって施設のレベルを判断されると、社会的信用、社会的評価等の正当な利益を損なうおそれがあるので法人情報に該当する」(実施機関口頭意見陳述)としている。しかし、指導的側面からの指摘であっても、それが施設として具備されるべき点であることに違いはないので、かりに非開示にすることにより保護される法人の利益があるとしても、それは保護されるべき正当な利益とはいえない。したがって、法人情報に該当しないので、開示が妥当である。ただ、本項の非開示部分には、個人氏名の記述が見受けられるので、その部分については、非開示とすべきである。
タ「社会福祉施設運営上の要望事項等」
本項の非開示部分について、実施機関は、「要望事項を公開すると、市と法人の信頼関係に基づく率直な意見交換が阻害され、正確な事実の把握を困難にするおそれがある」(意見書)とし、条例第5条第4号アの事務事業情報に該当するとしている。しかし、実施機関のいう「おそれ」は、極めて抽象的レベルで想定されたものであり、事務事業の執行に支障を及ぼす具体的かつ客観的な「おそれ」の存在が主張立証されている訳ではない。したがって、事務事業情報には該当しないため、開示が妥当である。
4 結論
以上の理由により、当審査会は、「第1 審査会の結論」のとおり判断するものである。
第4 答申に当たっての補足意見
本件公文書の開示請求に対して実施機関が示した一部非開示の決定における個人情報や法人情報への慎重な配慮、事務事業執行に対する支障への懸念などは、本件公文書が老人福祉施設及び社会福祉法人のあり方についての重要な改革ないし転換を意味する社会福祉事業法の改正(平成12年6月)以前に作成されたものであることを考慮した場合、まったく根拠のない配慮や懸念であるとは言えず、当審査会としても、そうした配慮や懸念を示した実施機関の立場を十分に理解することができる。しかし、上述したように(第3.2(5))、当審査会は、改正社会福祉法において、社会福祉法人はもとより、国や地方公共団体にも情報提供体制の整備が求められていることを重視して、そうした法の要請に早急に応えて条例を運用することが必要かつ妥当であるとの考え、そうした基本的な視点から本件の審査を行った。実施機関が、新たな法の要請を踏まえて、社会福祉諸施設に関わる情報につき、条例に基づく公文書の開示はもちろん、情報提供施策の充実等によって、より積極的な情報公開に基づく福祉行政を実施していくことを期待するものである。
第5 審査会の処理経過
当審査会の処理経過は次のとおりである。

審査会の処理経過
年月日 処理内容
平成12年7月11日 諮問書の収受
平成12年7月28日 実施機関の意見書の収受
平成12年8月12日 申立人の意見書の収受
平成12年8月28日 審議
平成12年10月6日 実施機関口頭意見陳述及び審議
平成12年10月18日 申立人の補充意見書の収受
平成12年10月23日 申立人口頭意見陳述及び審議
平成12年11月28日 実施機関再口頭意見陳述及び審議
平成12年12月19日 審議
平成13年1月23日 審議
平成13年2月22日 答申

お問い合わせ

総務局総務部行政事務管理課情報公開室

所在地: 〒700-8544 岡山市北区大供一丁目1番1号 [所在地の地図]

電話: 086-803-1083 ファクス: 086-222-0528

お問い合わせフォーム