第23回坪田譲治文学賞受賞作
『しずかな日々』(講談社刊)
耶月美智子著
第23回坪田譲治文学賞選考委員会は、平成20年1月21日(月曜日)午後3時から東京都千代田区平河町で開催され、選考委員会の五木寛之、砂田弘、高井有一、竹西寛子、立松和平、西本鶏介(50音順・敬称略)の委員6名で行った。
選考委員会で、平成18年9月1日から平成19年8月31日までの一年間に全国で刊行された単行本の中から、大人も子どもも共有できる優れた作品という観点から予備選考委員会を通過した候補作品4編を、一作ずつ慎重に審議した結果、椰月美智子氏の『しずかな日々』を受賞作品に決定した。
耶月 美智子(やづき みちこ)
1970年4月24日、神奈川県生まれ。
2001年、第42回講談社児童文学新人賞を受賞した『十二歳』でデビュー。
ほかの作品に『未来の息子』。また『Teen Age』に短編「イモリのしっぽ」がおさめられている。
2007年、『しずかな日々』で、第45回野間児童文芸賞受賞
このたびは本当にどうもありがとうございます。大変うれしく、感謝の気持ちでいっぱいです。
私は、子どもが主人公の作品を書く機会が多いのですが、実は物語を書くとき、児童向けに書いているという意識はほとんどありません。むしろ大人の方にも読んで頂きたいという気持ちで書いています。
坪田譲治文学賞の『大人も子どもも共有できる世界を描いた作品』という理念は、まさに私が求めるものであったので、なによりもうれしいです。
いつか受賞できたらいいなあ、と漠然と思っていた賞です。歴代の受賞者の方々のご活躍もすばらしく、憧れの賞でしたので、今回の受賞は大きな励みとなりました。
心より感謝申し上げます。本当にありがとうございました。
小学五年生の光輝は、新学期の教室にもなじめないような控えめな性格。しかし、お調子者のクラスメイトに野球に誘われてから、たちまち毎日が楽しく色づいていく。そんな最中、突然、母が会社を辞めて引っ越すと言い出した。初めて、嫌だという強い気持ちを抱く光輝。
彼が選んだのは、これまでどおりの母との暮らしではなく、幼い頃に一度会ったきりの、田舎のような昔ながらのうちにすむおじいさんとの二人暮らしだった。
何気ない日々のなかで、生きる決意と誇りを得ていく少年の、確かな成長物語。
(解説:講談社 編集担当)
タイトルそのままの「しずかな日々」のなかで、すこやかに成長していく少年をリアリティゆたかに描いた物語。主人公は母子家庭の小学五年生、勉強もできないし、運動もからきしだめだが、理解のある友人に出会ったり、やさしさときびしさを兼ね備えた祖父と暮らすことで、何事もしずかに受け入れる生き方を身につけていく。これという事件は起こらないのに、ストーリイにメリハリがあり、文章も緻密で、完成度も高い。
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