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「文学の中の岡山」vol.11『楽園のカンヴァス』原田マハ

[2026年2月20日]

ID:79314

「文学の中の岡山」では、公益社団法人全国学校図書館協議会:Japan School Library Association(略称:全国SLA)学校図書館スーパーバイザーであり、岡山市文学賞運営委員会 文学によるまちづくり部会委員の高見 京子さんに、岡山ゆかりの作家、作品などについてご紹介いただきます。

『楽園のカンヴァス』原田マハ(新潮社)

新年の始まりに、スケールの大きい、原田マハの、『楽園のカンヴァス』を紹介したい。この小説は、2012年の山本周五郎賞を受賞、直木賞候補、本屋大賞第3位でもあった作品であるが、話の発端は岡山なのだ。

主人公の早川織江は、フランス・ソルボンヌ大学で美術史を学び、26歳で博士号を取得し、将来を期待されていた絵画研究者であった。現在(2000年)は、岡山駅と倉敷駅の中間にある庭瀬の地に母と娘との3人暮らしをしながら、倉敷にある大原美術館に監視委員として務めている。娘は白鷺女子高校がある岡山に通う。
 
彼女は過去(1983年)に、アンリ・ルソーの名作『夢』に酷似した作品『夢を見た』が本物か否かを判定せよと、スイスに住む伝説コレクターである富豪のコンラート・バイラーからの依頼があり、もう一人、ニューヨーク近代美術館のアシスタント・キュレーターであるティム・W・ブラウンと競った。バイラーは二人に手掛かりとなる謎の古書(ルソーの物語)を読ませる。与えられたリミットは7日間。さて二人は謎が解けるか。その絵は本物か否か。

小説は、「第1章 2000年 倉敷」から始まり、「第2章 1983年 ニューヨーク」に飛び、3章から第10章までが1983年のバーゼルの地での謎解き(古書の中身は1906年から1910年のパリ)、最終章が「2000年 ニューヨーク」。

岡山市庭瀬・倉敷大原美術館から、ニューヨークへ、そしてスイス・パリへと舞台は広がり、時と場所を超えてスケールの大きさを感じさせる。

表紙にはアンリ・ルソーの『夢』が採用されており、読む前から、絵に引き込まれ、ルソーやピカソなど名だたる画家の登場は、画家の苦悩と喜びとともに、絵画の持つ力と美に圧倒される。どこまでが史実で、どこからフィクションなのか。

織江とともに謎を考え解いていく推理の過程はハラハラドキドキものである。

ミステリーの部分だけでなく、家族のこと、織江とティムとの関係など、身近な人との関係や心情なども描かれ、全体的には大きな人間ドラマとなっている。

小説の終盤、美術に関心のなかった、織江の娘・真絵が美術に興味を持ち、画集を見て「生きているって感じ」と言う。親子の確執が解け、絵画の魅力を端的に表した素敵な場面であった。

ちなみに、織江の娘が通う白鷺女子高校は、原田マハの小説『でーれーガールズ』の舞台としても登場。彼女が通った山陽女子高校(現・山陽学園高校)がモデルである。映画もここで撮影された。

ルソーの絵に浸りながら、画家の情熱と、それを守ろうとする人々の思い、そして、未来に向かって生きていこうとする登場人物たち。その物語の発端が岡山、ということが嬉しい。

原田マハさんの紹介

1962年、東京都小平市生まれ。小学6年生から高校卒業まで岡山市育ち。岡山市立三門小学校、岡山市立石井中学校、山陽女子高等学校、関西学院大学文学部、早稲田大学第二文学部美術専攻卒業。馬里邑(まりむら)美術館、伊藤忠商事、森ビル森美術館設立準備室、ニューヨーク近代美術館に勤務後、2002年にフリーのキュレーターとして独立。

ペンネームは、フランシス・ゴヤの『着衣のマハ』『裸のマハ』に由来する。

兄は、作家・エッセイストの原田宗典。(昨年、この欄に『17歳だった!』を紹介)

2005年『カフーを待ちわびて』で、第1回日本ラブストーリー対象を受賞。

2013年『ジヴェルニーの食卓』(クロード・モネがモデル・以下同じ)、2016年『暗幕のゲルニカ』(パブロ・ピカソ)で直木賞候補。『楽園のカンヴァス』については上記のとおり。

原田マハが表した画家、美術家の作品は、他に『たゆたえども沈まず』(フィンセント・ファン・ゴッホ)、『板上に咲く』(棟方志功)、『リーチ先生』(バーナード・リーチ)、『美しき愚か者たちのタブロー』(松方幸次郎)などがある。

その他、『本日はお日柄もよく』『キネマの神様』『総理の夫』などの作品は映画化もされ、広く親しまれている。

「文学の中の岡山」執筆にあたり/全国SLA学校図書館スーパーバイザー 高見 京子

2023年10月に、岡山市は「ユネスコ創造都市ネットワーク文学分野」に加盟した。

岡山(市だけでなく県全体で)は、「文学創造都市おかやま」の名に恥じない、数々の実績があるが、私は特に岡山出身(ゆかり)の作家たちが多いことを挙げておきたい。その作家たちを中心に、それぞれの作品の中に岡山の描写が多いこともうれしいことである。

これから、このコーナーでは、読み応えのあるそれらの作品と、岡山がどのように文中で書かれているかを紹介していきたい。作品が一都市だけに向けて書かれていることはもちろんなく、普遍的なものであるのだが、その作品を味わうと同時に、身近な場所が文中にあることで、より岡山に親しみを感じたり、その場所を歩いてみたりしようと思っていただければ幸いである。

「文学」も広くとらえ、ノンフィクションも、映画など他のメディアなども含み、比較的新しい作品を取りあげていきたいと思っている。愛読してくださるとうれしい。

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