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理論と実践を往復する~第98回日本社会学会大会での学び~

[2026年2月26日]

ID:79562

「ユース活動支援助成金」事業報告 (Life is 横山浩花)

はじめに

私は、岡山ESDプロジェクト ユース活動支援助成金を受け、第98回日本社会学会大会に参加しました。本学会への参加は、日頃の実践を学術的な視点から振り返る貴重な機会となりました。理論的・実証的な議論に触れることで視野が広がり、今後の活動を考える上で多くの示唆を得ることができました。このような機会を支援していただいたことに、心より感謝申し上げます。

私の活動と、学会参加への経緯

みなさんは、「性教育」と聞くと何を思い浮かべますか。体の仕組みや思春期の変化を学ぶものだと思う人が多いのではないでしょうか。実は、大学2年生までの私もそう考えていました。

しかし、卒業論文の執筆に取り組む中で、世界では「包括的性教育(Comprehensive Sexuality Education)」という教育があることを知りました。これは、妊娠の仕組みや体の変化だけでなく、人間関係、性の多様性、ウェルビーイング、ジェンダー平等などを、人権を基盤に学ぶ教育です。また、固定的な「男らしさ・女らしさ」を問い直し、自分で考え、決める力を育てる教育でもあります。そのため、ジェンダー平等を支える土台になるものです。

ユネスコなどの国連関連機関は「国際セクシュアリティ教育ガイダンス」を示し、包括的性教育の国際的な指針も整えています。それにもかかわらず、「日本では十分に広がっていないのはなぜだろう」と考え、大学では、日本の性教育をテーマに卒業論文に取り組みました。さらに、大学院では社会学の立場から、1990年代後半から2000年代前半に起きた「性教育バッシング」について研究しました。

大学院時代には、研究と並行して実践活動にも取り組みました。第68回国連女性の地位委員会(CSW68)への参加や、岡山県内でのアンコンシャス・バイアスや人権をテーマとしたワークショップの実施など、包括的性教育とジェンダー平等に関する活動を続けてきました。現在所属している「Life is」は、包括的性教育を通して「幸せに生きる土台づくり」を応援する団体です。私もその理念に共感し、研究や実践の経験を生かしながら活動を続けています。

2025年3月に大学院を修了し、現在は社会人として働きながら活動を続けています。研究という立場からは一度離れましたが、自分の実践を改めて学術的な視点で整理し直したいという思いが強くなりました。また、性教育やジェンダーをめぐる議論は常に更新されています。今、学問の世界でどのような議論が行われているのかを学びたいと考え、大学院時代にも参加していた日本社会学会大会に、一人の実践者として参加することを決めました。

日本社会学会大会で学んだことと今後の活動への活かし方

2025年11月15日・16日の2日間、一橋大学国立キャンパスで開催された「第98回日本社会学会大会」に参加しました。本学会は、全国の社会学研究者や学生が集まり、最新の研究成果や理論について発表・議論を行う全国規模の学会です。

学会では主に3つのセクションに参加しました。ここでは、特に印象に残った学びと、それを今後どのように活動に活かしていきたいかについて述べます。

1.活動を続けるための「軸」の大切さ

「性・ジェンダー」というセクションでは、メンズリブ運動(1990年代の日本で始まった、男性によるジェンダー平等を目指す運動)や、大学での生理用品無料設置運動など、ジェンダーに関わるさまざまな活動・運動についての研究報告がありました。

その中で特に印象に残ったのは、もともとは地域や学校の身近な課題から始まった活動が、東京など他地域から注目されたり、影響力の大きい研究者や活動家と関わったりする中で、少しずつ活動の意味づけや方向性が変わっていったという事例です。その結果、当初の目的が見えにくくなり、活動が続かなくなってしまったケースも紹介されました。

これらの報告から、活動を続けていくためには、「なぜこの地域で行うのか」「どのような課題意識から始まったのか」「誰の声に応えようとしているのか」といった点を、企画段階から明確にし、活動の中でも確認し続けることが大切であると学びました。

