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SDGs海川フォーラム2022 持続可能な社会に向けて

[2022年3月7日]

ID:38884

岡山連携中枢都市圏として連携する11市町と協力し、海ごみ削減に取り組む岡山市。2022年2月6日(日曜日)、市内の中学校、企業、NPO等の取組紹介やパネルディスカッションを通じて、海ごみ問題やSDGsについて学び合うことを目的に「SDGs海川フォーラム2022 持続可能な社会に向けて」を、岡山ESD推進協議会とともに開催しました。

当初は岡山コンベンションセンターで参加者を集めての開催を予定していましたが、新型コロナウイルス感染症の感染拡大や、岡山県が1月27日(木曜日)から2月20日(日曜日)までまん延防止等重点措置の対象となったことから、会場での一般参加は中止し、YouTubeでライブ配信を行いました。

開会のあいさつ

ステージのスクリーンにまず映し出されたのは、大森雅夫岡山市長からのビデオメッセージによる主催者あいさつ。昨年、百間川で行われた清掃活動にご自身が参加し、ごみの量や種類の多さに驚いたという体験などを述べた後、岡山市の瀬戸内の海洋保全やプラスチックごみ対策に向けた取り組みを紹介。「本日のフォーラムが海ごみ問題に関する新たな気づきや意識変革の機会となり、皆さま方の活動のより一層の発展に資すること祈念いたします」と言葉を締めました。

大森雅夫岡山市長の写真

大森雅夫岡山市長

続く開会あいさつでは、阿部宏史岡山ESD推進協議会会長が登壇。2005年に国連大学から世界初の「ESDに関する地域の拠点(RCE)」のひとつに認定され、その後、持続可能な社会に向けた取り組みで世界をけん引してきた岡山市。瀬戸内海と三大河川に恵まれた地域だからこそ、海川の環境保全は大きなテーマと強調。「重要な取り組みをされ大きな成果をあげられている皆さまが、パネルディスカッションを通じてさらに議論を深め、今後、瀬戸内海と三大河川によりよい環境が形成されていくことを祈念します」とエールを送りました。

岡山ESD推進協議会会長 阿部宏史さん

阿部宏史岡山ESD推進協議会会長

話題提供

登壇したのは、岡山ESD推進協議会SDGs守ろう海川プロジェクト専門部会長で、NPO法人「岡山環境カウンセラー協会」事務局長の中平徹也さん。「環境問題を考える時に大切なことは、地球規模で考えて、地域で行動すること」と話す中平さんは、昭和中期と現在の暮らしの比較や、地球環境問題、海ごみなどの説明を通じて、現在は「持続不可能な社会」と話しました。また、「持続可能な社会を作るには教育が大切な土台である」とも。そして、「社会問題でもある環境問題を解決するには私たちの考え、行動を変えることが大切。このフォーラムで、持続可能な社会を作るための行動に結びつくヒントや入り口が見つかることを願っています」と言葉を締めました。

中平徹也さんの写真

NPO法人「岡山環境カウンセラー協会」事務局長 中平徹也さん

取組発表

1.岡山市立操南中学校

「操南中SDGs推進活動 プラごみ回収&モザイクアート、そして断熱改修WSへ!」

岡山市立操南中学校発表の様子1
岡山市立操南中学校発表の様子2

総合的な学習の時間での地域フィールドワークをきっかけに、プラスチックごみが学校近くの四番川に大量に溜まっていることを問題視した、岡山市立操南中学校1年生のみなさん。賛同する生徒会と有志が集まり「プラごみ回収大作戦」を数回にわたって実施、45リットルのゴミ袋で80袋以上のプラスチックごみを回収しました。この時、農業用肥料に使われ、流出すると海洋汚染にもつながるプラスチック殻のことを知ったそう。地域の環境や課題を発信するために、プラスチックごみの中から小さなプラスチック殻を丹念により分け、縦2メートル、横4.8メートルのモザイクアートを制作。後日作品は、国連・グローバルRCE会議で表彰されました。いっぽう、地域の公民館で活動を報告。地域の人々とのつながりも生まれ「もっと地域に貢献できる取組をしたい」と思うようになった1年生たち。「岡山ESDプロジェクト」や「おかやまかんきょう広場」などに参加し、気候変動や防災活動へと学びと実践の輪を広げています。

