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その30【株式会社エコルヴェ 『りんのひとさじ』】

[2023年12月7日]

ID:55224

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「いきいき社会貢献」では、のっぷとティアが社会貢献活動に取り組む岡山の企業を取材します。第三十回は、株式会社エコルヴェ(以下「エコルヴェ」という)におじゃまし、校長の花房さんにお話を伺いました。

なお、内容は取材当時のものです。

コロナ禍をきっかけに、二度目の挑戦

エコルヴェは、人生を健康で心豊かに過ごす環境を提供するカルチャースクールです。薬膳・着付け・ヨガなど、衣食住と美容と健康に関する様々な講座を開講しています。こうした事業の一環として、規格外野菜をドレッシングやジャムに加工した、『りんのひとさじ』を製造販売しています。

実は、『りんのひとさじ』以前にも規格外野菜の加工事業を行ったことがありました。最初に取り組んだのはエコルヴェの設立以前、今から約15年前のことです。当時は料理教室を主宰していた花房さん。知人からの紹介で、トマト農家の方から「売れずに捨ててしまうから、料理教室で使ってほしい」とたくさんのトマトをもらったそうです。花房さんは「なぜ、きれいなトマトをたくさん捨ててしまうのか」と疑問を抱き、トマトの畑を訪れました。そこで、規格外野菜が廃棄されていることを知ったそうです。農家さんと話をするうちに「捨てられる野菜を何とかしたい」と思い、規格外になったトマトを使ったジャムの製造販売を始めました。

しかし、当時は「もったいないをなくそう」という考えやSDGsという言葉もありません。「本来捨てる、安い材料で作っているのに、なぜ値段が高くなるのか」と世間からの評価も厳しかったそうです。正規品と比べて規格外野菜は加工に手間がかかることに加え、農家さんへ対価をきちんとお支払するために、値段は高めに設定されていました。花房さんは「値段が高くても買ってもらえるような価値がないと、売っていくのは難しい」と感じ、材料が規格外であることは伏せ、『岡山で作った無添加のトマトのジャム』として販売していたといいます。しかし、大手企業が無添加のトマトのジャムを作り始め、「これは太刀打ちできない」と感じたため、加工事業は中断することになりました。

その後、令和元年にエコルヴェを開校し、翌年に法人化しました。しかし、その直後に新型コロナウィルスが流行し始めました。それまで通りに講座を開催することが難しくなり、花房さん自身に時間の余裕ができた頃、にんじん農家さんの現状や、岡山の加工食品を取り扱いたい大手企業がいることを知ります。花房さんは「今は時間があるし、やり残した事業でもあるし、規格外野菜のことをやるなら今だ」と感じ、令和2年の秋から構想を開始し、翌年1月から取り組みを始めました。取り組みを始めるにあたり、エコルヴェで薬膳と発酵を教えている先生に相談したところ、先生方も同じく新型コロナウィルスの影響で時間ができたこともあり、協力して事業を始めることにしたそうです。新型コロナウィルスがきっかけで、『りんのひとさじ』は始まりました。

「やっと時代が追い付いてきた!」

人参を持っている写真
人参畑

『りんのひとさじ』は、規格外野菜を生産者から直接購入してドレッシング等に加工・販売しています。店頭販売のほか、マルシェなどのイベントにも多く出店しています。

「以前のトマトジャムの事業では世間の理解を得られなかったこともあり、販売を始めた頃は、規格外野菜のことを表に出していませんでした」と花房さん。しかし、店頭販売の売れ行きや、お店のオーナーさんの反応から、「トマトのときとは感触が違う。規格外野菜のことを伏せなくても、商品として売っていけるんじゃないか」と感じたといいます。最近は新型コロナウィルスの影響も弱まりつつあり、お客さんと直接話しながら販売できるイベントも増えてきました。お客さんの反応から市民みんなのSDGsに関する意識が高くなっていると実感しているそうです。そして、多くの人がSDGsに注目するようになったことで、企業側も変化しています。メーカー企業から「SDGsに配慮した材料を使いたい」という話を聞くようになったそうです。花房さんは「やっと時代が追い付いてきていると感じています。今はみんなが同じ方向を向き始めているので、取り組みやすくなりました」と話されました。

規格外野菜に関する取り組みを進めていると、正規品とバランスをとる難しさを感じることもあるようです。正規品には規格を守っているからこそ発生する価値があり、その価値から得られる利益も農家さんにとって大切です。一方で、形や大きさが規格から外れているだけで多くの規格外野菜が廃棄されている現実があります。「今あるシステムや野菜の規格を変えるのではなく、規格外野菜を良い物としていかにアップサイクルしていくか、ということを考えて取り組んでいます」と話していました。

たくさんの人が行動に移すきっかけに

りんのひとさじ

令和3年から販売を開始し、少しずつ認知されるようになった『りんのひとさじ』ですが、商品を買ってもらうことそのものが目的ではないそうです。花房さんは「『りんのひとさじ』を手に取ることで、規格外野菜のことを多くの人に知ってほしいと考えています。ドレッシングをきっかけに、そのバックグラウンドを知ることで『何とかしなくては』と危機感をもつことが変化をもたらす第一歩です。そのうえで、『りんのひとさじ』のようにもったいないを形にしている商品を手に取ったり、規格外野菜を見かけたら形や大きさにこだわらずに購入したりするなど、少しでも何か行動に移す人が増えていってほしいです」と話されました。

最後に、これからの取り組みについて伺いました。

「収穫を終えた畑に、にんじんがたくさん捨てられている光景を見た時はあまりにもショックでした。ドレッシングをどれだけたくさん買ってもらっても、規格外野菜の廃棄をゼロにすることは難しいと実感しました。今後は、よりたくさんの規格外野菜を活用するために、企業のニーズに合わせて材料としての冷凍にんじんを出荷していく取り組みを準備しています。こうした取り組みを通じて、頑張った分の報酬が農家さんに入ってくるようにしていきたいです。そして、『りんのひとさじ』とおなじように規格外野菜を活用する活動が増えていけばいいな、と思っています」。

のっぷ1

形や大きさが違うだけでたくさんの野菜が捨てられているんだね。
規格外野菜の廃棄をなくす取り組みがもっと広まっていくといいね。

株式会社エコルヴェ

のっぷ2

次はどんな企業におじゃましようかな?楽しみだなぁ!

なお「いきいき社会貢献」では、「取材にきてほしい!!」という企業を募集中です。希望される方はkyoudouhiroba@city.okayama.lg.jpへ、企業名、社会貢献活動の内容を添えてご連絡ください!