外部からの評価を受けたり、他地域で活動している人とつながったりすることは、とても重要です。成功事例から学ぶことも多くあります。しかし、何でも取り入れればよいというわけではありません。今後の活動では、活動の軸を明確にし、大切にしていることがぶれないように意識しながら取り組んでいきたいと思います。

2.活動を記録し、未来へつなぐことの大切さ

次に学んだこととして、講座やイベントの実施背景、議論の過程、参加者の反応などを継続的に記録していくことの重要性をあげます。これも「性・ジェンダー」のセクションでの報告から学びました。本来は地方でも行われていた活動・運動が、十分に記録や整理がされないまま時間が経ったことで、いつの間にか東京や大阪を中心とした運動として認識されるようになったという事例が報告されました。つまり、地域で生まれた大切な取り組みも、きちんと記録しなければ、その意味や背景が見えなくなってしまう可能性があるということです。

この報告を聞き、地域での実践を「やって終わり」にするのではなく、「なぜ始まったのか」「どのような議論があったのか」「参加者はどのように感じたのか」といった過程を残していくこと自体が、重要な活動の一部であると強く感じました。今後は、Life isの活動においても、講座やイベントの背景や議論のプロセスを意識的に記録し、岡山で行ってきた実践の意味を将来へつないでいきたいと考えています。

3.社会問題を多角的に捉えることの大切さ

3つ目に、「インターセクショナリティ」という考え方から学んだことを紹介します。インターセクショナリティとは、性別だけでなく、年齢、障害、国籍、経済状況、社会的立場など、さまざまな要素が重なり合うことで、人の経験や不利な立場が形づくられるという考え方です。この概念に特化したセクションでは、概念の整理や最近の研究動向について複数の発表がありました。

インターセクショナリティの議論を通して、私が特に大切だと感じたのは、ジェンダーの問題や社会問題を、ひとつの属性だけで考えないことの重要性です。例えば、「女性だから不利」「男性だから生きづらい」といったように、性別だけで説明してしまうと、その人が置かれている本当の状況は見えにくくなってしまいます。実際には、年齢、障害の有無、国籍や文化的背景、経済状況、住んでいる地域など、さまざまな要素が重なり合いながら、一人ひとりの経験や困難さが形づくられています。さらに、その背景には歴史や社会の仕組み(社会構造)も関わっています。だからこそ、ジェンダーや差別・格差の問題を考えるときには、単一の視点に還元せず、多角的に捉えることが必要だと改めて学びました。

この学びは、今後の出前講座やワークショップにも生かしていきたいと考えています。講座を聞いてくださる方々も、それぞれ異なる立場や背景を持っています。今後は、その違いを前提にしながら、一人ひとりが自身の経験と重ねて考えられるような伝え方をしていきたいと思います。そうすることで、ジェンダーや差別の問題を遠い社会の出来事としてではなく、自分の身近な問題として感じてもらえるような講座づくりを目指していきたいです。

さいごに

今回の学会参加を通して、社会運動や地域活動の事例報告とその分析から、活動を継続していくための視点や記録の重要性といった「実践のあり方」について学ぶことができました。また、インターセクショナリティという概念を通して、ジェンダーや社会問題をどのような枠組みで捉えるのかという学術的な議論にも触れることができました。これらは、冒頭でも述べたように、自身の実践を改めて学術的な視点から整理し直したいという思いに応える機会でもありました。さらに、研究という立場を離れた今だからこそ、理論と実践を往復しながら、自分の活動の意味や立ち位置を問い直すことの大切さを実感しました。

加えて、今回の学びである活動の軸を明確にすること、地域の実践を記録し継承すること、多様な立場や背景を踏まえて社会問題を多角的に捉えることは、ESDの実践とも重なる姿勢であると感じています。

今回得た3つの学びを今後の出前講座やワークショップに丁寧に生かしながら、岡山地域において対話を広げていきたいと考えています。そして、引き続きLife isにおいて包括的性教育の実践を重ねながら、より多くの人が自分らしく生きるための「幸せに生きる土台づくり」へとつなげていきたいです。

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市民協働局市民協働部SDGs・ESD推進課

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