2.岡山大学教育学部附属中学校

「岡大附中版『海ゴミ 川ゴミ 課題解決プロジェクト』」

岡山大学教育学部附属中学校発表の様子1
岡山大学教育学部附属中学校発表の様子2

岡山大学教育学部附属中学校1年生の皆さんは、水曜日の午後に行われているER(総合的な学習の時間)の授業を通して学んだこと、考えたこと、そこから広がった活動について発表しました。「NPO法人グリーンパートナーおかやま」の藤原理事長によるER環境講演会をきっかけに、1年生全体で川ごみ調査を実施。1年生は講演会や調査で学んだことを班ごとにまとめ、それぞれ新聞を制作。「人の行動に頼るのではなく、自分から動くことが大切だ」と思うようになったそう。2年生は、環境問題を主とした活動に取り組む科学部でのごみ回収活動について発表しました。また、岡山環境ミーティングへの参加についても紹介。今起きている環境問題の深刻さや、持続可能な社会を作っていくことの大切さなど、環境にまつわるさまざまな視点を知り、考えを深めたという2年生は、「今ある美しい自然を残し、持続可能な社会に近づけられるよう、私たちができることから環境とつながりのある活動を行っていきたいと思います」と、今後の抱負も述べてくれました。

3.「釣り人みんなで海を守ろう、釣りのついでにゴミ回収」平井雅明さん

「岡山市のゴミのホットスポット&回収活動

平井雅明さん発表の様子1
平井雅明さん発表の様子2

趣味が釣りという平井さんは、釣りのために魚を守る活動をはじめ、やがて海洋汚染についても学ぶようになったそう。そして、ほぼ毎日、プラスチックごみ回収と調査活動を行うようになり、ホットスポットを「岡山市南部 河川漂着ゴミマップ」にまとめました。フォーラムでは、そのマップを使って岡山市の河川の特徴とプラスチックごみの流出防止のヒントを発表。網の目のように用水路が張り巡らされ、河口に水門がある岡山市は、「効率よくごみを回収できる恵まれたロケーション」だといいます。また、回収活動では、従来ゴミは個人で持ち帰らなくてはならなかったため、応援を頼んでも回収量は限られていましたが、昨年から国や岡山市が処理することになり倍増。「回収活動のネックはごみの処理。今後はその制度作りが課題です」。そう話す平井さんは、「全国に700万人いる釣り人が釣りのついでに少しだけ回収する『少人数、多頻度、少量回収』と、イベント型の『大人数、一発型、大量回収』を併用することが、これからのごみ回収活動には必要」と訴えました。

4.NPO法人グリーンパートナーおかやま」藤原瑠美子さん

「世界の宝石 瀬戸内海を磨く」

藤原瑠美子さん発表の様子1
藤原瑠美子さん発表の様子2

NPO法人グリーンパートナーおかやまは、小中学校、高校、大学、企業、団体、自治体などと連携しながら、海ごみや川ごみ、マイクロプラスチックなどの問題を周知・啓発し、「海ごみゼロ」を推進しています。海底に13,000トン以上の生活ごみが堆積し、今や「ごみ箱化」している瀬戸内海を磨き、再び「世界の宝石」とするために、さまざまな活動を実施しています。2021年は、海ごみや川ごみの回収のほか、「被覆肥料意見交換会」や「瀬戸内海 海ごみフォーラム2021」も開催。中でも、底引網漁船3隻による「海底探検隊2021 in小豆島」での参加者の様子から、藤原さんは「五感を使って活動することで意識は変わる」と改めて実感したといいます。最後は、美しい瀬戸内海の景色をスクリーンに映しつつ、「心が洗われるくらい美しいけれど、海の底はごみだらけ。それは大人たちが開発の名で破壊してきた結果です。未来の子どもや若者のために、川ごみや海ごみの課題解決に向けて、皆さんと一緒に動いていきたいと思っています」と、藤原さんは静かな口調で語り終えました。

