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答申第6号

[2010年3月3日]

ID:17119

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岡情第1号
平成10年4月24日

岡山市議会
議長 花岡 薫 様

岡山市情報公開及び個人情報保護審査会
会長 山口 和秀

岡山市情報公開及び個人情報保護に関する条例第25条の規定に基づく諮問について(答申)

平成9年6月17日付け岡市議第533号による下記の諮問について次のとおり答申いたします。

「平成5年度,6年度及び7年度岡山市市議会の交際費,食糧費に関する書類の開示請求」に対して,一部非開示とした決定に対する異議申立てについての諮問

答申
第1 審査会の結論
平成5年度,6年度及び7年度岡山市議会の交際費,食糧費に関する書類(支出負担行為決議書,支出命令書,精算書,交際費の支出に係る金銭出納簿及び経費支出の起案書並びに見積書,請求書,支払証明書その他関係書類)中,交際費の支出に係る金銭出納簿に記載された支払先の個人の氏名(団体名中に使用される個人名は含まない。)を除いて開示するべきである。

第2 異議申立ての趣旨
本件異議申立ての趣旨は,異議申立人が平成8年12月13月付けで行った岡山市情報公開及び個人情報保護に関する条例(昭和62年市条例第43号。以下「本件条例」という。)第6条に基づく平成5年度,6年度及び7年度岡山市議会の交際費,食糧費に関する書類(以下一括して「本件公文書」という。)の開示請求に対し,岡山市議会(以下「実施機関」という。)が,平成9年2月10日付けでなした一部開示決定処分(以下「本件処分」)の取消しを求めるものである。

