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答申第16号

[2010年3月4日]

ID:17131

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岡情審査第22号
平成13年12月19日

岡山市教育委員会
委員長 平田 嬉世子 様

岡山市情報公開及び個人情報保護審査会
会長 山口 和秀

岡山市個人情報保護条例第17条の規定に基づく諮問について(答申)

平成13年3月23日付け岡市教委指第864号による下記の諮問について次のとおり答申します。

市立小学校の指導要録に記載された個人情報の訂正請求(以下「本件請求」という。)に対して訂正拒否とした決定(以下「本件決定」という。)に対する異議申立て(以下「本件異議申立て」という。)についての諮問
第1.審査会の結論
本件異議申立てについては、本件指導要録に記載された個人情報の特殊性を考慮して、異議申立人(以下「申立人」という。)が提出した「個人情報訂正請求書」、「異議申立書」及び当審査会あての「意見書」を、岡山市教育委員会(以下「実施機関」という。)の側の「個人情報訂正拒否決定通知書」及び当審査会あての「意見書」とともに、本件指導要録の原本にその資料として添付することをもって、岡山市個人情報保護条例(平成12年市条例第34号。以下「条例」という。)第12条に基づく「訂正」措置とすることが相当であり、したがって本件請求の拒否決定処分をそのように変更することが妥当と認められる。

