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その11【協働事業を考える~官民で解決すべき課題を共有するためには~】

[2015年4月8日]

ID:40481

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「つながる!協働リレーコラム」では、岡山で活躍するNPO法人の皆さんに、自分たちの活動や経験を通じて、「協働」に関して感じていること・考えていることについてコラムでご紹介いただきます。
※なお、内容は執筆当時のものです。

NPO法人フォレストワン 森脇一雄さん

プロフィール

大学の就職支援で卒業生の就職率100%を達成してきた25年間の経験を生かして、初めての就職活動に学生が楽しく取り組めるようにNPO法人フォレストワンを立ち上げ、「就活おじさん」として、学生たちのサポートをしています。

NPO法人フォレストワンの森脇一雄さん

今年度岡山市の協働条例制定に向け、平成27年度市民協働推進モデル事業に提案した経験から、官民が協働して事業に取り組む際の「姿勢」や「ありかた」等について考えてみました。

NPO法人フォレストワンとは?

「就活おじさんの就活塾」を開催し、就職・転職・再就職等の求職活動を行う若者に対し様々なサポートを行っています。また現役の学生だけでなく、大学を卒業し就職してからも働く悩みを抱える人や非正規雇用の人や、離職した人、再就職したい人に対しても個別の相談・支援を行っています。

就職活動と早期離職の現状

2013年4月時点で、大学生の就職率は93.9%といわれていますが、喜んでばかりはいられません。2013年4月に就職した人のうち、32%が入社してから3年以内に辞めています。高卒での3年以内の離職率は50%にもなります。
どこに問題があるのでしょうか?入社してから学生時代とはちがう環境の中で、物理的にも、精神的にも多くの課題と向き合うことになります。入社した時は、将来の夢や目標がジェット風船のように膨らみ、やる気を持っていたはずですが、日々の課題と向き合う中で、次第に将来のことを考える気力が無くなり、「楽になりたい」という一心で辞めてしまうケースに多く出会います。

就職活動を始めてから社会人になって3年目までが重要です。この期間を乗り越えることができれば、辞める人の数は少なくなる傾向にあります。希望の会社に入り、人間関係・環境に恵まれ、困った時にフォローアップしてくれる「ところ」と「人」があれば、「辞める」という結論には達しなかった人も多いのではないでしょうか。

行政や大学の就職相談窓口では、相談に訪れる学生の数が特定の期間に集中するため、予約すら取れないことも多くあります。相談員の数も圧倒的に不足しており、一人ひとりの個性や希望にそったきめ細やかなサポートを行うことは困難です。ましてや卒業後の定着支援などできるはずもありません。

就職活動に関するセミナーの様子1

そこでNPO法人フォレストワンは、求職者等に対してその人その人の立場に立ち、個性や希望に沿ったきめ細やかなサポートを行っています。
具体的には、「就活力3倍UP」を目標に、就職活動の取り組み方を面談やセミナー形式で学びます。取り組み方を理解していく中で、実は自分自身を知ることになり、自分をきちんと具体的にアピールできる応募書類の作成や面接もできるようになります。また、様々な大学の学生や卒業生を交えての意見交換ができる場所をつくり、「楽しく就活する」「楽しく働く」ことを支援する機会もつくってきました。

就職活動に関するセミナーの様子2

「一人ひとりの個性や希望に沿ったサポートを行っていきたい」という思いで始め、若者たちが自分自身をちゃんと理解し、歩んでいけるようになることを支援する取り組みなので、「NPO法人」という形が一番柔軟に活動できると思っています。

社会を支える人を支える

私たちの活動は、若者たちが「働く」という人生の選択をしっかりできることの支援ですが、つまりは「働く」ことで税金を納め、「社会を支える人」になることを支援しているのだと考えています。仕事を辞めてニートやフリーターになってしまったら、もしかしたらいずれ「社会から支えられる人」にならざるを得ないかもしれませんよね。

国民の生活は、行政が提供する教育や社会保障等の様々なサービスに支えられています。働いて納める税金がこのサービスの財源となっています。つまり、税金を納める人が増えるということは、行政サービスを向上させ、私たちの生活を豊かにすることへとつながっていくのです。

こうして考えてみると、「就活力が低い」「離職率が高い」という現状を、学生や若者たちの「個人的な問題」として捉えることはできません。行政や私たち市民に関わる「社会の課題」として捉え、解決に向けて取り組んでいく必要があるのではないでしょうか。

官民の協働を進めていくために

若者の就職後の定着支援事業を平成27年度市民協働事業に提案しましたが、担当課との協議が不調に終わりました。担当課の方にはお忙しい中、何度か話し合いの場を設定していただきました。そのことには心から感謝申し上げます。
しかし残念ながら、課題解決のための話し合いができたという実感はありません。担当課の方から提案内容についての「質問」は出されましたが、「意見」をお聞きする機会がなかったからです。当法人の力不足は真摯に反省するものですが、同じような事例が他にもあるということをお聞きしたので、今回残念に感じた部分について、今後の教訓とするためにあえて書き留めておきたいと思います。

(1)社会課題を行政と市民団体が共有すること

行政各課が現在取り組んでいる課題が社会課題のすべてではなく、NPO法人が取り組みたい課題も社会課題のほんの一部でしかないでしょう。その前提にたって、提起された課題が、解決に向けて取り組まなければいけない課題なのかどうか、その緊急性や必要性、発展性はどうなのかを、両者で協議することが大切です。そのためには、行政の皆さんには各課が向き合うべき社会課題を、幅広く捉える努力をお願いしたいと思います。残念ながら行政が取り組まれていない課題や、当面取り組めそうにない課題は受け止められない傾向が伺えます。


(2)協働提案を受け付けるシステムを検討していくこと

解決すべき課題だと共有することができるならば、団体も行政も解決するために双方ができることを持ち寄り話し合うことが必要ではないでしょうか。団体からの提案事業の良し悪しを審査するのみでなく、互いにできることを話し合う中から協働が見えてくると考えます。
そのためにも課題解決を考えるワークショップの開催や、団体と担当課のマッチングの在り方等を含めて、協働提案を受け付けるシステムを検討していくことが必要です。私たちNPO法人も行政の考え方を理解する努力と、提案したい内容の社会的価値、行政としての意義を見出す努力を重ねたいと思います。

(3)課題解決型の取り組みを提案する力をつけること

団体から提案する事業についても、イベントやセミナー開催型の協働事業の提案となりがちですが、課題解決型の取り組みを提案する力をつけたいものだと考えます。課題解決型の事業ならば、事業を実施する中で、課題解決の方向性が見えてきます。解決の方向性が見えてくれば、次年度行政の施策として一緒になって市民サービス向上を目指して、活動していくことができます。ニーズ把握のための調査もその取り組み方の一つかもしれません。

(4)事業実施中の現況や進捗状況を公開すること

協働事業の実施が決定したら、団体が受ける補助金は税金です。行政職員同様、その事業の公開性が求められます。事業実施中の現況や進捗状況を公開し市民の理解を得ることが必要です。

岡山市の市民協働推進モデル事業の提案制度は始まったばかりで、官民での社会課題の共有と解決のための事業を実現させるためには、行政も私たちNPOももっと成長していくことが必要です。
NPO法人フォレストワンとして今後も様々な協働の輪を広げて、若者たちの「就労」問題を、行政・求職者・勤労者・市民と一緒になって考え、皆が楽しく働いて、幸せになっていけるよう取り組んでいきたいと思っています。

のっぷ

次回は、NPO法人岡山市子どもセンターで活動する美咲さんのコラムだよ!お楽しみに!