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その19【活動の仲間を増やしたいあなたと一緒に考える『どうお誘いするか』ということ(その2)】

[2016年3月3日]

ID:40532

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「つながる!協働リレーコラム」では、岡山で活躍するNPO法人の皆さんに、自分たちの活動や経験を通じて、「協働」に関して感じていること・考えていることについてコラムでご紹介いただきます。

※なお、内容は執筆当時のものです。

岡山県ボランティア・NPO活動支援センター「ゆうあいセンター」 センター長 森高寛行さん

ゆうあいセンタースタッフの集合写真

ゆうあいセンタースタッフ(後列左端が森高さん)

NPO法人岡山NPOセンター別ウィンドウで開く職員としてNPO活動支援に携わって5年目。現在、岡山県ボランティア・NPO活動支援センター(ゆうあいセンター)長を務めています。趣味は日曜大工と魚釣り。

伝えたいこと(2)ゆうあいセンターでのボランティア活動があなたにもたらすもの

ボランティア活動は、地域社会を健全に成り立たせていくための仕組みです。同時に、活動を通じて心の豊かさや生きがいを得ることができるものでもあります。

ゆうあいセンターのボランティアさん力作の壁絵

ゆうあいセンターのボランティアさん力作の掲示物

ボランティア活動に参加する理由は人によって様々ですが、「役に立っているという実感」が活動を継続させるモチベーションになるという点は共通しています。ゆうあいセンターの運営に関わっていただいているボランティアさんも、自分の取り組んだことで利用者さんに喜んでもらえることが嬉しいと言われます。ですから、利用者さんからの感想は必ずボランティアさんにお伝えします。それだけで、ボランティアさんは頑張れるのです。ボランティア活動は誰かのためでありながら、自分に返ってくるものなんだなと感じます。労働契約ではないからお金のやりとりは発生しません。そこには気持ちのやりとりだけがあります。その純粋性、あるいは温かさが人を惹きつけるのでしょう。

ただし、活動をしさえすれば自動的に意義が得られるということではありません。意義があったかどうかは、最終的には参加した本人が判断することだからです。ですが、私たちは意義が得られることを確信して、ボランティアさんを日々お迎えしています。

ゆうあいセンターのボランティアAさんのこと

ゆうあいセンターのボランティアさんの中で、Aさんという50代の男性がおられました。Aさんは大病を患って仕事ができなくなり、絶望して家でふさぎ込んでおられたそうです。リハビリを兼ねて、ボランティア活動を始めてはどうかというご家族の提案で、ゆうあいセンターに連れてこられたのが最初でした。

Aさんに取り組んでいただいたのは、地味な事務作業でした。はじめはあまり気乗りしない様子で心配していたのですが、私たちスタッフにとっては大きな助けになっていたので、日々お礼をお伝えしていました。するとその内に、Aさんがゆうあいセンターに足を運ぶ回数が徐々に増え、スタッフともよく会話をされるようになり、笑顔も増えました。「二度と社会の役には立てないと思っていた自分を、まだ必要としてくれる場所があるなんて思ってもみなかった」と、家でも嬉しそうに話されていたと、後にご家族からお聞きしました。
Aさんの飾り付けでフリマの会場をワクワク

Aさんの飾り付けでフリマの会場がワクワク感あふれる空間に

しばらくしてゆうあいセンターでフリーマーケットが開かれることになり、Aさんには飾りを作っていただくことになりました。それから毎日のようにやって来ては、一人で根気強く作業をしてくださり、たくさんの飾りができあがりました。開催当日、フロアを賑やかに彩ったそれらは、来館者の目を楽しませてくれました。

Aさんに教えていただいたこと

残念なことに、その素晴らしい光景をAさんは見ていません。作業が終わってフリーマーケット当日を迎えるまでの間に、闘病と社会復帰の道半ばにして亡くなられたのです。

Aさんがどのような思いで人生を終えられたのか、私には知るよしもありません。ですが、ボランティア活動を通じて、Aさんは一度見失った生きがいを、以前よりは小さいものかもしれないけれど、再び見つけられたと信じています。
ボランティア活動が、心の豊かさや生きがいを得ることができるものだということを、自信を持って言えるのは、Aさんにそれを教えていただいたからです。

「相手に受け止めてもらえるよう伝える」ことの大切さ

ここまで、ボランティア活動が「社会にもたらす意義」と「活動者にもたらす意義」の伝え方を、ゆうあいセンターの例をもとにご説明してきましたが、十分に伝わりましたか?不十分でしたか?それとも話が長すぎて辟易とされていますか?(ごめんなさい)


最後に反省を込めて、「相手に受け止めてもらえるよう伝える」ことが大切だという話で締めたいと思います。日時と場所と活動内容しか書いていないボランティア募集情報を目にすることがあります。活動の中には、素晴らしい意味ややりがいがあるに違いないのに、そのことが全く書かれていないのです。これだと、やりがいで参加を決めたい人の目には止まりません。逆に、熱い思いを大量に書き込んでいる募集チラシもあります。書かれていることは本当に大切なことばかりですが、読む人が活動者の長年の思いに最初からついていけるでしょうか。「すごく大事な活動だとは思うけど、自分にはちょっと・・・」と遠慮してしまうかもしれませんね。

メッセージのキャッチボール

「伝える」とは一方通行の行為ではなく、受け手がいてこそ成り立つ、メッセージのキャッチボールです。投げたいように投げるのではなく、相手が捕れる球を投げる。どんな球なら捕ってもらえるか、考えながら投げるのです。「頑張って投げているのにうまく捕ってもらえない」という時には、ちょっと手を止めて、投げ方を点検してみるとよいかもしれません。ゆうあいセンター自身も、日々点検と改善のくり返しです。


ボランティア活動へのお誘いは、誘う側と誘われる側の双方が、何をどの程度どうしたいと思っているかを察しながら、より適切な関わり方(関わらないという選択も含めて)になるように、情報や言葉を丁寧に・正直にお伝えして、合意を形成していく作業です。「巻き込む」というよりは「すり合わせる」ものだと考えます。
それぞれの立場や考えを尊重する。合意できなくても決して相手を責めない。客観的な情報提供や丁寧な意見交換を前提とした、互いを思いやるコミュニケーションを積み重ねていくことが、仲間や支援者を増やすことにつながるのではないでしょうか。
のっぷ

次はどんな団体が登場するかな?お楽しみに!