第3 争点並びに争点に対する実施機関及び異議申立人の主張
争点並びに各争点に対し,実施機関及び異議申立人が,異議申立理由書,弁明書,反論書及び陳述書並びに口頭意見陳述で主張している点は次のとおりである。
1 本件条例第7条第1号該当性について(争点1)
(1)実施機関の主張
本件公文書に記載されている情報のうち特定の個人が識別され,又は識別され得る情報は,すべて「個人情報」に該当する。
ア 食糧費について
(ア)食糧費の支出に係る本件公文書中,当該公務員に関わる省庁名及び役職名は,判例等により,非開示事由としての個人情報には該当しないと判断しているが,特定の個人の氏名は,単なる個人情報ではなくプライバシー情報である。
(イ)したがって,食糧費の支出に係る本件公文書中,特定の個人の氏名は,たとえ公務員に係るものであっても,「個人情報」として非開示としなければならない。
イ 交際費について
(ア)本件条例第2条第2号には,その対象となる個人に関する情報とは,「特定の個人が識別され,又は識別されうるもの」をいうと定義し,本件条例第7条第1号は,いわゆるプライバシー情報に限らず,プライバシー情報を包含する個人情報をも非開示としている。
(イ)交際先の支出に係る本件公文書中,交際相手を個人として識別しうる情報は,交際の相手方の全く私的な情報であって,本人の意思に反して公開されるべきものではなく,「個人情報」として保護されるべきものである。
(ウ)また,花環代等のように,その支出内容が外部等に披露される場合があるが,その場合も,参加者,参列者等のごく一部に限られるものであって一般に公表されているものとはいえないから,このような支出原因においても,なお当該交際費の支出に関する情報は「個人情報」として保護されるべきである。
(エ)以上のとおりであるから,交際費の支出に係る本件公文書中,個人の氏名を含む「個人情報」は,非開示とされるべきである。
(2)異議申立人の主張
実施機関が個人情報に該当するとして非開示とした情報は,次のとおり,本件条例第7条第1号にいう非開示事由としての個人情報には該当しない。
ア 本件条例の趣旨に従えば,本件条例第7条第1号は公文書の開示を求める権利とプライバシーの権利保護の調整規定であり,プライバシーの権利保護のため必要な限りでのみ公文書を非開示できるものとして解釈されなければならず,プライバシーの権利に影響を及ぼさない情報についてまで非公開とすることはできないものである。
イ したがって,本件条例第7条第1号に規定する個人情報に該当するか否かは,終局的には,本件公文書記載の情報を開示することによってプライバシーを侵害するかどうかという観点から限定的に解釈すべきである。
ウ 本件において,交際費及び食糧費に係る接待については,市議会の公務の一環として支出されたものであるから,対象となった相手方にとっても純然たる私的行為ではない。したがって,本件公文書中,相手方の氏名に関する情報は,プライバシーを侵害する種類の情報とはいえず,単に相手方個人の氏名が記載されていることのみをもって非開示とすることはできない。
エ また,葬儀における供花は葬儀参列者の目に触れる場所に飾られるものであり,一般に公開されることがもともと予定されているし,葬儀における香料,結婚式における祝い金などについても,多数の者が出席している席上公表されるもので,なんら秘密にされているものではないから,単に相手方の個人の氏名が記載されていることをもって非開示であるとすることはできない。
2 本件条例第7条第4号該当性について(争点2)
(1)実施機関の主張
本件公文書記載の情報中,支出先である特定の個人・団体を識別しうる情報は、事務事業執行情報であって,次のとおり,本件条例第7条第4号に該当する。
ア お供え,餞別,お見舞い,お祝いについて
(ア)氏名を公表することは,金額までも公表されることにつながり,より,相手方に反感を持たせる結果となる。一方,実施機関はそういうことをおそれるあまり交際費の支出を画一的に事務処理することにもなる。
(イ)このため,相手方との間の信頼関係の維持増進をはかるべき,交際事務の本来の目的を達成できず,今後の交際事務の円滑な執行に著しい支障を及ぼすおそれがある。
イ 花環代について
氏名,団体名等を開示することは,相手方との信頼関係,友好関係の維持増進に著しい支障を及ぼすこととなる。
ウ 会費,賛助金,寸志及び贈呈品について
(ア)支払先については政策的な裁量判断により,又は対象者の相対的重要度により適時取捨選択する場合もある。
(イ)したがって,これを公開することによって議長や議会との交際における関係者の相対的重要度が明らかとなり,交際対象者及び交際非対象者に不快,困惑,不審の念を抱かせ,将来の交際事務季適切に実施していくのに支障を生じるおそれがある。
エ 飲食費について
公開することにより,相手方との信頼関係,協力関係を損なうおそれがあり,今後の会議参加を嫌がり,あるいは懇談での率直な意見交換を差し控える等のことが十分考えられ,それによって今後の交際事務の円滑な執行に支障を生ずるおそれがある。
オ 購読料及び広告料について
(ア)実施機関は,交際事務を執行する際に,政策的な裁量判断,あるいは交際における関係者の相対的重要度により交際相手を適時取捨選択してきた場合が多く,これを公開することによって,議長や議会との交際における関係者の相対的重要度が明らかとなり,交際対象者及び交際非対象者に不快,困惑,不信の念を抱かせる。
(イ)また,緊縮予算面からもできるかぎり不要と思われるものを整理してきた今までの状況もあり,全体のバランスを考慮するあまり,経費が増大することも考えられ,今後の交際事務を適切に実施していくことが困難となるおそれがある。
カ 議長賞について
開示することにより,同程度,同趣旨の大会への議長賞交付申請の増大も考えられ,今後の交際事務の執行を適切に実施していくことが困難となるおそれがある。
(2)異議申立人の主張
ア 実施機関は,交際相手の氏名を開示すること自体が儀礼の趣旨に反するものとして,関係者に疑念をいだかせ,相手方に金額などが他人に知られることについての不快,困惑の念を抱かせるおそれがある旨主張している。
(ア)市議会議長が公費である交際費を使用して式典や行事その他各種会合への出席,慶弔事業の処理,懇談,接遇などを行うことは公式の行事あるいはこれに準ずるものであり,交際対象となる相手方にとっても公式行事への参加として名誉に受けとられるのが一般的である。
(イ)仮に相手方の氏名等を公表することにより行政事務事実上支障を生じるおそれがあるというのなら。そのことを実施機関において具体的に主張立証しなければならないが,具体的に主張立証していない。
イ さらに,実施機関は,関係者名が公開されると交際費等の支出内容が当該関係者に知られることとなり,関係者に相対的重要度が明らかになって不都合があると主張する。
(ア)しかし,叙勲を代表例としてランク付けが明らかになる事務は多数存在するがランク付けが明らかになることを理由に相手名を明らかにしないという例は聞かない。
(イ)仮に公開することによってランク付けが明らかになり,不快,困惑,不信等の念を抱く関係者があるとしても,そのことをもって交際事務に支障があるとして特定の個人と団体を識別しうる情報を非開示とすることはできない。

