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その9【岡山県中小企業家同友会】

[2016年2月5日]

ID:40535

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「いきいき社会貢献」では、のっぷとティアが社会貢献活動に取り組む岡山の企業を取材します。第九回は、岡山県中小企業家同友会におじゃましました!
なお、内容は取材当時のものです。

日本全国にある企業で、9割以上を占める中小企業・小規模事業者。様々な事業分野を通じて、日本の経済、そして私たちの暮らしを支えています。
1957年に東京で発足し、現在は全国の中小企業経営者45,000名が加盟する「中小企業家同友会」は、「国民や地域と共に歩む中小企業」を目指し、「自主・民主・連帯」の精神に則って、よい会社・よい経営者・よい経営環境づくりに取り組んでいます。その取り組みは、様々な企業の経営者たちが地域に腰をすえ、地域の方々ととことん向き合いながら実践しているものばかり。今回のいきいき社会貢献では、岡山県内の中小企業が加盟する「岡山県中小企業家同友会」の取り組みについてご紹介します。

岡山県中小企業家同友会とは?

「岡山県中小企業家同友会」(以下、同友会)が発足したのは1985年のこと。
岡山県内を拠点とする中小企業約540社が加盟し、6つの支部(岡山北・岡山南・倉敷・津山・吉備高原・東備)で活動しています。これまでいきいき社会貢献で紹介してきた「岡山旭東病院別ウィンドウで開く」や「栄工プラント別ウィンドウで開く」、「ダイヤ工業別ウィンドウで開く」もその一員!同友会では、次のような活動を中心に、企業同士による「知り合い・学び合い・援け合い(たすけあい)」の輪を広げています。

月例会の開催

月例会の写真

月例会の様子

各支部で月に一回、各社の経営課題や人材育成、事業継承、女性のキャリア形成等の様々なテーマで開催される「月例会」。
ここでは経営者たちが腹を割って互いの知見や経験を共有しあい、時には失敗事例を紹介しながら「生きた学び」を自社の経営に取り入れ実践していくことで経営の見直し・改善につなげています。

テーマ例

企業の経営指針づくり

経営指針とは、経営者が自社の経営に対する志や方向性を文章として明文化したもので、「経営理念」・「経営方針」・「経営計画」から構成され、企業づくりの柱となります。
同友会では、「経営指針成文化研修会」を年に2回、半年にわたって開催しており、受講者は様々な経営者から経営指針の作成・実践に関する事例を学び、先輩受講者との質疑応答をくり返しながら経営指針をつくります。

人材育成

社員共育大学の写真

社員共育大学の様子

経営者と社員、企業と企業、社員と社員、経営者と経営者が「共に育つ」ために、社員教育に関する様々な講座を開講しています。「社員共育大学」では、業種も規模も異なる企業が集まり、他社の社員や経営者と共に率直なディスカッションを行っています。テーマは、「働くことの意味」、「リーダーシップ」、「目標の重要性」、「責任とは」等、多岐にわたります。

社員一人ひとりの成長の場となるだけでなく、企業の垣根を越えてつながったり、自社の独自性を客観的な視点から振り返ったりする場となります。

上記の活動以外にも、同友会に加盟する企業は委員会・部会に所属し、同友会の運営、障がいを持つ人が働きやすい環境づくり、金融機関との業務提携、岡山大学での提供講座等、幅広い活動を行っています。

同友会の活動は個々の企業成長だけではなく、岡山にある企業が「一体的」に成長・発展していくことを目指しています。そのため、経営者同士が本音で意見をぶつけあったり、様々な企業の社員が肩を並べて学んだりすることで、互いに高め合う場がつくられているのです。

企業と地域との協働

さらに同友会では、企業同士の成長・発展に向けた活動だけでなく、「企業と地域との協働」も広げています。
ここでは、同友会の環境委員会が2014年度に取り組んだ「学童プレハブ-6℃作戦」についてご紹介します!

環境委員会とは?

