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平成12年度 第16回坪田譲治文学賞

[2020年5月25日]

ID:21470

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第16回坪田譲治文学賞

ニライカナイの空で

第16回坪田譲治文学賞受賞作
『ニライカナイの空で』(講談社刊)
上野哲也著

選考経過

 第16回坪田譲治文学賞選考委員会は、平成13年1月9日(火曜日)午後3時から東京都千代田区平河町の「ひさご本店」で開催された。選考委員会には、五木寛之、砂田弘、高井有一、竹西寛子、西本鶏介(50音順)の各委員が出席した。選考委員会で、平成11年9月1日から平成12年8月31日までの一年間に全国で刊行された単行本の中から予備選考を通過した4編を、一作づつ慎重に審議した結果、上野哲也氏の「ニライカナイの空で」を受賞作品に決定した。

受賞者略歴

上野哲也

 上野 哲也(うえの てつや)

 1954年1月10日、福岡県田川郡赤池町に生まれる。
 県立田川高等学校卒業後、上京し、さまざまな仕事をしながら小説を書く。
 1999年、45歳の春に「海の空 空の舟」で小説現代新人賞を受賞。以後、2編の短編小説を同誌に発表。
 2000年6月、初めての書き下ろし長篇「ニライカナイの空で」を出版。翌2001年1月、坪田譲治文学賞を受賞。

受賞者コメント

 正直言って、驚いています。まだ「ニライカナイの空で」を出版間もない9月、私の担当の若い編集者がこんなことを言いました。上野さんは知らないかもしれませんが、坪田譲治文学賞という賞があります。この本の性格から言って、もしかするとその賞を狙えるのではないでしょうか。
 時が経って12月、その担当者から電話がありました。上野さん、本当に坪田譲治文学賞の最終候補に残ったそうです。寝耳に水です。選考日はいつかと聞くと、1月9日の由。えっ、俺の誕生日の前日じゃないか。
 当日が来ました。待っていると、受かったとの由。嬉しさと驚きが交錯しました。余りにも事がうまく運び過ぎです。しかし、有り難いことには変わりがありません。これを励みと言うよりは、諸先輩方々の叱咤と考えて、ますます創作に打ち込んでゆきたいと考えています。本当に有り難うございました。

作品の概要

 -1963年。
 機関車は力いっぱい蒸気をたちあげて、そのむかし日本の復興時代を支えていた、九州の炭坑町・田川へと少年をいざないます。
 主人公の少年・立花新一は、物持ちだったはずの父親の突然の破産によって、生まれ育った東京の街を追われるようにしてはじき出されました。債権者たちから逃げまわっている父親は、いつか必ずむかえにゆくから、それまでは九州の田川という炭坑町に住む自分の兵隊時代の親友を頼るように、と新一に告げます。生まれてすぐに母親を亡くしている新一は、誰にも連れられるでもなく、たったひとりで田川へ行かなければなりません。
 不安でいっぱいの新一を待ちかまえていた、父のかつての戦友・野上源一郎は、新一が今まで見たこともないような豪快な男でした。しかし、新一と同い年の、野上源一郎の息子・竹雄とは不思議と気が合います。新一は、この父親そっくりの豪放なやんちゃ少年・竹雄と仲良くなってゆくにつれて、すこしずつ突然放り込まれたこの見知らぬ土地の炭坑町にとけこんでゆきます。石炭産業が斜陽にさしかかりながらも、たくましく、誠実に、ときにはずるがしこく生活している大人たち。新一と同い年にもかかわらず、すでに新聞配達をして給料をもらっている竹雄や、そのまわりの元気で個性溢れる子どもたち。ひとりぼっちの哀しみに負けそうになにながらも、新一はしだいに力強く成長してゆきます。
 そんな新一に、思いもよらない冒険のときが訪れます。竹雄の夢である自作のヨットづくりに加わって、夏の海へと白帆をあげて無人島を目指すのです。ふたりは冒険のはてに何を見るのでしょうか。何を知るのでしょうか。
 そして、いつか新一も田川を去らなければなりません。新一の父親は彼をむかえにやってくるのでしょうか。別れがおとずれるとき、新一はどのように成長しているのでしょうか。大きな海に力強く進むヨットのように、少年たちはまっすぐに未来を見つめます。

選考委員 高井有一氏(作家)のコメント

 上野哲也の「ニライカナイの空で」は、新進の作家が精一杯の力を尽くして書き上げた作品に特有の爽快さがある。父親が破産したため東京にゐられなくなった12歳の少年が、福岡県田川に住むかつての父の戦友に引き取られて行く。石炭不況に喘ぐ1963年の炭坑町。そこで少年は自分が育ったのとはまるで違った生き方をする人たちを知り、冒険に心躍らせ、めざましく成長する。年少の読者もきっと、作者が作品にこめたメッセージを正確に受け取るだろう。

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