第4 審査会の認定した事実
実施機関及び異議申立人の間において争いのない事実,当審査会において顕著な事実及び当審査会の調査結果を総合すると,次の事実が認められる。
(1)実施機関が,本件公文書を取得し,及び管理していること。
(2)本件公文書の具体的標目とその記載されている主な内容は次のとおりであること。
ア 支出負担行為決議書
支出負担額,支出負担内容,債権者住所氏名等
イ 支出命令書
支出命令金額,支払方法,金融機関名,口座番号,債権者住所氏名,支出内容等
ウ 精算書
精算金額,精算人住所氏名
エ 交際費の支出に係る金銭出納簿
摘要(支出費目及び支出先),支払金額,差引残高
オ 経費支出の起案書
支出金額,支出目的,支出先等
カ その他の関係書類
(ア)見積書
摘要,数量,単価,金額等
(イ)請求書
請求金額,名称,数量,単位,単価,金額等
(ウ)支払証明書
支払金額,支出理由,支払者等
(エ)領収書
領収金額等
(オ)返納通知書
返納者住所及び氏名,返納理由,返納金額等
(カ)納品書
物品名,形状,数量,単価,金額等
(キ)検査報告書
物品名,発注課,検査員職氏名,検査所見等
(ク)物品供給(製造)請書
契約金額,納入場所,納入期限,供給人,品名,数量等
(3)異議申立人は,平成8年12月13日付け公文書開示請求書で,実施機関に対し,本件条例第6条の規定に基づき,本件公文書の開示を請求したこと。
(4)この開示請求に対して実施機関は,本件条例第7条第1号,第2号及び第4号を理由として平成9年2月10日付で本件処分を行ったこと。
(5)本件公文書のうち食糧費の支出に係るものについては,本件条例第7条第1号及び第4号を理由として公務員の氏名を非開示とし,同条2号を理由として債権者の取引銀行名,口座番号及び口座の種別を非開示としていること。
(6)本件公文書のうち,交際費の支出に係るものについては,支出先である個人名,役職・肩書並びに団体名を本件条例第7条第1号及び第4号を理由として非開示としていること。
(7)本件公文書に記載されている債権者の取引銀行名,口座番号及び口座の種別が本件条例第7条第2号に該当する情報であることについては,実施機関及び異議申立人の間で争いがないこと。
(8)食糧費及び交際費の支出に係る情報をはぼ全面的に開示している青森県,宮城県,群馬県及び三重県津市に対し,開示実例によって交際事務を行っていく上でなんらかの支障が生じた否かの照会を当審査会において行ったところ,そのような支障は生じていない旨の回答を得たこと。
(9)実施機関における交際費の支出については,その額や支出先についての明文化された内部基準があるわけではないが,過去の支出事例に照らし,個人,団体の実施機関との関わりの程度を斟酌し,事務担当者が客観的に判断して決定するものであること。