第2.異議申立て及び諮問の経緯
1 法定代理人に代理された申立人は、申立人の小学校当時の指導要録(以下「本件文書」という。)における「出欠の記録」中で「備考」欄の第3学年当時の欠席理由が「事故欠(家庭の事情)」とされている点につき、「(家庭の事情)」の部分は事実と異なるとして、平成13年1月30日、実施機関に対し、条例第12条に基づいて、当該記述の訂正を求めることを内容とする本件請求を行った。
2 本件請求に対して、実施機関は、平成13年2月13日付けで、訂正を拒否する本件決定を行ったが、翌日、申立人から本件異議申立てがなされたため、同年3月23日、条例第17条に基づいて、当審査会に対する諮問を行った。
第3.実施機関及び申立人の主張の概要
実施機関及び申立人の主張は次のとおりである。
1 実施機関の主張要旨
学籍簿等に記載する欠席理由としては、「病気欠席」と「事故欠席」があるが、本件の場合は「事故欠席」に該当すると考えられる。「事故欠席」の理由としては、不登校、家出などの「本人の事情」と家族旅行、家事手伝い、社会活動・こども会活動への参加、保護者の教育観・宗教観などの「家庭の事情」が挙げられる。本件は、給食や学校生活に必要なきまり(上靴、制服など)等について申立人の保護者と学校側との間に考え方の相違があったこと、また、申立人がいじめられていると保護者が思ったことから、学校側がきまりを変更し、謝罪しなければ、申立人を学校に行かせないと保護者が判断し、申立人を欠席させたものであるから、保護者の教育観にかかわる欠席理由として「家庭の事情」とするのが適切である。
2 申立人の主張要旨
(1)「学校側にきまりを変更してほしい」と望んだことはないし、「謝罪しないと学校へ行かせないと判断して欠席させた」というのは、事実と全く異なっている。
(2)申立人の欠席は、家庭の事情によるものではなく、担任の先生による「嫌がらせ」、「非常にひどい仕打ち」によるものである。
(3)欠席理由として「家庭の事情」か「本人の事情」しかないところに問題があり、そうした記載以外に事実を全部書いて欲しい。
第4.審査会の判断
実施機関と申立人との間における本件異議申立てをめぐる諸問題に関し、当審査会は以下のとおり判断する。
1 自己に係る個人情報の訂正請求権について
(1)条例第12条は、「何人も、実施機関に対し、自己に係る個人情報の記録について事実の記載の誤りがあると認めるときは、当該個人情報の記録の訂正を請求することができる。」と規定している。この規定は、「自己情報の開示請求権の行使等により、自己情報に事実の記載の誤りがあることを発見した場合の訂正請求権を認め、これによりプライバシー侵害その他の不利益を防止するとともに、記録の正確性の保持を図ろうとするものである」(「岡山市情報公開及び個人情報保護制度運用の手引き(以下「手引き」という。)」102頁)。
本条に基づき、本市においては、何人にも、自己に係る個人情報の記録の訂正請求権が認められているものと解される。
(2)条例第12条によれば、自己に係る個人情報の記録の訂正請求が認められるのは、「事実の記載の誤りがある」場合である。それは、一般的には、「客観的事実に関する誤り…、例えば明確な誤記、記載漏れ、具体的事実との齟齬といったもの」があり、「その訂正について客観的に正当な理由が認められる場合」であって、「内容、評価、意見等価値判断に関する自己情報が本人の予想と異なっているなど」の場合ではないと考えられる(「手引き」103頁)。
もっとも、「事実の記載の誤り」を文字どおり、「明確な誤記、記載漏れ」等のみに極端に狭く解するとすれば、そうした場合には不服申立てに及ぶこともほとんど考えられないことから、不服申立ての制度そのものを無意味なものとするだけではなく、条例が、自己に係る個人情報の記録の訂正に関し、実施機関の責務としてではなく、市民の請求権として認めたことの趣旨、すなわち、「あくまで個人の権利・利益の保護を十分なものとする趣旨」(「手引き」102頁)に照らしても問題があると思われる。
また、「事実の記載」と「評価の記述」とをはっきりと区別することが困難な場合があることをも考慮すれば、上述の一般論を踏まえつつも、「事実」か「評価」かといった単純な二分論で処理するのではなく、訂正請求の対象文書(記録)の特質に即した訂正の要否の個別的審査が必要であることも留意されるべきである。
2 本件文書及び本件請求に係る個人情報について
(1)本件文書は、学校教育法施行規則(昭和22年文部省令第11号)第12条の3により、学校長に作成が義務付けられている指導要録である。指導要録は、児童・生徒の学籍並びに指導の過程及び結果の要約を記録し、指導及び外部に対する証明等のために役立たせるための原簿としての性格を有しており、その作成様式及び記載事項については、平成3年3月20日付け文初小第124号初等中等教育局長通知「小学校児童指導要録、中学校生徒指導要録並びに盲学校、聾学校及び養護学校の小学部児童指導要録及び中学部生徒指導要録の改訂について」に基づき、岡山市立学校管理規則(昭和38年市教委規則第6号)において定められている。
