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答申第4号

[2010年3月3日]

ID:17117

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岡情審査第15号
平成6年11月14日

岡山市長 安宅 敬祐 様

岡山市情報公開及び個人情報保護審査会
会長職務代理者 達野 克己

異議申立てに係る諮問について(答申)

平成6年3月10日付け岡総第196号で諮問のあった下記事案について,別紙のとおり答申します。


「岡山市〇〇〇町×××番の土地鑑定書」の開示請求に対して,非開示とした決定に対する異議申立てについての諮問

1 審査会の結論
本件異議申立てに係る岡山市長(以下「実施機関」という。)の行った非関示とした決定は,妥当である。
2 異議申立ての経過
(1)平成5年12月13日,異議申立人は,岡山市情報公開及び個人情報保護に関する条例(以下「条例」という。)第6条の規定に基づき実施機関に対し,「岡山市〇〇〇町×××番の土地鑑定書」(以下「本件公文書」という。)の開示を請求した。
(2)平成5年12月24日,実施機関は,本件公文書の開示請求に対して本件公文書は条例第7条第1号に規定する個人の所得に関する情報であること,条例第7条第4号に規定する今後の用地買収交渉に支障をきたすおそれのある情報であることの理由で開示することができないとの決定を行い,異議申立人に通知した。
(3)平成6年2月22日,異議申立人は,条例第25条第1項の規定により異議申立てを行った。
3 異議申立人の主張要旨
異議申立人が異議申立書,反論書及び口頭による意見の陳述で主張している異議申立ての趣旨及び主たる理由は,次のとおりである。
(1)異議申立ての趣旨
異議申立人の本件公文書の開示請求に対して,実施機関が行った非開示決定を取消し,本件公文書の開示を求める。
(2)異議申立ての理由
ア 個人情報に該当しないことについて
もともと土地所有者に関して言えば,その社会的な性格に鑑み,土地登記簿は万人に公開されており,その評価についても相続税路線価はもとより,一部が公開されている路線価のように,特定土地の価格を示さないにしても当該土地のそれぞれの行政目的に即したおおよその価格や,基準地価格のように特定の地点を示した評価さえも公表されているのであるから,土地の権利関係やその価格については,個人情報としてのプライバシー性は比較的希薄であるというべきである。
また,本件公文書は,岡山市が道路事業を進めて行くうえで,必要な資料とするため,不動産鑑定士に委託して行われた評価であって,それが当然に固定資産税課税台帳に記載される土地の価格となるものではないから,その評価がなされたからといって当該土地所有者の利害に直接係わるものではない。
つまり,本件公文書に含まれる土地評価は,個人の財産状態に関する情報といっても,その個人情報としての価値を個人の心身,生活,経歴,成績,資産,債務の具体的内容(個人の収入,所得,税額,滞納額等を含む。)などに関する個人情報と同列において考えることは,相当でないというべきである。
イ 開示を求める公益性について
本件公文書は,資格を有する不動産鑑定士が作成した土地鑑定書である。したがって,その土地評価は不当な不動産鑑定評価であってはならないはずである。しかるに,土地買収価格は,周辺の実勢価格の2倍と不当に高く,故意に又は相当な注意を怠り,不当な不動産鑑定評価がなされたのではないかとの疑いが強くもたれるものである。
また,本件公文書の開示は,不動産の鑑定評価に関する法律第42条に基づき,不当な鑑定評価に対する措置の要求をするうえにおいて必要な資料を求めるものであり,この点においても開示を求める公益性は著しく高いものである。
ウ 今後の用地買収交渉に支障をきたすおそれのないことについて
(ア)公有地の拡大の推進に関する法律,地価公示法などで,公共事業の用に供する土地の取得価格の算定の準則が定められており,その用地買収は公示価格を基準として決定されるべきものであり,これを著しく越える合理性のない価格による取引は,違法な取引で許されない。
(イ)公共事業における用地取得交渉の過程又は用地取得後において買収価格が公表されている事例もあり,本件公文書を開示することが今後の用地取得交渉の障害になるとは考えられない。
4 実施機関の主張要旨
実施機関の弁明書及び口頭による意見の陳述を総合すると,本件公文書を非開示とした理由は,概ね次のとおりである。
(1)本件公文書は,条例第7条第1号に規定する個人情報に該当する。
本件公文書は,岡山市が道路事業を進めていくうえで,土地所有者との用地取得交渉の資料とするため作成されたものである。本件公文書では所有者名等が記載されていることから,特定の個人が識別され,かつ,個人の資産に関する情報が記載されている。また,特定の個人の資産に係わるある一定の評価及び取引事例も記載されている。
したがって,条例第7条第1号本文に該当し,また,ただし書には該当しない。
(2)本件公文書は,条例第7条第4号に規定する事務事業執行情報に該当する。
本件公文書を開示することは,次のようなおそれがあることから,条例第7条第4号中「当該事務事業又は将来の同種の事務事業の公正又は円滑な執行に支障を生ずるおそれのあるもの」に該当する。