第5 審査会の判断
審査会の認定した事実に基づき,本件公文書に記載されている情報が,本件条例第7条第1号及び第4号に該当するかどうか審査し,及び判断する。
1 本件条例第7条第1号該当性について(争点1)
(1)本件条例第7条第1号は,開示しないことができる公文書として個人情報が記載されている公文書(ただし,同号ただし書ア,イ及びウに掲げる情報を除く。)を掲げ,本件条例第2条第2号は,個人情報を,「特定の個人が識別され,又は識別され得るものをいう。ただし,事業を営む個人の当該事業に関する情報を除く。」と定義している。
このうち,「特定の個人が識別される」情報とは,氏名等のように当該情報だけで,直接,特定の個人が認識される情報であり,「識別され得る」情報とは,役職・肩書きのように他の情報と照らし合わせることによって,特定の個人に関する情報であると認識し得る情報をいうものである。
(2)本件条例が,個人のプライバシーに関する情報を直截に,非開示事由として規定していないのは,各実施機関が保有する個々の具体的な情報がプライバシー情報に該当するか否かはケース・バイ・ケースで明確な判定が困難であると同時にプライバシーは一度侵害されると,金銭賠償等では回復しがたいものであることに鑑み,プライバシーに関する情報であると明らかに判断できる場合はもとより,プライバシーであると容易に推断できない場合を含めて,「特定の個人が識別され,又は識別され得る」情報を原則として非開示としたものと解することができる。
(3)また,一方で,本件条例は,個人のプライバシーを最大限に保護すると同時に,本件条例の原則公開の理念との調和を図るため,開示しても明らかにプライバシーの侵害とならない類型の情報(本件条例第7条第1号ただし書ア及びイ)や公益上開示が強く求められる類型の情報(本件条例第7条第1号ただし書ウ)を例外的に開示できるとしているものである。
(4)この点について異議申立人は,本件条例第7条1号により非開示とされる個人情報は,いわゆるプライバシー権として保護されるべき「個人情報」に限定されるべきであって,当該個人のプライバシーと関係のない情報は,これを開示すべきであると主張する。
(5)情報公開条例を制定している自治体においては,非開示事由としての個人情報について,本件条例のように規定しているものが多数である一方,大阪府公文書公開条例のように個人情報のうち一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められるものを非開示情報とするものもある。後者においては,一般に他人に知られたくないと望むことが正当であるか否かの判断においてプライバシーの概念を考慮に入れる余地があるとしても,本件条例7条1号においては同号ただし書きに該当する場合を除き,本件条例2条第2号にいう個人情報に該当すれば,いわゆるプライバシー情報であるか否かにかかわりなく,これを開示しないことができると定められていると解するべきである。確かに,異議申立人の「非開示事由としての個人情報は個人のプライバシー情報に限るべきだ」との主張は,現在における情報公開制度の果たすべき役割や判例の趨勢を見るとき情報公開制度の趣旨を具現化するという意味で,立法政策上傾聴に値する意見ではあるが,本件条例の解釈としては,独自の見解として採用できないものである。
(6)また,異議申立人は,非開示事由としての個人情報について本件条例のような規定の仕方をしている自治体においても,食糧費や交際費に係る公文書中プライバシー情報に該当しない個人情報については開示しているのであるから,実施機関もそのように運用すべきであると主張する。
(7)なるほど,異議申立人の主張するように,(1)食糧費や交際費の支出に係る公文書中,個人情報については原則として開示している自治体があること,(2)しかも当該自治体と当該情報を開示された個人との間において特段の紛争は起きていないことも当審査会の調査において明らかである。しかしながら,実施機関においては,そのような運用をしているとは認められないのであるから,そうした実施機関の運用の適否はともかく,本件条例第7条第1号に規定する非開示事由としての個人情報に該当するか否かの判断に当たっては,前記(1)ないし(5)の解釈を前提にすべきものである。
(8)なお,行政事務の執行に関する情報の中には,岡山市の公務員に限らず,他の自治体あるいは国等の公務員の職・氏名に係る情報が含まれることが少なくない。しかし,職務執行における当該公務員の情報は,公務遂行に関する情報と不可分の要素であるから,本件条例が行政情報の公開を積極的に推進することにより民主的な開かれた市政の一層の促進を図るものとして制定された趣旨に照らせば,公務員の個人としての行動ないし,生活に関わる意味合いを含むものであるとか,生活の平穏を不当に侵害されるような特段の事情がない限り,本件条例第7条第1号の「個人情報」には該当しないと解すべきである。
(9)以上の観点から本件公文書中,実施機関が個人情報に該当するとして非開示した情報のうち,争いとなっているものについての本件条例第7条第1号該当性について以下判断することとする。
ア 食糧費支出に係る本件公文書記載の公務員の氏名について食糧費支出に係る本件公文書(「経費支出について」と題する起案書及び支出命令書)記載の個人名は,懇談会経費支出理由中に記載されている他都市から実施機関を訪れた公務員の氏名である。懇談会が行政事務事業の執行の一環として行われる以上,前記(8)の理由により,特段の事情のない限り,当該公務員の氏名は本件条例第7条第1号に該当しないから,これを同号に該当するとして非開示とすることはできない。
イ 交際費支出に係る本件公文書記載の個人名について
(ア)交際費の支出に係る本件公文書中,お供え,餞別,お見舞い,お祝い,花環代等の支出及び贈呈先の情報として記載されている個人名は,特定の個人を識別する情報にほかならないから,これを本件条例第7条第1号に該当するとして非開示としたことは正当として是認できる。また,身分上の公務員のものであっても個人の立場で受け取るものであるから,この情報を異に解する必要はない。
(イ)なお,異義申立人は,本条例第7条第1号に定める非開示事由としての個人情報該当性の判断に当たって,公金の支出先であるか否かとか,当該交際費の支出の事実が一般に知りうべきものかどうかとの要素を考慮する必要がある旨主張するが,その必要がなことは,前記(1)ないし(5)に述べたとおりである。
ウ 交際費支出に係る本件公文書記載の役職・肩書について