具体的な記載事項は、「学籍に関する記録」として、児童の氏名・生年月日・性別・現住所、保護者の氏名・現住所、入学前の経歴、入学・編入学等の年月日、転入学の年月日、転学・退学等の年月日、卒業の年月日、進学先、各学年における学級・整理番号・校長の氏名印・担任の氏名印、学校名とその所在地、「指導に関する記録」として、児童氏名、学校名、各学年における学級・整理番号、各学年の各教科についての学習の記録、各学年における行動の記録・指導上参考となる諸事項、各学年の出欠の記録とその備考となっている。
なお、「出欠の記録」の「備考欄」については、前記初等中等教育局長通知によれば、「出席停止・忌引等の日数」に関する特記事項、欠席理由の主なもの、遅刻、早退等の状況、転入学した児童についての前に在学していた学校における出欠の概要等を記入することとされている。
(2)本件請求に係る文書及びそこに記載された個人情報は、上記通知及び規則に基づき実施機関により作成・記載されたものであり、申立人の第2学年から第5学年までの欠席理由が記載されている。
実施機関の説明によれば、欠席理由の記載は、児童本人の病気による欠席(「病欠」)以外は事故による欠席(「事故欠」)として記載し、後者の「事故欠」については、不登校や家出など児童本人の原因によるもの(「本人の事情」)以外は「家庭の事情」として分類・記載されることになっている(もっとも、「事故欠」の詳しい理由は必ず記載しなければならないわけではなく、記載者である担任の配慮(裁量)で書かない場合もある)が、本件文書では第3学年当時の欠席理由として「事故欠(家庭の事情)」という記載がなされ、その「(家庭の事情)」の箇所が訂正請求の対象とされたのである。
3 調査及び審議の経緯と訂正の要否についての判断
(1)当審査会は、本件請求に係る個人情報の真否、すなわち、申立人の第3学年時の長期欠席(「事故欠」)の理由が指導要録記載のとおりの「家庭の事情」によるものかどうかについて調査すべく、申立人及び実施機関の双方から意見書を求め、双方の意見陳述を行った(さらに、申立人が第3学年当時の担任及び校長(両者とも既に定年退職している)に対しても、岡山市情報公開条例(平成12年市条例第33号)第23条第4項に基づき、「知っている事実」の陳述(文書)を求めたが協力を得られなかった)。
しかし、「事故欠」に分類される長期欠席があった事実は双方が一致して認める所であるが、その理由が「家庭の事情」によるものか(申立人の主張するような「学校の事情」によるものか)どうかについては双方から対立する意見及び事実が提出されたにとどまり、この点につき最終的な判断を下すために必要かつ十分な根拠を得ることは出来なかった。
これ以上の調査、すなわち、真否確定のための事実認定を徹底して行おうとすれば、関係者すべてから事情聴取するなど裁判所の法廷手続と同様の証人調べの手続が必要となるが、それは、訂正請求の行政不服審査にふさわしい手続とは考えられない。
(2)かくして当審査会は、本件請求に係る個人情報の真否につき調査・認定した事実に基づき確定することはできなかったが、双方の意見書及び意見陳述と提出された関連文書に基づき、訂正の要否について審議・検討した結果、以下の判断に達した。
ア 本件文書のような学校の生活事実、とりわけ、児童の事故に関する記載は、正確・客観的であることを旨とすべきであるが、事故事実の認識と評価が切り離しがたく結びついており、事実関係についての確定的な調査・認定は非常に困難である。
イ しかも、遺憾なことに、最近では、こうした学校における事故事実をめぐって学校の校長・教師側と児童・両親の側との間に認識や評価の違いや対立が生じ、しばしば学校事故をめぐる紛争になっている。
ウ こうした違い・対立が生じる背景ないし要因には、事故事実についての認識と評価が結びつき交錯しているということだけではなく、本件文書のような事故事実についての記載がもっぱら学校側の認識と評価に基づいてなされ、学校内事故について利害を持つ当事者である児童とその両親の側の認識・評価とそれに基づく主張を反映させる仕組みが整備されていないという事情がある。
エ したがって、本件のような学校・教師と児童・両親との間に認識や評価の相違・対立が生じうるような学校生活に関する事実、とりわけ、事故事実について学校側が作成・記載した文書にあっては、当事者である児童・両親の側からの主張(認識・評価)をも組み入れ、反映させることによってはじめて「事実の記載の誤りがある」と批判されることのない公文書になるものと考えられる。
本件文書についても、学校生活における児童の事故事実という記載された個人情報の特殊性を考慮して、申立人の訂正主張文書を、実施機関の側の文書とともに原本に資料として添付することでもって、条例第12条にいう「訂正」措置とすることが相当であると判断される。
4 結論
以上の理由により、当審査会は、「第1.審査会の結論」のとおり判断するものである。

第5.審査会の処理経過
当審査会の処理経過は次のとおりである。

審査会の処理経過
年月日 処理内容
平成13年3月23日 諮問書の収受
平成13年5月21日 実施機関の意見書の収受
平成13年6月12日 申立人の意見書の収受
平成13年6月19日 審議
平成13年7月24日 実施機関口頭意見陳述及び審議
平成13年9月4日 申立人口頭意見陳述及び審議
平成13年10月23日 審議
平成13年12月19日 答申

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