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第12回アジア太平洋RCE会議

[2019年10月23日]

ID:38521

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特定非営利活動法人co2sos 黒住知代

第12回アジアRCE太平洋会議について

アジア太平洋地域の、ESDのための地域拠点(RCE)が集まる第12回アジア太平洋RCE会議(以下、RCE会議)が2019年6月5日から7日に開催されました。この会議の主な目的は、活動のシェアとそれらを踏まえた今後のRCEネットワーク活用について話し合うことで、2日目には「ESDを通じた低炭素社会の実現」がテーマの事例発表がありました。
この記事では、会議の参加と、会議中の事例発表を中心に、会議に参加して得られた経験についてご紹介させていただきます。


参加者全員の集合写真

参加者全員で記念撮影

会議参加のきっかけ

私がco2sosのボランティアスタッフを始めたのは、環境教育に興味があったからでした。まずは人と科学の未来館サイピアで行われている企画のスタッフをさせていただき、その後、自分の得意なことを活かせるようにと、イベントのポスター作成、英語でのco2測定のマニュアルやHPの作成、パラオでの調査に携わってきました。どのような工夫をすれば多くの人を巻き込むことができるか、協働を進めていくことができるかを学びたいという気持ちで活動に取り組んできました。

そんな中、中国・杭州市でRCE会議が開かれること、そして会議のテーマが低炭素社会であることを知り、今まで自分がco2sosをお手伝いさせていただいた活動の集大成として会議への参加と事例発表を行うことを決めました。

バーチャル科学館の活動とは

co2sosの活動はインターネットを利用するものが多いです。そのうちのひとつが、今回活動事例として発表したバーチャル科学館です。
バーチャル科学館とは、世界中の専門家によって作られたネット上に存在する仮想3D空間の中に構築された科学館のことで、そこには現実を模した世界が拡がっています。普通なら見られない深海や、恐竜がいる白亜紀など、時空を超えてアバター(分身)を介して仮想世界を体験することができますし、地球全体の植生や二酸化炭素濃度の変化を宇宙から見たりすることもできます。

この科学館を用いた学習により、子どもたちは、地球温暖化に関わる知識を身につけると同時に、自分で調べたり考えたりする力や科学への興味を育んできました。科学館はインターネット上にあるため、世界中どこからでも見ることができますし参加することができます。そこで、私たちは海洋研究開発機構(JAMSTEC)のシニアスタッフの方に、遠隔地からバーチャル科学館のレクチャーをしていただいています。そしてこのイベント会場では、バーチャル科学館をより楽しめるよう、地域の大学生がサポートしています。

バーチャル科学館のレクチャーの様子

バーチャル科学館の様子

この活動を海外の皆さんに知ってもらうことができれば、さらにバーチャル科学館をグローバルに活用していくことができます。そこで、自分たちの活動とその意義を知っていただくことを目的に発表を行い、この機会がグローバルに協働するための第一歩になってほしいという思いで会議に臨みました。

事例発表

会議で発表させていただけることが決まってから、インターネット上の協力者を含むco2sos、そして岡山市役所の皆さまにご協力いただき、発表までの準備を行いました。特に、一緒に会議に参加されていた岡山市役所の小西さんには、発表の前日の夜まで原稿とスライドの推敲で大変お世話になりました。「相手に何を伝えるべきか、どのような工夫で短い時間で記憶に残るプレゼンにするか」という視点でいただいたコメントは、co2sosの活動を今後学生が主体となって展開していく上でも非常に役立つと感じました。
そしていよいよ発表当日。会議の参加者は、NPOに所属している人や、ユースが少なかったこともあり、自分の発表がどのように受け止められるのか不安でした。会議前に風邪をひいておりうまく話せるかという不安もあって、緊張しながらプレゼンに臨みました。

前に立って深呼吸をし、まずは挨拶をします。ギリギリまで原稿を練っていたので、きちんと話せば必ず伝わると自分を落ち着かせます。話し始めると次第に相手にちゃんと伝わっているということがこちらにも分かり、それからは落ち着いて発表することができました。