環境委員会では、2013年より委員長を務める有松修一さん(株式会社サンキョウ-エンビックス別ウィンドウで開く代表取締役)を中心に、企業におけるCO2削減の取り組みや、中小企業の技術を活用した「環境ビジネス※」等について学び合う勉強会を行ってきました。

「学童プレハブ-6℃作戦」のメンバーの写真

「学童プレハブ-6℃作戦」のメンバー

「環境委員会で得た学びを地域と協働して実践しよう」という声があがったのは2014年のこと。すぐにメンバー同士がいろんなアイデアを出し合い、「子ども」と「環境」をテーマにした活動を行うことに決めたのです。
そのとき、メンバーの一人である糸山智栄さん(株式会社えくぼ別ウィンドウで開く代表取締役)の頭に浮かんだのは、自分の子どもが通う学童保育(うのクラブ)の様子でした。

※環境ビジネス:太陽光発電等の新エネルギーの開発や廃棄物の再利用等、資源循環型社会に向けた製品やサービスを生み出すビジネス。

学童保育の現状

学童

親が働きに出ている子どもたちにとって、学童保育は放課後に勉強したり友達と遊んだりして過ごす「毎日の居場所」となります。学童保育は、学校の教室や公共施設に設置されていることが多く、特に岡山県内では30%以上の学童保育が学校の敷地内に建てられたプレハブに設置されています。
学童保育の室内は、夏は非常に暑く冬は非常に寒くなるといいます。プレハブ内にはエアコンが設置されているものの、節約のために利用が控えられたりドアが頻繁に開け閉めされたりして、十分に機能を果たしていないのだそうです。
保護者や指導員、地域の方々も、「プレハブは子どもたちの過ごす環境に適さないのではないか」という不安を感じてはいたものの、専門的な知識や技術、資金がないために具体的な解決策を見出せず、「子どもたちに我慢をさせてしまっている」状況でした。

「学童プレハブ-6℃作戦」の始まり

学童保育の現状を知った環境委員会のメンバーは、うのクラブの夏場の環境を改善するために早速立ち上がりました。
「うのクラブ運営委員会」や同友会に加盟する企業だけでなく、環境問題の解決に取り組むNPO等に呼びかけていきました。さらに、地域の方々と協働するために、2014年4月に立ち上がった「宇野学区コミュニティ協議会※」とも連携したり、2014年度「岡山県多様な主体の協働による地域支援事業」に申請して活動資金を集めたりと、着々と準備を進めていきました。
そうして企業、地域、NPO、行政による協働の取り組みとして、「学童プレハブ-6℃作戦」が始まったのです。

※宇野学区コミュニティ協議会:2014年4月に、宇野小学校区の地域コミュニティ形成を目指して発足。うのクラブの指導員が事務局を務め、周辺地域に暮らす人々と学校を結ぶ役割を担う。

作戦のプロセス

企業・NPOによる現状把握と対応策の検討・実施

天井裏喚気装置の写真

天井裏喚気装置

設置の写真

設置の様子

まずは、同友会の企業がプレハブの室内温度を上昇させる原因を突き止めるために調査を行いました。原因は、一般の人では気づきにくいところに隠れており、専門的な視点から現状分析できる企業だからこそ発見できたといいます。

その後、各企業の専門技術を活かした改善方法を検討し、半年にわたって様々な取り組みを実践したのです!

例えば、プレハブの屋根を調べたところ、太陽の熱を100%吸収しプレハブ内の温度を高めるような素材や構造であることが分かりました。そこで空調の設備工事を専門とする株式会社成和設備工業所別ウィンドウで開く等が「天井裏喚気装置」を設置し、屋根から天井に伝わった熱を外に出して室内の温度上昇を防ぐようにしました。

その他にも、植物の水やりや打ち水に使用する水を蓄える雨水タンクや、太陽の熱による温度上昇を防ぐためにみどりのカーテンの他、農業用の遮光シートを窓際の一部に設置。うのクラブ以外の学童保育でも実践できるように、材料も比較的安く、形や大きさを柔軟に調整できるものを積極的に選びました。

作戦会議

月に一回、うのクラブの指導員や運営に携わる地域の方々、企業、NPOの関係者が集まって作戦会議を行いました。
一時間半という限られた時間の中で、様々な立場の人たちが作戦の現状と成果を共有し、今後の取り組みや実施スケジュールを決定するのに苦労したそうです。そこで、一つ一つの会議で中身の濃い協議が行えるように、参加者同士で毎回話し合うテーマを事前に共有し、それぞれがすぐに意見を出し合えるように工夫していたとのこと。
また、宇野学区コミュニティ協議会の方が地域の窓口となり、周辺地域に暮らす方々に作戦会議の内容を伝えたり意見を集めたりすることで、活動への理解を広めていったのでした。

温度測定とデータの比較・分析

温度測定

様々な取り組みの成果を把握するために、学童保育内の各所に電子温度計を設置して温度測定を行いました。また、岡山市内にある3つの学童保育にも協力を呼びかけ、室内温度のデータを収集。これらを比較・分析することで、様々な学童保育の環境や気候に適した方法を見出すことにつなげていきます。