(ア)本件条例第2条第3号は個人情報を「特定の個人が識別され,又は識別し得るもの」と定め,個人の氏名がこれに該当することは明らかである。しかし,役職・肩書は,他情報と組み合わせることなくして直接に特定の個人が極めて容易に識別できるもの以外,個人情報には該当しないと解すべきである。
(イ)なるほど,役職・肩書の中には,「市長」や「税務部次長」とか「民生局長」のように特定の個人が極めて容易に識別しうる情報はないが,他の情報を組み合わせることにより,特定の個人が識別されうる可能性があるものもある。
(ウ)しかしながら,一部の関係者にしかわからないとか,一般には流通していない他の情報と組み合わせなければ,特定の個人が識別できないような情報まで,個人情報に該当するとすることは,非開示事由としての個人情報の範囲を不当に広げ,本件条例の趣旨を没却することになりかねないものである。
(エ)したがって,交際費の支出に係る本件公文書のうち金銭出納簿中お供え,餞別,お見舞い,お祝い,花環代等の支出及び贈呈先の情報として記載されている役職・肩書で,当該情報単独で特定の個人が極めて容易に識別し得るものは存在しないから,本件公文書記載の役職・肩書は全て開示すべきである。
エ 団体名中の個人名について
団体名の一部を構成する個人の氏名は,当該同体名の一部にすぎないから,本件条例第7条第1号にいう非開示事由としての個人情報には該当しない。
2 本件条例第7条第4号該当性について(争点2)
(1)本件条例第7条第4号は,開示しないことができる文書として「市又は国等が行う行政上の取締まり,犯罪の予防及び捜査,検査等の計画及び実施要領,争訟及び交渉の方針,契約の予定価格,用地買収計画その他の事務事業に関する情報であって,開示することにより,当該事務事業の目的を損なわせるおそれのあるもの,当該事務事業又は将来の同種の事務事業の公正又は円滑な執行に支障を生ずるおそれのあるもの,人の生命,身体又は財産の保護等市民生活の安全及び秩序維持に支障を及ぼすおそれのあるものその他本市の公正又は円滑な運営に支障を及ぼすおそれのあるもの」に該当する情報(以下「事務事業執行情報」という。)が記載されている公文書を掲げている。
(2)事務事業執行情報を本件条例の適用除外事由にした趣旨は,市や国等の行う事務事業に関する情報であっても,情報を開示すると事務事業を実施しても予想どおりの成果が得られなくなり実施目的を失う場合や,不公平が生じることにより関係者の理解が得にくくなったりする等行政の円滑な執行を妨げるおそれがある場合や,開示することで身体や財産の保護に支障をきたす場合があり,そのような場合には,当該情報を公開する利益より当該情報を非公開とすることで守る利益の方が優先するとして,非開示事由とされたものである。そして本件条例第7条第4号にいう「おそれ」の解釈については,公文書の公開によって市民の市政の参加を推進し,開かれた市政の実現に寄与するという本条例の趣旨が没却されることのないように単なる抽象的・観念的な可能性では足らず,事務事業の公正又は円滑な執行に支障を生ずる具体的かつ客観的な蓋然性が要求されると解され,そうした非開示事由(「おそれ」)の存在は実施機関において個別具体的に主張立証しなければならないものである。
(3)以上の観点から本件公文書中,実施機関が事務事業執行情報として非開示とした情報が本件条例第7条第4号に該当するか否かを検討する。
ア 実施機関は,前記実施機関の主張のとおり,(1)お供え,餞別,お見舞い及びお祝い(2)花環代(3)会費,賛助金及び寸志(4)贈呈品(5)接待費(6)新聞購読料及び広告料(7)議長賞の7つにわけて本条例第7条4号該当性を主張している。これらの主張は,集約すれば,支出先が明らかになると,実施機関の当該交際対象の個人,団体等に対する評価・位置付けが明らかになるため,交際事務が適切に行えないということに尽きると考えられる。しかし,こうした主張に対しては,実施機関と交際対象となる個人団体に対する評価は市に対する貢献度の大小により客観的に決せられるものであるとか,また,評価付けは慶弔や見舞い等の交際費の金額のみによって明らかになるものではなく諸種の褒章や行事への参加や会合での席次でも明らかになっている,といった反論を容易に許すものである。
イ このように実施機関の主張内容は,抽象的で,具体性や蓋然性に欠けると同時に,実施機関主張の事実では,本件公文書記載の情報を開示することによって実施機関の公正かつ適切な事務の遂行に支障を及ぼす「おそれ」があるとは社会経験則上容易に推断しがたいものである。確かに,当審査会も実施機関の主張するように一般的あるいは観念的な事務事業執行上の支障の可能性があり得ることは否認しないし,交際費の支出の際の情報に関して,本件条例第7条第4号に該当性する場合がありうることを否定はしない。
しかし,本件においては交際事務の執行に支障を及ぼす「おそれ」があることについて個別具体的な主張立証がなされておらず,単に一般的あるいは観念的な可能性のみを理由として,本件開示により交際事務の執行に支障を及ぼす「おそれ」があると判断することはできない。また,すでに食糧費及び交際費の支出に係る情報についてほぼ全面的に開示している青森県,宮城県,群馬県及び津市について,その開示実例によって交際費の執行を通じて行政の円滑な運営を図るという事務事業の公正若しくは円滑な執行に支障を生じさせるおそれがあると判断されるような事例があったか等の照会を当審査会においてしたところ,いずれの自治体もそのような事例はない旨の回答を得ている。この事実は実施機関の本件条例第7条第4号に該当するとする主張に対する有力な反証となるものであることを付言しておく。
ウ さらに,実施機関の主張の中には,議長交際事務の機密性,交際費支出における議長の裁量性を理由として,交際費の支出に係る情報一般が,一般抽象的に秘匿すべき情報であるという主張も見受けられる。
当審査会が認定した事実によれば(1)交際費の支出については極めて儀礼的なものがほとんどであること(2)議長交際費でありながら,事実上,事務局担当者限りの判断で支出されていること(3)しかも,支出先及び金額については明確な文書上の基準はないものの支出担当者において慣例的な基準が存在することが認められる。
したがって,議長交際事務の機密牲,交際費支出における議長の裁量性が直接に本件条例第7条第4号に該当する事由となるかどうかは別として,本件公文書に係る交際事務についてはその機密性及び裁量性を容易に認定することはできない。
(4)以上のとおりであるから,交際費の支出に係る公文書記載の情報中には,本条例第7条第4号に該当する情報は存在しないと解するのが相当である。