プレゼンの様子

落ち着いて発表することができた

プレゼンの前半にお見せしたのは、バーチャル科学館の様子をまとめた動画です。普段は子どもたちと一緒に見ている内容ですが、今回は各国の代表の皆さんに見てもらいます。バーチャル科学館の世界に皆さんが入っていくのが見て取れました。楽しんでいただけたようです。

動画も交えてプレゼン

バーチャル科学館の動画も交えて発表

後半では活動の成果や今後の展望についてなど、協働の足がかりとなるような内容について説明しました。
プレゼン後、各RCEから声をかけていただくことができました。
参加者から「視覚的に訴えるような資料を教育に利用することは重要だと感じた」
「自分のRCEの活動と似ているので、一緒に協働ができそうだ」
「もっと海外にこの活動が広められるよう、レクチャーの翻訳を進めるべきだ」
「レクチャーだけでなく簡単な漫画やアニメを作れば低学年の子でも学習できるようになるのではないか」
このような助言・叱咤激励を頂いて、私たちの活動にとても多くの方が興味を持ってくださったことが実感できました。

プレゼンの最後でうっかりスライドを見せ忘れるミスもありましたが、それも含めて温かく見守っていただけたこと、そして、短い時間ではありますが、聴衆の皆さんに、このような環境教育を行うことの意義や、この活動をどう発展させられるかについて思いを巡らせていただけたことを非常に嬉しく思っています。

会議で学んだアジア太平洋のRCEの価値観

発表以外では、アクションプランの作成やワークショプでの話し合いなどで多くのRCEと交流することができ、協働が実現する可能性を感じました。特に会議3日目のワークショップでは、お互いの活動について腰を据えて話し合うことができました。

ワークショップではグループワークが中心だったので、各RCEの課題、活動、今後の展望をグループ内でシェアした後、どのようにRCEネットワークを活用できるかを整理しました。
このワークを通して、改めて他の地域にも私たちと同じ考えに基づいて活動している方がいるということがわかりました。自分たちの活動について話していると、自然に考えがまとまっていきました。子どもたちが科学技術やデータに触れて、自分で調べたり考えたりすることが重要だという意見や、科学データの取得を各RCEで協力して行えば活動の充実とネットワークのつながりの強化の両方が達成できるのではないかという意見が出され、グループの意見として会場全体にも提案することができました。
いろんな国の人が集まって、多種多様なESD活動に取り組んでいますが、その根底に同じ考えがあれば、活動について理解してもらいやすく、協働するハードルが低くなることを実感することができました。

意見交換

各国の参加者と意見交換

最後に

今回のようにグローバルな視点で意見をいただくということは日本では得られない貴重な経験です。情報発信と交流を続けていくためにはどうすればいいか、そして得られたつながりをどのように活用できるか、今後の活動について今一度見直しを行なっています。

また、今回の会議を通してユースが岡山市全体のESD活動を継続して盛り上げていくのにとても重要だと思いました。RCE会議では地元の大学に通うユースが、ボランティアスタッフとして常に私たちをサポートしてくださいました。会議の最後にはプレゼン発表を通じて彼らの考えを聴くことができ、大変盛り上がりました。各RCEからの参加者はユースの活躍を楽しみにしていて、これからの未来を担うユースが自分たちで考え、発信し、行動していくことが必要だということを共通認識として持っています。この気運をぜひ日本のユースにも知ってもらいたいと思います。

また、個人的な話になりますが、この7月からフィリピンへの半年間の留学が始まりました。留学の前にアジア太平洋地域の多くの価値観に触れることができたのは、留学をする時の自信につながりました。
最後に、RCE会議を運営してくださった皆様、そしてサポートしていただいた岡山市役所、co2sosの皆様に感謝の意を表したいと思います。
この経験を糧に大学院での勉強、そしてco2sosの活動をより良いものにしていきたいと思います。

黒住知代(岡山大学大学院環境生命科学研究科博士前期1年)

大学1年生からco2sosの活動に関わりはじめました。部活動でも学内外の環境啓発活動に関わってきました。今年の4月から大学院に進学し、フィリピンにある棚田保全のための研究を行なっています。現在は研究のためにフィリピン大学に留学中で、フィリピン人や他の国から来た留学生と生活を共にしています。色々な価値観に触れることを忘れないでいたいと思います。