子どもたちの主体的な参加を促す取り組み

みどりのカーテンを植えている写真

みどりのカーテンを植えている様子

環境学習教室の写真

環境学習教室の様子

子どもたちが、「なぜ」学童プレハブ-6℃作戦を行っているのか理解し、主体的に参加できるようするための取り組みも行われました。
まずは、環境学習センター「アスエコ」別ウィンドウで開くの協力で、環境学習に関する教室を開催。日常生活のどんなところに、地球温暖化やエネルギー問題を引き起こす原因があるのか学んだり、「みどりのカーテン」等、学校や家でも簡単に実践できることが地球温暖化の対策にどのような効果があるのかについて学びました。

みどりのカーテンの写真

みどりのカーテン

その後、認定NPO法人おかやまエネルギーの未来を考える会別ウィンドウで開くや地域の方々と一緒にみどりのカーテンを育てたり、企業が設置した室内温度計の測定や記録を行ったりと、うのクラブで過ごす子どもたちが主体的に環境学習に取り組めるような工夫が行われました。

情報発信

うのクラブ以外にも様々な地域に設置されている学童保育。その環境改善の必要性を広く呼びかけるために、Facebook別ウィンドウで開くウェブサイト別ウィンドウで開くを通じて作戦の様子を随時発信しました。

環境委員会委員長 株式会社サンキョウ-エンビックス 代表取締役 有松修一さんにお話を聞きました。

有松修一さん

「私たち企業が、様々な人・団体と協働してよりよい地域をつくるために活動する。そんなときに大きな力を発揮するのが同友会で築いたネットワークです。同友会として取組むことが決まれば、すぐに同友会のネットワークを通じて各専門分野の企業に呼びかけることができます。『地域に頼りにされる企業になろう』という思いで同友会に入会している企業も多いですから、活動に対する意欲だけでなく、現場で発揮する行動力・実行力はすごい!『学童プレハブ-6℃作戦』でも大きな力を発揮しました。そんな企業と様々な人・団体が協働していくために大切にしているのが、定期的に顔を合わせて話す場をつくること。特に、会議では実践することをまとめ次の行動につなげられるように、事前にテーマを伝えたり様々な段取りを整えたりしています。

そうして2014年度は日照時間が少ない夏でしたが、室内温度計等の測定により目に見える効果をあげることができました。2015年度は資金面の課題等もありますが、『学童プレハブ-6℃作戦』をモデルケースに、他の学童保育でも環境改善に向けた取り組みを進めています。また今後は、エネルギーシフト※に向けた勉強会を始める予定です。ゆくゆくは『学童プレハブ-6℃作戦』のように、地域と協働しながら勉強会で得た学びを実践していきたいと思います。」

※エネルギーシフト:エネルギーシフトとは、エネルギーそのものを転換させることで(1)省エネ、(2)排熱を利用しエネルギー効率を高める、(3)再生可能エネルギーを活用することにつながります。大きくは、大規模集中型から小規模分散型に移行することで、地域に仕事とお金の循環を生み出すことにもつながります。エネルギーシフトへの取り組みは、中小企業の活躍の場にもなるのだとか。

企業と地域が協働するために

同友会等の取り組みを通じて岡山にある企業が一体的に発展する。そして企業が提供する製品やサービスが向上し、新たな雇用が生まれ、地域経済の活性化につながっていく。
このゆるやかな循環が、岡山に暮らす人々の生活をより良くしていくのですね。さらに、企業と地域の協働した取り組みによって、企業も地域を舞台に新たなビジネスモデルを挑戦・実践でき、その成果を自社経営に活かすことができるのです。

有松さんは、企業と地域が協働するために大事なことをもう一つ教えてくれました。それは、どちらかがしてあげる・してもらう関係をつくらず、皆が当事者として参加できる仕組みをつくること。
「学童プレハブ-6℃作戦」では、子どもたちがみどりのカーテンの育成を手伝う等、環境学習の視点から参加できるようにしています。このような工夫が、「自分が活動の当事者である」という意識を育て、協働の取り組みを持続させることにつながるのかもしれません。

これからも同友会および環境委員会の取り組みに注目ですね!

岡山県中小企業家同友会

のっぷ

次はどんな企業におじゃましようかな?楽しみだなぁ!

なお「いきいき社会貢献」では、「取材にきてほしい!!」という企業を募集中です。希望される方はお問い合わせフォームより、企業名、社会貢献活動の内容を添えてご連絡ください!