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子どもの育つ環境づくりを文化と遊びから学び、探るin宮城

[2021年12月6日]

ID:38626

NPO法人岡山市子どもセンター 事務職員 久川春菜

知る、見る、学ぶ~in宮城~

NPO法人岡山市子どもセンターへ入職して2年目の春、「子どもの文化や遊びのことについて深めたい、それらのことに携わっている方々とお会いして取り組みなどを見聞きしたい」という思いが心の中に芽生えていました。この芽を育てるためにはどうしたらいいのか考え、まずは職場のスタッフに相談をしました。すると代表から「この夏に宮城県で子どもと舞台芸術大博覧会というのがあるけど観に行ってみる?」と声をかけていただき、私は「行きたいです」と答えていました。そして今回、「令和3年度岡山ESDプロジェクトユース活動支援助成金」に採択され、2021年の夏、子どもの文化を遊びや舞台芸術鑑賞から学ぶということを目的として、「子どもの居場所○○(まるまる)」、「海岸公園冒険広場」、「子どもと舞台芸術大博覧会in宮城」を訪れました。

各場所では、普段の生活では見ることができない場面にたくさん遭遇しました。宮城で出会った方々の仕事に対する熱意や姿勢に刺激を受け、帰岡後は、自分自身の気持ちがより一層前向きになり、学んだことを職場で活かし、現地で知った勉強会に参加してみるなどして、芽をどんどん育てている最中です。どんな花を咲かせていくのか自分でもわくわくしています。

今回は、宮城を訪れた場所で印象に残っていることを報告します。

子どもが主役になれる場を柔軟に

初日は、一般社団法人プレーワーカーズが運営している「子どもの居場所○○(まるまる)」と認定特定非営利活動法人冒険あそび場‐せんだい・みやぎネットワーク等が指定管理者となって運営している「海岸公園冒険広場」へ行きました。ここでは、プレーワーカーズの代表理事の須永力さん、プレーワーカーの廣川和紀さんと廣川紘子さん、冒険あそび場‐せんだい・みやぎネットワーク理事のプレーリーダーの根本暁生さん、プレーリーダーの岩渕健史さんにお会いしました。

最初に訪れたのは、古民家とその庭を使って、子どもたちがのびのびと自由に遊べる居場所づくりを行っている子どもの居場所○○(まるまる)です。○○(まるまる)には子ども服のフリーマーケットコーナー、本や漫画のある図書コーナー、授乳や着替えをする時、ちょっと一人になりたい時に使えるカーテンで仕切った部屋、誰でも使える台所などがありました。初めて訪れたにも関わらず、どこか懐かしい気持ちになり、居心地のよさを感じました。裏庭には、手作り遊具や草花がたくさん茂っていて、虫を捕まえたり、時には須永さんが飼っているニワトリが現れたり、動植物とも触れ合うことができる空間が存在していました。その中に、子どもたちが作った秘密基地がありました。大人のサポートも受けながら少しずつ作り上げていったそうです。この秘密基地には地下もあり、子どものみ入れるというルールがあることも教えてもらいました。廣川さんたちは、「子どもたちが主役になれる場を柔軟に作り上げていくこと」を大切にしているとおっしゃっていました。大事な視点だなと改めて気づかされました。

子どもの育つ環境づくりを文化と遊びから学び、探るin宮城(1)
子どもの育つ環境づくりを文化と遊びから学び、探るin宮城(2)

伝えていくこと、安心して遊べる場をつくること

次に、海岸公園冒険広場へ向かいました。この公園は東日本大震災時に大津波で大きな被害を受けた場所でもありました。広い芝生内には「避難の丘」という丘があり、津波警報等発令時の一時避難場所にもなっています。この広場は海岸線から約300mの場所に位置しており、広場の先には穏やかな海が見えました。その海を見ながら、現地で震災当時の状況をプレーリーダーから伺い、目の前に見える穏やかな海が大津波で迫ってきたと思うと信じられず、想像力が追いつきませんでした。震災のことについて間接的に知っていたつもりではいたものの、現地を訪れ、知ることからインプットされる量や質は何倍も多いことに気づかされました。

