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答申第5号

[2010年3月3日]

ID:17118

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岡情審査第7号
平成8年12月25日

岡山市教育委員会 様

岡山市情報公開及び個人情報保護審査会
会長 山口 和秀

岡山市情報公開及び個人情報保護に関する条例第25条の規定に基づく諮問について(答申)

平成8年5月16日付け岡市教委指第143号による下記の諮問について次のとおり答申いたします。


「岡山市立小・中学校からの体罰に関する報告書(平成5年度及び6年度分)」の開示請求に対して,非開示とした決定に対する異議申立てについての諮問

第1 審査会の結論
岡山市立小・中学校からの体罰に関する報告書(平成5年度及び6年度分)として岡山市教育委員会(以下「実施機関」という。)が管理する「教師による体罰について(報告)」と題する文書(以下「第1報告書」という。)及び「生徒に対する体罰について(報告)」と題する文書(以下「第2報告書」という。)中,
(1)文書番号及び報告年月日
(2)学校名,学校長氏名,学校の電話番号,校章及び校印
(3)事故発生の年月日(曜日を含む。)及び場所並びに事故の経緯の年月日(曜日を含む。)
(4)事故発生場所を特定するための位置図面,校地・校舎配置図及び練習中の指導者・部員の位置関係図
(5)当事者たる生徒の氏名,生年月日,年齢及び所属学年学級
(6)当事者たる生徒の保護者の氏名,住所,電話番号及び役職
(7)当事者たる教諭の氏名,年齢,担当学年学級,担当科目及び役職名
(8)当事者たる生徒及び教諭の所属するクラブ名及び部名並びに競技名及び競技に使用される用具名
(9)当事者たる生徒の病名並びにその診断に係る病院名,病院の所在地,医師氏名,医師印,付記事項及び診察年月日
(10)当事者たる生徒以外の生徒の氏名
(11)当事者たる教諭以外の教諭の氏名,年齢,担任学年学級,担当科目及び役職名並びに教頭氏名を除いて開示することが妥当である。
第2 異議申立ての趣旨
本件異議申立ての趣旨は,異議申立人が平成8年2月6日付けで行った岡山市情報公開及び個人情報保護に関する条例(昭和62年市条例第43号。以下「本件条例」という。)第6条に基づく第1報告書及び第2報告書の開示請求に対し,実施機関が,平成8年3月22日付けでした非開示決定処分(以下「本件処分」)の取消しを求めるものである。
第3 争点並びに争点に対する実施機関及び異議申立人の主張
1 本件条例第7条第1号該当性について
実施機関及び異議申立人が,異議申立理由書,弁明書,反論書及び陳述書並びに口頭意見陳述で陳述している争点及び主張は次のとおりである。
(1)実施機関の主張
第1報告書及び第2報告書(以下一括して「本件公文書」という。)に記載されている情報は,次のとおり,すべて「個人情報」に該当する。
ア 本件公文書は,体罰発生の状況及びその後の経過についての生徒,保護者,教諭等の当事者に関する情報,発言内容,学校長の意見や対応等を取りまとめたものである。本件公文書中には,個人名等特定の個人が識別される情報が存在するが,これらの情報は,本件条例第7条第1号の「個人情報」に該当し,かつ,その作成された目的等から,同号ただし書のいずれにも該当しない。
イ また,本件条例第2条第2号の「特定の個人が識別され,又は識別され得る」とは,いくつかの情報を総合することにより,当該個人が識別され得るものも含まれる。異議申立人の主張するように「関係教諭・関係生徒の住所・氏名・年齢・所属学年学級」を非開示としても,当該非開示部分以外の事件の経過等が開示された場合には,当該開示部分とマスメディア等の関連情報を総合することにより,「関係教諭・関係生徒の住所・氏名・年齢・所属学年学級」が識別され得ることとなる。
ウ さらに,本件公文書を一部でも開示すれば,すでに処分を受けた教諭が再び社会的非難等を受け,新たな不利益を被って人権問題にもなりかねないおそれがある。
エ したがって,本件公文書に関する情報は,「個人情報」としてすべて非開示とされるべきである。
(2)異議申立人の主張
本件公文書記載の情報は,次のとおり,体罰の当事者たる教諭(以下「関係教諭」という。)及び体罰の当事者たる生徒(以下「関係生徒」という。)が識別され,又は識別され得る情報を除いた情報は「個人情報」に該当しない。
