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その10【「行政と『協働』」することへの不安を越えて】

[2015年3月18日]

ID:40464

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「つながる!協働リレーコラム」では、岡山で活躍するNPO法人の皆さんに、自分たちの活動や経験を通じて、「協働」に関して感じていること・考えていることについてコラムでご紹介いただきます。
※なお、内容は執筆当時のものです。

フリースペースあかね 中山遼さん

プロフィール

岡山市出身。スタッフとして、フリースペースあかねの運営や子どもたちのサポートに携わっています。
自身も不登校の経験を持ち、不登校に悩む子どもたちに寄り添いながら、自分らしく生きる道を歩めるようにサポートしています。

フリースペースあかね 中山遼さん

手探り状態から始めた市民協働推進モデル事業に関することや今後の展望、そして私自身が感じたことについてお伝えします。

フリースペースあかねとは?

フリースペースあかね(以下、あかね)は、不登校の子どもや引きこもりの若者、その保護者等が集い安心して過ごせる居場所として2001年にオープンしました。子どもたちはあかねで自由に過ごす時間を通じて、自然体でいられるようになり、自分らしい人生を歩むためのエネルギーを養います。
あかねでは希望に応じて学習の指導を行ったり、定期的にギターやヨガ等、子どもたちの趣味や興味の幅を広げる教室を開催したりしています。

あかねが迎えた存続の危機

フリースペースあかねの写真

フリースペースあかね

あかねは、映画「あかね色の空をみたよ」※の制作や上映運動に携わった人を中心に、2001年にオープンした場所です。15年の歴史の中では資金不足や人手不足などが原因で、何度も存続の危機を迎えました。

しかし、「不登校や引きこもりに悩む子どもたちの居場所としてあかねを守っていきたい!」という思いで立ち上がったスタッフは、2014年春に以前から親交のあった教育委員会を訪問しました。そこでは、行政の方々もあかねの重要性を十分認識してくださり、「市民協働推進モデル事業別ウィンドウで開く」(以下、協働事業)に応募することを勧めてくださったのです。

※「あかね色の空をみたよ」:小学5年生から中学3年生までの不登校となった主人公が、定時制高校に入学してから出会った温かい仲間や先生に支えられて前向きに立ち上がっていく過程を描いた作品。原作は、自らの体験を綴った堂野博之さんの詩画集「あかね色の空を見たよ-5年間の不登校から立ち上がって」。

行政と協働することで、あかねの良さが壊れてしまうのでは…

あかねの様子

協働事業ではあかねが「行政の事業を実践する場」となり、行政が資金面や広報面でサポートするという形が想定されました。

「子どもたちが何もしなくても認められる居場所」が、「行政の事業」という枠に合わないのではないか。
あかねが持つ、子どもたちが安心して過ごせる雰囲気が壊れてしまうのではないか。
応募するにあたっては、様々な不安が頭をよぎりました。

そんな私たちの不安に対して行政の方も柔軟に向き合ってくださり、あかねの趣旨や雰囲気を壊すことなく協働事業を行えるように一緒に事業計画をつくっていきました。行政の方が、「適応指導教室」とはちがう役割と存在意義を認めてくださっていたことを知り、とても心強くなりました。
安心した反面、15年の歴史を持つあかねの存在意義を見直すために何度もスタッフ同士で話し合いを行ったり、申請書類を作成したりしなければなりませんでした。初めてのことばかりで手探り状態の中、何度もくじけそうになりましたが、これらの作業を通じてあかねの大切さを再認識することができたのではないかと思います。

協働事業について

展覧会の写真

展覧会の様子

協働事業では、あかねを市民に広く知っていただくために、2014年8月23日(土曜日)・8月24日(日曜日)に展覧会を開催しました。
展覧会では、あかねに通う子どもたちの豊かな感性が表れた作品を展示し、多くの人が会場に足を運びました。中には連日来られた方も!子どもたちは、学校・家庭以外の人に自分の作品を見てもらえたことで、喜びを感じたり新しい刺激を受けたりしただけでなく、自分の作品を誉めてもらえたことで自信を持つこともできたようです。

あかねの集いの写真

あかねの集いの様子

また、2014年11月9日(日曜日)には、「あかねの集い 当事者が語る!本当の気持ちと居場所のちから」を開催し、あかねのOB・OGと不登校の子どもを持つ保護者によるパネルディスカッションと、映画「あかね色の空を見たよ」を上映しました。パネルディスカッションでは、「あかねってどんなところ?」、「(保護者の方へ)どうして学校へ行かせたいのですか?」等をテーマに、それぞれが自分自身の経験や悩み、感じたことを話し合いました。
あかねという居場所を通じて、不登校や引きこもりの経験を乗り越え前向きに生きるパネリストたち。そんな彼らの姿に感銘をうけた参加者からは、「学校に行っても行かなくても、自分らしく、楽しく生きられるといいなと思います」、「大人よりもしっかりしていて心を打たれました」等の温かい感想が寄せられました。

私たちの良さを生かして、切れ目のないサポートを行っていくために

これまでにも行政とのつながりはあったのですが、協働事業を通じ、改めて各々の役割について話し合うことができました。子どもは生まれてから義務教育を受けて、高校や大学に進学し、やがては就職して社会に出ていきます。その過程を行政等の様々なサービスが支えてくれます。

しかし、中には不登校になったりひきこもりになったりと、様々なサービスの枠組みから外れてしまう子どももたくさんいます。そこで苦しんでいる子どもが再び立ち上がれるようにサポートすることは、私たちのような民間団体の柔軟性を活かせるフィールドだと思います。

子どもが大人になるまでの過程を切れ目なくサポートしていくために、行政と協働して取り組むことが必要不可欠であると感じています。今後は、学習支援や就労支援の分野へも活動の幅を広げていきたいと考えています。
冒頭でも述べたように、「行政との協働であかねの雰囲気が壊れてしまうのではないか」という不安は今でも抱えています。しかし、あかねに携わる人々がつくってきた「居場所の力」を信じ、そしてあかねの存在を大切にしてくれる行政との信頼関係を大切に取り組んでいきたいと思います。

協働事業を通じて出会った人々

「持続可能な岡山市をつくるための課題解決ワークショップ」の写真

「持続可能な岡山市をつくるための課題解決ワークショップ」の様子

協働事業に取り組むようになって、「持続可能な岡山市をつくるための課題解決ワークショップ」等、様々な立場の人が集う場に参加するようになりました。そこで出会ったのは、色んな働き方を通じて活き活きと活躍する「ユニークで魅力的な人々」でした。

正直、大人に対して「普通に学校を卒業して正社員として働く」というイメージを持っていましたし、そんな大人になることに対して抵抗感を持っていました。
しかしユニークで魅力的な人たちとの出会いを通じて、「大人とはこうだ!」と思い込んでいたイメージが壊れて視野が広がっただけでなく、多様な働き方・生き方に触れてみたいと思うようになりました。
これは大きな大きな収穫です。彼らと協働して取り組んでみたいこともたくさんあります。

また、私自身も色んな経験を通じユニークで魅力的な大人になっていきたいと思います。そうすれば、不登校や引きこもりになったことで「普通の子どもとはちがう」と自分を否定してしまっている子どもたちが希望を持てるようになるのではないでしょうか。
今後も、子どもたちが色んな大人と出会うきっかけや、多様な生き方に触れることのできる場もつくっていけたら素敵ですね。

のっぷ

次回は、NPO法人フォレストワンで活動する森脇さんのコラムだよ!お楽しみに!