5.「株式会社セブン-イレブン・ジャパン」矢萩陽子さん

「プラスチック対策 ペットボトルリサイクルの取り組み」

矢萩陽子さん発表の様子1
矢萩陽子さん発表の様子2

セブン&アイグループでは、2030年と2050年の数値目標を立てて「GREEN CHALLENGE 2050」に取り組んでいます。そのテーマのひとつがプラスチック対策。商品に関わる商材の変更やエコバックの推進、レジ袋の削減のほか、海洋ごみを減らすために地域の清掃活動や「瀬戸内オーシャンズX」の活動に参加しています。昨年10月には、岡山県内のセブン-イレブン各店へのペットボトル回収機の設置を始めました。「海洋ごみにしないのはもちろん資源として活用しますし、回収機で小さくつぶすことで搬送する車のCO2排出量を削減しています。親子でお持ち込みされる方も多く、日常の中での環境教育に役立っているのではないかとうれしく思っています」。そう述べた矢萩さんは、「セブン-イレブンは全国的に一律のイメージがあると思うのですが、地域に根ざした活動をしていきたいですし、地元の方々が大切にしてきた海川を私たちも一緒に大事にしていくために、対話を重視しながらいろいろな活動をしていきたいと思っています」とも話しました。

パネルディスカッション

フォーラム後半は、前半で話題提供をした中平徹也さんをファシリテーター、岡山ESD推進協議会運営委員長で岡山ユネスコ協会会長の池田満之さんを進行役に、取組発表者によるパネルディスカッションが行われました。

パネルディスカッションの様子1
パネルディスカッションの様子2
パネルディスカッションの様子3

パネリスト

  • 岡山市立操南中学校の皆さん
  • 岡山大学教育学部附属中学校教諭 坪田智行さん
  • 「NPO法人グリーンパートナーおかやま」藤原瑠美子さん
  • 「釣り人みんなで海を守ろう、釣りのついでにゴミ回収」平井雅明さん
  • 株式会社セブン-イレブン・ジャパン サステナビリティ推進室 環境推進マネージャー 今井盛仁さん
  • 株式会社セブン-イレブン・ジャパン サステナビリティ推進室 矢萩陽子さん

まず、池田さんが「前半は素晴らしい発表をありがとうございました。あれほどの活動をされるには言葉にできない苦労がたくさんあったと思いますし、逆にやってよかったというところもあったと思います。これから活動される方のためにもぜひ、教えてください」と投げかけました。

岡山市立操南中学校の皆さん
「夏は暑く、冬は寒く、臭かったけれど、ごみの量を見た時に達成感がありました」「地域の人との関係づくりは難しかったけれど、地域のことを知ることができたのがうれしかった」

岡山大学教育学部附属中学校教諭 坪田智行さん
「いかに一人一人の生徒の心に伝え、課題への問題意識を高めていくこと、それをいかに自分の問題として取り組み続けられるかが大切だと思っています。実際にやってみて、想像以上に生徒の反応があったこと、自分から手をあげて積極的に参加してくれた生徒たちもいて、子どもたちの中に環境問題への思いが芽生えたことがもっともよかったと思っています」

釣り人みんなで海を守ろう、釣りのついでにゴミ回収 平井雅明さん
「皆さんに集まっていただく一斉回収では、最後にみんなで写真を撮るのですが、その時の『やりきった!』という笑顔を見るのが、とてもうれしいです。そして、仲間が増え、次につながるのかなと思えるのが一番うれしい。苦しいことは、集めたごみをどうやってクリーンセンターに運ぶか。行政が引き受けてくれる時はいいのですが、そうでなければ自分で運ぶしかないので、今年は誰もが利用できる制度をなんとかしたいと思っています」

NPO法人グリーンパートナーおかやま 藤原瑠美子さん
「うれしいのはみんなの意識がひとつになる時。小学生、中学生、高校生、大学生と、みんなが一緒になって、課題解決に向けて『やるぞ!』とスタートできることが本当にうれしいです。困っているのはお金がないこと。いろいろな助成金をいただきながら動いています」

株式会社セブン-イレブン・ジャパン 今井盛仁さん
「この仕組みには、お客さまや各店舗、ペットボトルを運ぶ回収事業者さま、資源化するリサイクラーさま、ペットボトルに成形するリフォームメーカーさま、そして飲料メーカーさまと、多くの方々が参画されます。そのため、地域ごとにこの仕組みを一つ一つ作っていくことは大変でしたが、1本のボトルがずっと回り続けることは資源の有効活用につながっていくと考えています。当初は、口に入れるものなので再利用が受け入れられるのか、リサイクルは石油から作るよりもコストもかかるので本当にこれが持続可能な商品になるのかという議論がありましたが、発売でき、評価されたことは非常にうれしく思っています」