また震災後、冒険あそび場‐せんだい・みやぎネットワークでは、広場の再開を目指すと同時に、子どもたちの「心のケア」の役割を担うことも目指し、県内の遊び場活動にプレーリーダーを派遣する取り組みをされていました。遊びを通じた心のケアは一体どんなことをするのか気になっていたので、プレーリーダーに質問しました。「子どもたちが普段通りに安心して遊べる場をつくることを大切にしている」とおっしゃっていました。シンプルでいて奥深さを感じ、このことを意識して、子どもや大人も安心してのんびり過ごせる場づくりを、より勉強していきたいと思いました。

この日の冒険あそび場には、小学生くらいの子が、アスレチック迷路のようなものを作っていました。土を掘り、水を流し、木の板を橋にしてみたりと、目の前の工程に全集中かと思いきや、手を止め、その場から少し離れたところで、全体を見渡し何やら考え込んだりしていました。この一連の姿がとてもかっこよく、創作意欲をくすぐられました。年齢に関係なく、人は誰からでも学ぶことがあると再認識しました。

子どもの育つ環境づくりを文化と遊びから学び、探るin宮城(3)
子どもの育つ環境づくりを文化と遊びから学び、探るin宮城(4)

本物に触れる、新しいことへの芽吹き

子どもと舞台芸術大博覧会では、音楽、舞踏・芸能等、舞台劇、人形劇・影絵劇といったジャンルの11作品を鑑賞、シンポジウムや基調講演に参加しました。初日は「オズの魔法使い(withオーケストラ)」を鑑賞しました。会場前には、作品の影絵体験コーナーがありました。子どもたちは、スリーンに映った人や動物を追いかけたり、向きあって会話をしている動きをしてみたり、即興で物語が生まれ、見ていておもしろかったです。基調講演では、「座・高円寺」の芸術監督を務める佐藤信さんが「コロナ禍でより『Share分かち合う』、『Networkingつながる』、『Transboundary境界を越える』ということに対して、大きな価値の変換が起きていて、これらのことは新しいことへの芽吹きでもある」と話されていました。また、子どものことを考える際には、「子どもたちのために」ではなく、「子どもたちとともに」考えるということの大切さについても話されていました。この2点は印象的で興味深く、これから何かを企画する際はこのような視点も入れて考えていきたいと思いました。

4日間に渡っての大博覧会では、演者や登壇者、運営スタッフの方々から溢れ出る熱量に刺激を受けました。それぞれが自分の得意とする分野で、子どもの健やかな成長を願い活動されている姿がとても魅力的に見えました。舞台鑑賞は高尚なものという印象があったのですが、気軽に楽しく鑑賞できる作品も多く、日常生活の遊びに応用できそうなこともあり、もっと身近なものであると気づきを得ることができました。

子どもの育つ環境づくりを文化と遊びから学び、探るin宮城(5)

学びを肥やしに

コロナ禍の中、5日間も行きたい場所へ行き、会いたい人に会えたこと、本物に触れる経験ができたことは本当にありがたいことだなと思いました。関わってくださった方々に改めて感謝いたします。

また、子どもにとって「遊ぶこと」は生きるために必要不可欠なことだと強く感じました。全ての子どもたちには「遊ぶ権利」、「休む権利」、「文化的・芸術活動に自由に参加する権利」などがあります。子どもたちがこの大切な権利を存分に使うことができる場が、私たちの住んでいる町にはどれだけあるでしょうか。今こそ、昔、子どもだった私たちが今の子どもたちに様々な体験ができる場をつくりながら、それが持続可能になる仕組みを考える必要があると思います。このように綴っているものの、私自身もまだまだ行動に移せていないのが現状です。そのために、いろいろな方々とつながり、子どもたちがワクワクドキドキするような体験の場をつくること、時には「子どもたちとともに」そういう場をつくる人になれるよう行動していきたいです。

子どもの育つ環境づくりを文化と遊びから学び、探るin宮城(6)

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