ア 岡山市における公有財産の買収価格は,不動産鑑定評価書を基礎として,岡山市公有財産管理委員会が承認することとしており,鑑定評価の単価と買収単価の違いがでた場合,差額請求が起きたり訴訟を誘発する等,買収契約に支障をきたす。また,今後の被買収者の中に市に対する不信が起き,買収交渉を大変困難にする。
イ 鑑定評価と当事者の自己判断(主観的評価)との差が出,説得に大変な日数と労力を要し,事業の効率的な遂行を妨げ,施行期間が長期におよび,早く契約した者並びに一般市民にも多大な迷惑をかけることは必至である。
ウ 一時期に買収契約する場合(事業の性格にもよる。)単価を関係者に公表することもあるが,継続事業の場合,地価の変動等により,鑑定書の公開は買収交渉を困難にする。
エ 不動産鑑定書の中には,取引事例が記載されており,これの公開は,その関係者に迷惑がかかることと,今後の事例収集を困難にする。
オ 不動産鑑定士の名前が公開されることにより,地権者から鑑定士に対し,注文・抗議が懸念され,公正な鑑定を妨げることとなる。
5 審査会の判断及び理由
(1)本件公文書の内容と性格
岡山市においては,公有財産の取得及び処分のため,土地価格を定めようとするときは,助役,財政局長等を構成員とする岡山市公有財産管理委員会の承認を経ることとされており,この公有財産管理委員会が買収価格を定める場合において不動産鑑定士による鑑定評価を基礎とすることを通例としている。
本件公文書は,岡山市が平成2年度から平成8年度までを事業期間とする市道泉田福成線道路新設改良事業を行ううえで,用地買収を行うに当たり,買収価格の基準とするため,不動産鑑定士に委託し,作成した,岡山市〇〇〇町×××番の土地に係る不動産鑑定評価書である。
本件公文書には次のような内容が記載されている。
ア 対象土地の所在・地番,現況地目,公薄地目,数量(平方メートル),鑑定評価額,公薄上の所有者名等
イ 鑑定評価額決定の理由(要旨)
ウ 取引事例等土地価格資料一覧表
エ 収益事例の概略及び収益価格査定表
オ 試算価格算定表(標準画地)
カ 対象不動産現況写真,対象不動産所在図等
(2)判断に当たっての考え方
異議申立人は,本件公文書に係る市道泉田福成線道路新設改良事業及び市内福田地区に併設する〇〇〇緑道事業についての土地買収価格が,周辺の実勢価格の2倍と不当に高く,故意又は相当な注意を怠り,不当な不動産鑑定評価がなされた疑いが強いこと及び不当な鑑定評価に対する措置を要求するうえからも,その資料としての本件公文書の開示を求める公益性が強いと主張する。このことは条例の制定目的である「市民の市政への参加を推進し,市政に対する市民の理解と信頼の増進を図り,もってより開かれた市政の実現に寄与する」ためにも十分尊重されなければならないことである。
しかし,本件公文書を開示するかどうかの具体的判断は,条例の制定目的,趣旨に沿ったうえで,各条項によってなされるべきであると考え,以下条例第7条の該当性について考える。
(3)条例第7条第1号該当性について
本件公文書に記載された当該地番にかかる所有者名,鑑定評価額,取引事例等の記録は,特定の個人が識別され,又は識別され得ることから,条例第2条第2号に規定する個人情報に該当するが,個人のプライバシーを離れた土地の客観的評価という一面も否定できない。したがって,条例第7条第1号のみをもって本件公文書を非開示とすることは相当ではない。
(4)条例第7条第4号該当性について
実施機関は,本件公文書を開示することにより,当該事務事業又は将来の同種の事務事業の公正又は円滑な執行に支障を生ずるおそれがあると主張し,一方異議申立人は,公共事業における用地取得交渉の過程又は用地取得後において不動産鑑定評価額は公表されるべきであり。そのことが今後の用地取得交渉の障害になるとは考えられないと主張する。
本事業における公共用地の取得は,不動産鑑定士の評価した鑑定評価額を基礎として,岡山市公有財産管理委員会の承認した価格をもって所有者と買収の交渉をしている。したがって,不動産鑑定評価額が買収交渉の過程において公開されると
ア 地権者との買収交渉を困難にすること。
イ 不動産鑑定士による評価額そのものが争点になること。
ウ 不動産鑑定評価額と買収価格に差が生じた場合,市に対して不信感を生じる。
等,今後の当該事業の公正又は円滑な執行に支障を生ずるおそれがあり,条例第7条第4号に該当すると考える。
(5)以上のとおりであるから,当審査会としては,本件公文書の開示については,「1 審査会の結論」のとおり判断するものとする。

審査会の処理経過
年月日 処理内容
平成6年3月10日 諮問
平成6年3月25日 実施機関の弁明書の受理
平成6年5月2日 異議申立人の反論書の受理
平成6年8月18日 第1回審査会(実施機関から意見聴取,審議)
平成6年9月1日 第2回審査会(審議)
平成6年9月19日 第3回審査会(実施機関及び異議申立人から意見聴取,審議)
平成6年10月6日 第4回審査会(審議)
平成6年11月11日 第5回審査会(答申案の協議)
平成6年11月14日 答申

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