パネリストの発言に、ファシリテーターの中平徹也さんは、「みなさんが関係性を大事にしながら、取り組みをされていることを感じました。それと、中学生の方々がいろいろな体験を通じて、一つ一つの課題を自分ごとにして、解決していくというのは非常に素晴らしい。岡山市はESDの中で体験することで自分ごととして腑に落ちるということを大切にしてきました。みなさんの発表に、体験学習の素晴らしさ、自分ごとにする大切さを教えていただいたような気がします」とコメント。

続けて、中平さんと池田さんは「回収したごみの処分に費用がかかるのか」「ERとはなんなのか」などの活動者個々への質問や、「そんなに頑張っているのなら、ひとつだけ願いを叶えてあげようという天の声が聞こえたら、みなさんは何を願いますか」という場を和ませる問いも投げかけました。
そして最後に、「フォーラムを視聴している人たちに訴えたいこと」を促され、順に思いを述べました。

岡山市立操南中学校の皆さん
「子どもだからできること、大人だからできることがあることを改めて知ったので、自分なりにできることをやり、岡山や世界に広めていきたいと思います」「今日知ったほかの中学やNPO、企業のよいところを取り入れて、僕たちがしている活動に生かしていきたいと思います」

岡山大学教育学部附属中学校教諭 坪田智行さん
「附属小学校とも連携し、9年間を通して取り組んでいけるようにしたいと思います。そして、ほかの中学校などと広く連携することで、次の世代はプラスチックの問題を解決できる世代になると思います」

釣り人みんなで海を守ろう、釣りのついでにゴミ回収 平井雅明さん
「毎日のごみ拾いは継続していきます。ひとりでもふたりでも仲間を増やしていきたいので、ピリカやSNSというツールも使って、声をかけていきたいと思います」

NPO法人グリーンパートナーおかやま 藤原瑠美子さん
「体験を通してこそ、お腹の底から理解できると思いますので、皆さんにはぜひ体験していただきたいですね。活動していく上では甘えないこと、そして相談することが大事です。これからの世の中は子どもたちの熱い思いが動かしていくもの。私たち大人はそれを手伝わせていただきます」

株式会社セブン-イレブン・ジャパン 今井盛仁さん・矢萩陽子さん
「分別がきちんと進んだ世の中、ポイ捨てがない世の中にしていくことが大切なんじゃないかと考えています。私どもは昨年、食品ロスに関して『手前取り』という取り組みを神戸からスタートし、国民運動にするために市や国も巻き込んで進めています。ごみの問題も同様の広域な問題ですので、岡山市民、県民の意識を醸成し、岡山から発信していけるよう、我々も企業として努力していきますので、皆さまと一緒に進めさせていただければと考えております」「美しい地球を残していくというのはもちろんですが、今は同志であるみなさんと一緒に、子どもたちが大人になった時にいろいろなことができる可能性を残していけるように、今できることを全部やらないといけないんだなと、改めて思いました」

それぞれの思いがこもった言葉を聞いた中平さんは、「今日は海ごみについての話がたくさん出ましたが、どうすれば持続可能な社会を作っていけるのかという課題のひとつの入口になったのではないでしょうか。その扉を開けたらいろんなゴールが見えてくるはずです。このフォーラムは、そうしたゴールに向かって、みんなで行動していけるきっかけになったのではないかと思います。ありがとうございました」と、パネルディスカッションをまとめました。

閉会のあいさつ

「コロナ禍の中、ご協力いただきありがとうございます」と感謝の意から始まり、5組の取組発表それぞれについての感想を述べた向田健太郎環境省中国四国地方環境事務所環境対策課長は、「本日のテーマであるSDGsはもはや世界共通の言語。さまざまな取組についてお聞きしましたが、それらをSDGsという言葉とともに発信し、世界でも同じように活動している方たちがいるのだという気持ちを持って、ぜひ続けていただければと思います。私どももできる限り応援させていただきます」とフォーラムを締めくくりました。

環境省中国四国地方環境事務所環境対策課長 向田健太郎さん

向田健太郎環境省中国四国地方環境事務所環境対策課長