ページの先頭です

共通メニューなどをスキップして本文へ

「おかやまSDGsアワード2023」受賞 一般社団法人DESIGN GOALsの活動紹介

[2024年1月15日]

ID:56148

ソーシャルサイトへのリンクは別ウィンドウで開きます

SDGsを合言葉に、ふるさと岡山エリアで「持続的に生きるための課題解決」をめざす取組を表彰する「おかやまSDGsアワード」。

今回、「おかやまSDGsアワード2023」の「特に優良な取組」を受賞した一般社団法人DESIGN GOALs代表理事の髙橋さんにお話を伺いました。

障がい者に適正な報酬を!DESIGN GOALsプロジェクトとは?

DESIGN GOALsプロジェクトは、障がい者アートと企業を結び付け、デザイナーと連携して商業デザインを制作する取組です。企業とデザイナー、そして絵を描くことが好きで、身体・精神・知的等の障害を抱えたクリエーターをマッチングし、プロジェクトチームを作ります。三者の顔合わせを兼ねた打ち合わせを経た後に、クリエーターとデザイナーでアート作品を共同制作します。完成したアート作品は、デザイナーが企業の要望に合わせて商業デザインへと展開させます。完成したデザイン案を企業が採用し、著作権に関する契約を結ぶことで、クリエーターに報酬が支払われます。

事業スキーム図


チームによる商業デザインの共同制作を通じて、障がいのある人の社会参画につなげています。また、企業と著作権に関する契約を交わすことで、クリエーターは適正な報酬を受け取ることができます。

「産学連携プラン」では、岡山情報ビジネス学院のCGデザイン学科と協力し、デザインを学ぶ学生と企業、クリエーターの連携体制を築いています。

一般社団法人DESIGN GOALsに至るまで

このプロジェクトを始めたきっかけは、約10年前に遡ります。岡山県中小企業家同友会の障害者問題委員会主催の会合で、岡山市の障害福祉課と出会ったことが始まりでした。当時、岡山市は就労継続支援B型事業所の工賃が全国平均よりも大幅に低い状態でした。工賃向上のために岡山市が開始した事業にデザイナーとして参加しました。

こうした取組を通じて障がい者をデザイン面で支援する実績があったこともあり、令和2年度・3年度に岡山県備前県民局の「障害者アートを活用したデザインビジネス展開事業」を受託しました。平成30年に「障害者による文化芸術活動の推進に関する法律」が施行されたことを受け、備前県民局が取り組んでいたものです。事業名に「DESIGN GOALs」と愛称をつけて、事務局を2年間担当しました。この2年の間に、現在のDESIGN GOALsプロジェクトの事業スキームを確立しました。

備前県民局の事業としては、令和3年度で終了となりました。このままこの取組を終わらせるか考えたときに、2年間の成果や共働のプロセスを振り返ると、「もうやめられない!」となったんです。障がいのある人に関わってきた者として、取り組み続けなければと思わされるような活動でした。令和4年度からは民間の任意団体として事務局を引き継ぎました。現在は一般社団法人DESIGN GOALsとして活動を続けています。

「共働」で商業デザイン制作

このプロジェクトの最大のポイントは「共働」です。商業デザインの完成という共通のゴールを目指して、クリエーター・デザイナー・企業が一緒に働きます。

共働スキーム図
活動の様子


企業にとっては、DESIGN GOALsプロジェクトに参加して商業デザインを制作することで、社会に貢献している企業・商品として、ブランド力の向上につなげることやSDGsの達成に寄与することができます。

産学連携プランで関わる学生にとっては、同じチームの一員として障がいのある方と共にデザインの完成に向けて取り組むことで学びにつながります。クリエーターとのやり取りでは、伝え方を試行錯誤し、意図が伝わるまで工夫が必要ですが、それこそが共働です。

クリエーター自身も、与えられた仕事を言われたとおりにするのではなく、デザイナーと共働しながらチームの一員としてアート作品を制作します。アート作品が商品になり、多くの人の手に渡ります。入所施設や限られた範囲での暮らしをしていることが多いクリエーターにとって、世界が広がる取組です。

様々な企業からの依頼で、お菓子やドリップコーヒーのパッケージ、土手の整備に使用されているパッカー車のラッピングなど、これまでに35のデザインを完成させました。どのデザインも、関わる全ての人が試行錯誤し、共働することで完成しています。

商品デザイン1
商品デザイン2
商品デザイン3

理想は「ごちゃまぜ」

企業と福祉の連携については、なかなか一筋縄ではいきません。「何をどうやって頼んだらいいのか」「問題が起きたらどうするのか」と考える企業も少なからず存在します。一方で、福祉分野の、特に就労継続支援B型事業所では、単価の高い仕事を求めていますが、企業の求めるスピードと生産効率を達成するには課題がいくつもある状態です。結果的に、企業と福祉それぞれの分野でどちらも及び腰になっているように感じています。こうした状況の中、障がい者アートの商業デザインへの活用は、企業と福祉を結び付けるとっかかりになると思って取組を続けています。DESIGN GOALsを通じて、企業と福祉の橋渡しをしたいです。

しかし、取組を始めてから新たに知る問題もありました。DESIGN GOALsプロジェクトの現在の仕組みでは、クリエーターと企業のマッチングが成立しなければ報酬を支払うことができません。一度マッチングを経験したクリエーターも、事務局から声がかかるまで次の機会を待ち続けることになってしまいます。これではアートが仕事になっているとはいえません。加えて、就労継続支援B型事業所の工賃はいまだに低い状態が続いています。また、プロジェクトを通じてデザイナーと共働したことで、デザインに興味を持つクリエーターもいますが、障がいのある人がデザインを学ぶ場所や手段は非常に少ないのが現状です。

こうしたことを踏まえ、就労継続支援B型事業所の工賃向上と、クリエーターのスキルアップを目指して、訓練に軸足を置いたアートとデザインの就労継続支援B型事業所の開所に向けて準備を進めています。人の役に立ちたいという思いや向上心は、障がいの有無に関わらず誰もが持っているものです。そして、クリエーターのスキルアップにも、工賃の向上にも、新しいことを学べる環境と訓練が必要です。訓練を通じて「学びたい、スキルアップしたい」の思いに応える場所を目指しています。

取組の周知と商品を手に取る機会として開催したイベント「DESIGN GOALs collection」には、これまでに共働した企業や就労継続支援事業所、一般の飲食店などが「ごちゃまぜ」になって参加してくれました。このイベントのようなごちゃまぜ感が私の理想です。障がいの有無や業種・業態など、特性ごとに便宜上分けられているだけで、現実では全員が同じ社会の中で生きています。障がいのある人、ない人、企業が同じ舞台で共働できる社会が、DESIGN GOALsが目指す共生社会です。

DESIGN GOALs集合写真