ア 本件条例第7条第1号は,公文書の開示を求める権利とプライバシーの権利保護を調整する規定であるが,プライバシーの権利保護の必要性がある場合に限り,公文書は非開示とされるべきである。そうしてみると,「特定の個人が識別され,又は識別され得る」ものとして,保護の必要性があるのは,客観的にみて,個人を特定するのに必要な情報であり,関係教諭及び関係生徒の住所,氏名,年齢及び所属学年学級がこれに該当する。
イ したがって,その余の事情聴取内容及び事件の経過に関する情報は,事件の事実内容を記載したものであって,特定の個人が「識別され,又は識別され得る」情報に該当するものではない。
2 本件条例第7条第3号該当性について
(1)実施機関の主張
本件公文書記載の情報は,「意思形成過程情報」であって,次のとおり,本件条例第7条3号に該当する。
ア 本件条例第7条第3号は,「意思形成過程情報」を「市の事務事業に関し,市内部又は,市と国若しくは他の地方公共団体との間における審議,検討,調査研究等の意思形成過程において実施機関が作成し,又は取得した情報」と定議しているところ,本件公文書は,教育委員会が学校を指導する方針を決定するための重要な資料であるから「意思形成過程情報」に該当する。
イ さらに,本件公文書は,通常,公開を前提に作成されたものではないから,開示により当該内容が明らかになれば,報告した学校と実施機関との信頼関係が崩れたり,将来,学校長から公正な報告が得られなくなるおそれがあり,その結果,実施機関が将来にわたる学校指導事務に係る公正かつ適切な意思形成をなすのに支障を生ずる。
(2)異議申立人の主張
本件公文書記載の情報は,次のとおり,本件条例第7条3号に該当しない。
ア 本件公文書記載の情報から,関係教諭及び関係生徒の住所,氏名,年齢,所属学年学級といった情報が除かれれば,関係教諭及び関係生徒の匿名性が十分保たれるから,開示によって将来実施機関に詳細かつ積極的な報告がなされなくなるとの可能性はない。
イ したがって,本件公文書中,関係教諭及び関係生徒が識別され,又は識別され得る情報を除いたその余の情報を開示することによって,「公正かつ適切な意思形成に支障を生ずる」ことになるとは認められない。
第4 審査会の認定した事実
実施機関及び異議申立人の間において争いのない事実,当審査会において顕著な事実及び当審査会が調査した結果を総合すると,次の事実が認められる。
(1)実施機関は,岡山市立学校管理規則(昭和38年市教育委員会規則第6号)第12条第4項に基づき,本件公文書を取得し,及び管理していること。
(2)当該公開対象となった公文書は,第1報告書及び第2報告書の2件の公文書であること。
(3)第1報告書に記載されている情報は次のとおりであること。
ア 学校名及び学校長氏名
イ 事故発生等の日時及び場所
ウ 当事者及び関係者等の氏名,年齢,住所,学年及び学級等
エ 事故発生時の状況及び経過等
オ 学校の対応
カ 学校長所見
キ 医師の診断内容
ク その他
(4)第2報告書に記載されている情報は次のとおりであること。なお,第2報告書は,4件の体罰等に関する事件が報告されたものである。
ア 学校名及び学校長氏名
イ 事故発生等の日時及び場所
ウ 当事者及び関係者等の氏名,年齢,住所,学年及び学級等
エ 事故発生時の状況及び経過等
オ 学校の対応
カ 学校長所見
キ その他
(5)異議申立人は,平成8年2月6日付け公文書開示請求書で,実施機関に対し,本件条例第6条の規定に基づき,本件公文書の開示を請求したこと。
(6)この開示請求に対して実施機関は,本件条例第7条第1号及び第3号を理由として平成8年3月22日付で本件処分を行ったこと。
第5 審査会の判断
審査会の認定した事実に基づき,本件公文書に記載されている情報が,本件条例第7条第1号及び第3号に該当するかどうか審査し,及び判断する。
1 本件条例第7条第1号該当性について
(1)本件条例第7条第1号は,開示しないことができる公文書として個人情報が記載されている公文書(ただし,同号ただし書ア,イ及びウに掲げる情報を除く。)を掲げ,本件条例第2条第2号は,個人情報を,「特定の個人が識別され,又は識別され得るものをいう。ただし,事業を営む個人の当該事業に関する情報を除く。」と定議している。
