SDGsを合言葉に、ふるさと岡山エリアで「持続的に生きるための課題解決」をめざす取組を表彰する「おかやまSDGsアワード」。
「おかやまSDGsアワード2023」で「優良な取組」を受賞した株式会社ハローズの「企業の廃棄率半減と発生する食品ロスをハローズモデルによる提供で困窮者救済」の取組について、商品ライン本部
商品管理室長の太田さんにお話を伺いました。
食べられるにもかかわらず捨てられている食品を「食品ロス」と言います。今、日本ではなんと年間523万トンもの食品ロスがあるといわれています。一人当たりで、一日におにぎり1~2個分にもなります。お金に換算すると、約5兆円もの食品を廃棄しているのが現状です。ハローズだけでも、2015年時点では年間約800トンもの食品ロスがありました。それだけの食品を廃棄するにはお金もかかりますし、まだ食べられるものを捨てる心苦しさもあります。
商品管理室の中心的な業務は廃棄率の削減です。24時間営業をしているハローズで切れ目なく商品を提供するため、消費期限と納品のタイミングなどを調整して、廃棄する食品をできるだけ減らすよう各店舗に指示をしています。それでも品切れを防止するために、どうしても廃棄する商品は出てしまいます。廃棄率削減のためいろいろな工夫をしてきましたが、そうした中でパート社員が言った「捨てるのはもったいないのでなんとかしてよ」のひとことをきっかけに、2015年からフードバンクへの食品提供を開始しました。
ハローズでは、果物や野菜などの青果、豆腐や納豆などのデイリー商品を中心に、ハムやソーセージといった加工食品などをフードバンク、生活困窮者支援団体、就労継続支援事業所などの施設等に提供しています。もちろん、それらはまだ食べられる商品です。賞味期限・消費期限が残っていても、スーパー側では廃棄伝票に起票した商品を提供しています。
取組開始当初は、スーパーが商品を集めてフードバンクに届け、フードバンクが仕分けをして、実際に商品を提供する各施設に配達をしていました。最初はこの仕組みで商品を提供していたのですが、提供量が増えるにつれ、フードバンク側の引き取り・仕分け・配達が大変になってきました。そこで生まれたのが、提供を受ける施設が、近隣の店舗に直接商品を引き取りに来る「ハローズモデル」です。近隣から直接引き取りに来るため、消費期限当日の商品を提供できるようになり、提供量は飛躍的に拡大しました。
地域によって差はありますが、例えば店舗Aでは、月曜日はa団体が引き取り、火曜日はb団体が引き取り、といったように週間の予定を決めて商品の提供をしています。不定期開催の子ども食堂などの引き取りにも対応しています。もちろん、日によって提供できる商品には差があります。ハローズでは同業他社にも商品の提供を呼びかけ、他のスーパーに行けば加工食品があるかもしれない、といったような環境を作っています。また、メーカー各社にも協力を依頼して、例えば包装が少し破れたチョコレートなども直接引き取りに行けば提供してもらえるようにしています。
「ハローズモデル」
これらの取組は、岡山地区をはじめ、ハローズを展開する兵庫・岡山・広島・山口・愛媛・香川・徳島などの各県でどんどん拡大しています。また、事業者間のネットワークを生かして、依頼があれば中四国地方に留まらず、関西や関東でも協力依頼などの調整を図っています。店舗と各地域で引き取る団体とのマッチングは大変ですが、困っている方が助かり喜ばれ、そして廃棄する商品を減らせるのであればこんなに良いことはありません。
現在は各店舗で毎日およそ6キログラム(段ボールで1~2箱分)、ハローズ全体では年間約300トンの商品を提供しています。これは日本のスーパーマーケットの中ではナンバーワンの提供量です。
最近、寄付された食品等を困窮者に提供し支援する「コミュニティパントリー」の取組がかねてから盛んなイギリスを訪問しました。コミュニティパントリーは、日本では中四国地方を中心に28か所設置されていますが、人口が日本のおよそ半分のイギリスでは260か所設置されています。訪問したコミュニティパントリーの場合、大手スーパーのほぼすべてから商品が提供されており、支援団体のボランティアスタッフ40~50名がシフトを組んで毎日400キログラムもの商品を約100名の困窮者に提供しているとのことでした。スーパーからの引き取りもスムーズに行われおり、規模の違い、協力関係の強さを感じました。
様々なスーパーから提供された商品
(スーパーによってコンテナの色が違う)
日本の子ども食堂は中学校数と同じくらいで約9000か所と言われており、その数はどんどん増加していますが、支援が行き渡っていないことも多いと聞きます。困っている子どもと家族を助けるために、イギリスの仕組みを参考にしてコミュニティパントリーを増やしていきたいと考えています。
そのためには、商品の提供に協力する企業を増やす必要があります。これまでも同業他社に依頼して、多くの協力を得てきました。しかし、賞味期限・消費期限が近い商品を提供することでクレームが発生することを恐れ、協力いただけない場合もあるのが現状です。
アメリカなどいくつかの国では「善きサマリア人法」というものを制定しています。困っている人を助けるために、無償で誠実に行動したならば、提供側は免責になるといった内容の法律です。食品の提供でいえば、消費期限が残っている商品を提供した場合、引き渡し後は引取団体の責任になるということです。こうした法律や条例があれば、商品の提供に参画する企業が大幅に拡大するのではないかと考えています。実際、ニュージーランドでは法制定後に提供量がおよそ5倍増加したと聞きました。
近年、気候変動対策の重要性が叫ばれています。廃棄食品の処分にはお金がかかります。そしてもちろん、燃やして廃棄するためにCO₂が排出され、燃料も使われるのです。
おかやまSDGsアワード2023で優秀な取組を受賞した「企業の廃棄率半減と発生する食品ロスをハローズモデルによる提供で困窮者救済」の取組は、困っている人を助け、廃棄食品を減らすことで気候変動対策にもつながる仕組みなのです。
株式会社ハローズ 商品ライン本部 商品管理室長 太田さん