岡山市は、岡山連携中枢都市圏として連携する11市町と協力して海ごみ削減に取り組んでいます。2023年2月5日(日曜日)、海ごみ問題やSDGsについて学び合う「SDGs海川フォーラム2023 持続可能な社会に向けて」が開催されました。
発展途上国におけるプラスチック分別促進やAIによる河川のホットスポット把握に関する話題提供、学校・企業・地域団体等の取組紹介やワークショップが行われました。
はじめに、大森雅夫岡山市長が登壇しました。瀬戸内海をきれいにするという気概を持って取り組みたいと述べたあと、「フォーラムを通じて取組の輪が広がり大きなうねりとなって海ごみを削減し、将来の財産になればと思います」と期待の言葉で締めくくりました。
大森雅夫岡山市長
続いて、来賓の環境省中国四国地方環境事務所の上田健二所長からの挨拶がありました。プラスチックによる海洋汚染は国際的に大きな問題であり国際条約づくりが進んでいること、内海である瀬戸内海は周りに住む人たちがきれいにすればきれいになることなど、海ごみ削減に向けた取組の重要性を述べられました。また、フォーラムを通じて「未来を担う中高生の取組も楽しみにしています」とエールを送りました。
環境省中国四国地方環境事務所 上田健二所長
岡山大学学術研究院環境生命科学学域の藤原健史教授が登壇し、「発展途上国でのプラスチック分別促進の取組」について話題提供しました。藤原教授は「海洋プラスチックごみが持続可能な海洋資源の獲得の障害になりうる現状があり、廃棄までを考えた製品を作る・使う必要がある」と話し、自治体によるごみの回収サービスがないカンボジアのトンレサップ湖で取り組んでいる住民参加型のプラスチックごみ分別回収・リサイクルの仕組みを紹介しました。
岡山大学学術研究院環境生命科学学域
藤原健史教授
次に、岡山市環境局環境事業課資源循環推進室の吉田章裕室長が登壇し、「AIによる河川のホットスポット把握の取組」について話しました。衛星・航空画像をAI解析し、河川・水路のごみのホットスポット(際立ってごみが集中している箇所)を明らかにします。岡山市は水路延長が日本一であり、ホットスポットを特定することで効率的な海ごみ削減につながるとのこと。「海ごみ問題は陸域からきており、海へ流出させないことが大切。海ごみを出さないゲートキーパーを増やすことを目指します」と締めくくりました。
岡山市環境局環境事業課資源循環推進室
吉田章裕室長
倉敷市児島の通生海岸で、海ごみとマイクロプラスチックの調査を行いました。海岸を一定の範囲で区切り、その範囲内のごみを採取。農業用肥料殻やカキ養殖用まめ管などのごみがあり、また時期によってごみの量に大きな差がありました。ごみには、私たちの生活から出たごみと農業・工業・漁業由来のごみがあることが分かりました。また、海底ボーリング調査や用水路のごみ調査についても紹介。今後は、河川や海のごみの現状を多くの人に発信し、生分解プラスチックの研究を進め普及させたいとのことです。
通学路の河川でごみを見つけ、それらが海に流れて海洋ごみの原因となると感じたことがきっかけで、環境ゼミ2年生が河川清掃と調査を行いました。用水路の上流側と下流側に分かれて、計5回、道端のごみを調査。看板やペットボトル、自転車の部品、折り畳み傘、スニーカーなど様々なごみを回収しました。「ごみは今現在もまだまだ流れ込んでおり、定期的な清掃を続けます。他の団体とも連携して継続的に取り組んでいきたいです」と話しました。
2001年から、地域住民、富山の小中学生と一緒に、楽しく、学区内の歴史探訪・環境問題・自然体験・清掃活動などを行っています。毎年10月から翌5月までの止水が原因となり、生活排水で汚れていた倉安川をきれいにする取組を紹介。清掃活動に加え、行政と通水に向けた協議を重ねた結果、現在では年間をとおして通水が可能となり、カモや鯉が見られるほどきれいになりました。實村さんは「世界かんがい施設遺産に登録されている倉安川・百間川をきれいにし大切にしましょう」と、活動への協力を呼びかけました。
プロキング(Plogging)は、スウェーデン語の「plocka upp(拾い上げる)」と英語の「jogging」を合わせたフィットネススポーツで、走って健康になり、そしてごみを拾って街をきれいにすることができます。2022年5月に第1回「岡山のランナー集まれ!街中クリーン大作戦」を開催。たばこの吸い殻やペットボトルなど32.12キログラムを回収しました。ごみ拾い後は、「街のごみが海へ流出するとどうなるか?」を参加者と考え、理解を深めます。9月には第2回を開催しました。三宅社長は、春・秋の定期開催や他地域への拡大も考えており、「私たちは微力だけど、無力ではない!」と伝えました。
操南中学校は2021年にSDGs宣言し、自分たちにできることを模索しながら活動しています。操南地区の用水路は海につながる一歩手前であり、最後の砦としてごみを食い止めたいと考え、「四番川プラごみ回収大作戦」を実施しました。多くのごみがあり、継続の必要性を感じています。また、ごみを拾うだけでなくごみを落とす人を減らしたいと、啓発活動やごみ量調査なども行っています。今後は「一人ひとりが海川ごみの現状を知り、自発的な取組を行える環境を作りたい」「他校の中学生、全国や海外にも活動を広めたい」と話しました。
それぞれの発表について、岡山ESD推進協議会運営委員会の池田満之運営委員長は、学校での学びや特徴を活かした取組、学校・地域・行政が連携した取組など素晴らしいものばかりで、今後も活発に活動を続けてほしいと述べました。
フォーラム後半は、岡山ESD推進協議会SDGs守ろう海川プロジェクト専門部会の中平徹也部会長をファシリテーターに、ワークショップが行われました。4~5人が1グループになり、話題提供や取組発表について意見交換しました。
話題提供について、「海外で岡山の方が活動していて驚いた」「AIを活用して細かく調査していてすごい」などの感想が聞かれました。岡山大学の藤原教授は「海外に関心を持つことは日本を振り返ることにもなるので、関心を持ってもらいたい」と話しました。
取組発表については、目に見えるプラスチックは回収・調査できるが、目に見えないプラスチックは回収できず残ってしまうというマイクロプラスチックごみ問題の深刻さや、中高生が学びとして活動を継続することの大切さを共有しました。
ワークショップの最後には、中平部会長より、汚染されてしまった海の「独り言」として海ごみ対策の大切さが伝えられました。
岡山ESD推進協議会の阿部宏史会長は、「今、プラスチックを含めた国内の廃棄物の問題が世界に影響を与えています。解決には一人ひとりが意識を持って行動していくことが大切です。声をかけあい、多くの方々とともに取り組むことが第一だと思います。今後もフォーラムの場で様々な方と学びあう機会があることを望みます」と締めくくりました。
岡山ESD推進協議会 阿部宏史会長
本フォーラムの様子は岡山ESD推進協議会のYouTubeチャンネルでもご覧いただけます。