このうち,「特定の個人が識別される」情報とは,氏名等のように当該情報だけで,直接,特定の個人が認識される情報であり,「識別され得る」情報とは,他の情報と照らし合わせることによって,特定の個人に関する情報であると認識し得る情報をいうものである。
(2)本件条例が,個人のプライバシーに関する情報を直接,非開示事由として規定していないのは,市が保有する個々の具体的な情報がプライバシー情報に該当するか否かはケース・バイ・ケースで明確な判定が困難であると同時にプライバシーは一度侵害されると,金銭賠償等では回復しがたいものであることに鑑み,プライバシーに関する情報であると明らかに判断できる場合はもとより,プライバシーであると推測できる場合を含めて,「特定の個人が識別され,又は識別され得る」情報を原則として非開示としたものと解することができる。
(3)また,一方で,本件条例は,個人のプライバシーを最大限に保護すると同時に,本件条例の原則公開の理念との調和をはかるため,開示しても明らかにプライバシーの侵害とならない類型の情報(本件条例第7条第1号ただし書ア及びイ)や公益上開示が強く求められる類型の情報(本件条例第7条第1号ただし書ウ)を例外的に開示できるとしているものである。
(4)これを本件公文書についてみると,本件公文書記載の情報は主として関係教諭及び関係生徒に関するものであるから,関係教諭及び関係生徒に関する情報(氏名,年齢,生年月日,担任及び所属学年学級,校名,事件発生の日時,所属クラブ,所属部等)は,関係教諭及び関係生徒が「識別され,又は識別され得る」個人に関する情報であることはもちろんであるが,個人としての関係教諭以外の教諭,関係生徒以外の生徒,保護者,校長,担当医師が「識別され,又は識別され得る」情報があれば,その情報も当該個人に関する「個人情報」と解すべきである。
(5)したがって,本件公文書記載の情報中,前記(3)記載の「個人情報」以外の情報である事実の経過,生徒に対する一般的指導方針等の情報は,本件条例第7条第1号に該当しない。
(6)なお,実施機関は,本件全文書記載の情報が一部でも開示されればすでに実施機関等により処分を受け,また,新聞報道等により社会的制裁を受けた教諭が,再び社会的非難を受ける危険性がある旨主張する。
しかしながら,関係教諭に関する情報を「個人情報」として非開示とすることにより,実施機関の主張する危険性は回避され得るから,その主張には理由がない。
(7)ところで,異議申立人は,口頭意見陳述のなかで,関係教諭に関する情報は公務の執行に係る情報であり,当該情報は,本件条例第7条第1号を理由として非開示とすることはできないとする新たな主張(異議申立理由書及び反論書のなかでは主張されていない。)があったので,この点について付言しておく。
ア 本件公文書記載の情報中,関係教諭の氏名等当該教諭個人が「識別され,又は識別され得る」情報として、「個人情報」であることは前記のとおりであるが,当該関係教諭に関する情報は,関係生徒が「識別され得る」情報でもある。
イ したがって,仮に,異議申立人の主張のごとく公務執行に当たる関係教諭の情報が,当該教諭の「個人情報」ではないとしても,当該教諭の情報は,関係生徒が「識別され得る」関係生徒の「個人情報」として,非開示事由となるものである。
2 本件条例第7条第3号該当性について
(1)本件条例第7条第3号は,開示しないことができる文書として「市の事務事業に関し,市内部又は市と国若しくは他の地方公共団体との間における審議検討,調査研究等の意思形成過程において,実施機関が作成し,又は取得した情報であって,開示することにより,当該事務事業又は将来の同種の事務事業に係る公正かつ適切な意思形成に支障を生ずると認められるもの」に該当する情報が記載されている公文書を掲げている。
(2)そこで,本件公文書に記載された情報が本件条例7条第3号に該当するか否かを検討する。
本件条例第7条第3号は,市の事務事業に係る意思形成過程における情報について,開示することにより,事務事業に係る意思形成に支障が生ずることを防止する観点から非開示事由として規定したものであり,その要件は,「意思形成過程情報」を規定した前段と事務事業の公正かつ適切な意思形成への支障を規定した後段要件に分かれる。
(3)まず,本件公文書が前段の要件に該当するか否かを検討する。
ア 本件条例第7条第3号にいう「意思形成過程情報」とは,実施機関において実施する事務事業の最終的な意思決定が終了するまでの間における審議,検討,調査等に関する情報のほか,文書等による照会,回答,報告等において,実施機関が作成し,又は取得した情報と解することができる。