第6 結論
以上により「第1 審査会の結論」のとおり判断する。

第7 総括
今回の答申に至る過程における実施機関の主張及び口頭による意見陳述内容の一部には,実施機関が,本件公文書記載の情報を開示することによる種々の社会的影響を懸念し,また,開示後の市民らからの反応等による煩わしさを厭うあまり,本件処分に至ったのではないかと推察させる主張が存在する。もし,仮にそうであるとすれば,それは公文書の開示によって市民の行政参加を推進し,開かれた市政の実現に寄与するという情報公開制度の趣旨を没却するものである。市民との議論をなすために行政情報を開示することこそ,実施機関に課せられた重要な責務であると考える。
実施機関においては,情報公開制度における他の自治体の取組や,現状を十分に検討され,本件諮問案件にかぎらず,今後,将来にわたり,情報公開制度を発展的に運用されることを切に望むものである。

第8 審査会の処理経過
当審査会における処理経過は次のとおりである。

審査会の処理経過
年月日 処理内容
平成9年6月17日 諮問の収受
平成9年8月20日 実施機関の弁明書の収受
平成9年9月25日 異議申立人からの反論書の収受
平成9年11月14日 第1回審査会(審議)
平成10年1月30日 第2回審査会(異議申立人及び実施機関の口頭意見陳述及び審議)
平成10年2月26日 第3回審査会(審議)
平成10年4月24日 答申

以上

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