イ 本件公文書についてみると,本件公文書は,岡山市立学校管理規則第12条第4項により,(1)学校において集団的疾病が起こった場合,(2)職員又は児童生徒に事故が起こった場合,(3)その他重要又は異例の事件が起こった場合に,当該学校長が実施機関に当該発生事実を報告する目的で作成した公文書であることが認められる。
ウ さらに,本件公文書の方途は,実施機関が,当該報告に係る事件・事故の解決に向けての方策を決定し,あるいは,今後同種の事件・事故の防止等のため学校に対する指導事務の方針を決定するために用いられる資料であると解される。
エ したがって,本件公文書は,「市の事務事業に関し,市内部又は市と国若しくは他の地方公共団体との間における審議,検討,調査研究等の意思形成過程において,実施機関が作成し,又取得した情報」を記載したものであるから,「意思形成過程情報」に該当する。
(4)次に本件公文書が後段の要件に該当するかについて検討する。
ア 「意思形成過程情報」であることを本件条例の非開示事由とした趣旨は,意思形成過程に関する情報の中には,当該情報が開示されることにより,(1)未成熟,不正確な情報であるため,開示することにより市民に不正確な理解を与えたり,誤解による混乱を招く,(2)行政内部における自由な意見交換が阻害される,(3)一部の利用者に不当な利益を与える,(4)外部からの信頼,協力関係等に基づく任意の資料提供等が得られなくなる,「おそれ」のある情報であり,このような情報は,当該意思形成過程情報を公開する利益より,当該情報を非開示とすることで保護されるべき利益のほうが優先するとして,非開示事由としたものと解される。
イ そして,後段要件の「意思形成に支障を生ずる」というためには本件条例が,「市民の公文書の公開を求める権利を保障し」,「市民の市政への参加を推進し,市政に対する市民の理解と信頼の増進を図り,もってより開かれた市政の実現に寄与することを目的とする」(本件条例第1条),「実施機関は,公文書の開示を求める権利が保障されるよう努めなければならない」(本件条例第3条)とし,公文書については原則公開とする立場をとっていることに照らし,単に実施機関の主観において,「意思形成に支障を生ずると認められる」だけでは足りず,そのような危険が具体的に存在することが客観的に明白であることを要すると解すべきである。
ウ こうした本件条例の目的は,開示請求の対象となる公文書が教育行政における分野のものであっても,その運用解釈にあたって尊重されなければならないことに変わりはないのである。従来,社会的問題とされる事件が教育現場の中だけで,秘密裏に処理されてきたことが,教育問題の解決を遅らせてきたという事実を思うとき,教育行政に関わる情報は,むしろ,本件条例の目的に基づき,極力開示されることにより,住民と教育行政との信頼関係は一層増すものであると考える。
エ ところで,実施機関は,本件公文書が公開されると,学校と実施機関の信頼関係が崩れるとか,将来,学校長が真実を報告しなくなり,その結果,実施機関が学校指導事務に係る公正かつ適切な意思形成に支障を生ずる旨主張する。
オ しかしながら,なぜ「個人情報」以外の情報についても,当該開示によって,学校長が真実の報告をしない可能性があるのか,なぜ学校と教育委員会との間の信頼関係が崩れるのかといった点についての具体的説明は全くない。
(5)以上のとおりであるから,本件公文書記載の情報中「個人情報」以外の情報は本件 条例第7条第3号に該当しないと解すべきである。
第7 審査会の処理経過
当審査会における処理経過は次のとおりである。

審査会の処理経過
年月日 処理内容
平成8年5月16日 諮問の収受
平成8年7月25日 実施機関の弁明書の収受
平成8年8月19日 異議申立人からの反論書の収受
平成8年9月17日 第1回審査会(審議)
平成8年10月4日 実施機関から陳述書(再弁明書)の収受
平成8年10月15日 第2回審査会(異議申立人及び実施機関の口頭意見陳述並びに審議)
平成8年11月12日 第3回審査会(審議)
平成8年12月19日 第4回審査会(答申案の検討)
平成8年12月25日 答申

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